今回は、決算書における「直接原価計算」について解説します。
直接原価計算とは
変動費・固定費
直接原価計算は、原価変動費(製品の生産・販売量に比例して発生する原価)と固定費(製品の生産・販売量に関係なく一定量発生発生する原価)に分けて計算します。
例えば、木製の家具を生産・販売する場合、素材である木材は、家具を作れば作るほど消費されます。
したがって、直接材料費は製品の生産・販売量に比例して発生する原価=変動費です。
それに対し、工場の原価売却費は、家具をどれだけ作ろうと1年間で一定額が発生します。
したがって、工場の減価償却費は製品の生産・販売量に関係なく、一定額が発生する原価=固定費です。
全部原価計算・直接原価計算
これまでに学習してきた原価計算は、製品の製造にかかった原価は全て製品原価として計算しました。
このような原価計算を「全部原価計算」と言います。
全部原価計算に対して、製品の製造にかかった原価のうち、変動費(変動製造原価)のみを製品原価として計算する原価計算を「直接原価計算」と言います。
直接原価計算・利益計画
直接原価計算は、「来年目標利益を出すために、くら売り上げなければならないか」と言った会社の利益計算を立てる際に役立つ原価計算です。
直接原価計算の特徴・損益計算書
直接原価計算の特徴は次の通りです。
・原価を、変動費・固定費に分ける
・製品原価変動製造原価(直接材料費・直接労務費・変動製造間接費)のみで計算する
・固定製造原価(固定製造間接費)については、発生した金額を全額、その期間の費用として計上する
全部原価計算・直接原価計算の損益計算書の形式を示すと次のようになります。
固定費調整とは
固定費調整とは、直接原価計算の営業利益を、全部原価計算の営業利益に修正する手続きのことです。
財務諸表に記載する場合の営業利益は、全部原価計算の営業利益でなければなりません。
そこで、直接原価計算の損益計算書で営業利益を計算した場合には、これを全部原価計算の営業利益に修正する必要があります。
直接原価計算の営業利益と、全部原価計算の営業利益の差額は、在庫(期首仕掛品・期首製品・期末仕掛品・期末製品)に含まれる固定製造原価です。
したがって、直接原価計算の営業利益に、在庫(期首仕掛品・機種製品・期末仕掛品・期末製品)に含まれる固定製造原価を加減して調整し、全部原価計算の営業利益を計算します。
全部原価計算では、固定製造原価も製品原価として計算するため、在庫がある場合、固定製造原価が「売上原価(費用)」だけでなく、「仕掛品(資産)」や「製品(資産)」にも配分されます。
それに対し、直接原価計算では、固定製造原価は製品原価として計算せず、発生額を全て当期の費用として計上するため、「仕掛品(資産)」や「製品(資産)」には配分されません。
上記のように、全部原価計算・直接原価計算では、費用計上学が異なるため、営業利益に相違が生じますが、その相場の原因は固定製造原価の取り扱いの違いにあります。
そこで、在庫に含まれる固定費を調整することによって、直接原価計算の営業利益を全部原価計算の営業利益に修正します。
会計制度上、外部に公表するための営業利益は全部原価計算によって求めた金額でなくてはなりません。
そのため、直接原価計算を採用した場合には、全部原価計算の営業利益になるように金額を調整する必要があります。
固定費調整の公式と直接原価計算の損益計算書は次の通りです。
全部原価計算の営業利益=
直接原価計算の営業利益+期末仕掛品・製品に含まれる固定製造原価ー期首仕掛品・製品に含まれる固定製造原価
CVP分析とは
CVP分析とは、原価・生産・販売量・利益の関係を明らかにするための分析です。
原価・販売量が変化したときの利益の変動額・目標利益を達成するための売上高などを見るときに用いる手法です。
変動費率・貢献利益率
CVP分析では、変動費と貢献利益の売上高に対する割合は一定という性質を用いて各計算をします。
更に、売上高に対する変動の割合を「変動費率」、売上高に対する貢献利益の割合を「貢献利益率」と言います。
変動費率 = 変動費率 ÷ 売上高
貢献利益率 = 貢献利益 ÷ 売上高
損益分岐点の売上高
損益分岐点の売上高とは、営業利益がちょうど0円(黒字でも赤字でもない)となる時の売上高です。
直接原価計算の損益計算書
損益分岐点の売上高を計算する時には、「営業利益=0円」として直接原価計算の損益計算書を作ります。
この時、求めるべき売上高を「S円」とします。
※RTHはSalesのSです。
更に、求めるべき販売量を「X個」としても計算することができます。
CVP分析の公式
損益分岐点の売上高を公式を使って求める場合には、以下の公式に当てはめて計算します。
損益分岐点の売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率
目標営業利益を達成するための売上高
【直接原価計算の損益計算書】
目標営業利益を達成するための売上高を計算する時には、「営業利益=目標利益」として直接原価計算の損益計算書を作ります。
【CVP分析の公式】
目標営業利益を達成するための売上高を、公式を使って求める場合には、以下の公式に当てはめて計算します。
目標営業利益を達成するための売上高 =(固定費+目標営業利益)÷ 貢献利益率
目標営業利益率を達成するための売上高
【目標営業利益率とは】
目標営業利益率とは、売上高に対する目標営業利益の割合のことです。
目標営業利益率 = 目標営業利益率 ÷ 売上高
【直接原価計算の損益計算書】
目標営業利益率を達成するための売上高を計算する時には、売上高と目標営業利益率から目標営業利益率を計算し、「営業利益=目標利益」として直接原価計算の損益計算書を作ります。
【CVP分析の公式】
目標営業利益率を達成するための売上高を、公式を使って求める場合には、以下の公式に当てはめて計算します。
目標営業利益率を達成するための売上高 = 固定費 ÷( 貢献利益率 ー 目標営業利益率 )
安全余裕率
安全余裕率とは、売上高(予想売上高または当期の売上高)が損益分岐点をどれだけ上回っているかを表す指標で、次の計算式によって求めることができます。
安全余裕率 =( 売上高 ー 損益分岐点の売上高)÷ 売上高 × 100
原価の変動費と固定費の分析
直接原価計算では、原価を変動費と固定費に分ける必要があります。
原価を変動費を固定費に分ける方法には、いくつかの方法があります。
一般的には「高低点」があります。
高低点法とは
高低点法とは、過去の原価データを元に、最高の生産量の時の原価を、変動費・固定費に分ける方法のことです。
高低点による原価の分解
製品1個あたりの変動費(変動費率)と固定費は次の計算式によって求めます。
①変動費=( 最高点の原価 ー 最低点の原価 )÷( 最高点の生産量 ー 最低点の生産量 )
②固定費 = 最高点の原価 ー( 変動費率 × 最高点の生産量 )
③固定費 = 最低点の原価 ー( 変動費率 × 最低点の生産量 )
更に、正常な生産量の範囲外で発生した原価は、異常な状態で発生した原価と菅ットオプション・・・萎えられるため、最高点と最低点は、正常操業圏内から抽出します。
まとめ
株式投資では、決算を読み込むために簿記の知識もあると優位になります。
今後も決算を読み解いていきましょう。
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