決算書における【 連結会計 】深い解説まとめ

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今回は、決算書における「連結会計」の解説をまとめます。

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連結会社間取引の相殺消去

連結会社間取引の相殺消去とは

親会社と子会社は連携して事業を行なっているため、連結会社間で資産を売買したり、資金の貸付毛・借入れをしたりすることがあります。

しかし、連結会社間の取引は、企業グループ全体の観点でみると単なるグループ内での資産や資金の移動に過ぎないため、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去する必要があります。

このような手続きを連結会社間取引の相殺消去と言います。


連結会社間取引の相殺消去の処理には、次のようなものがあります。


【連結会社間取引の相殺消去の処理】

翌期以降の開始仕訳・税効果会計の適用
非支配株主持分への按分(アップストリームの場合)
内部取引高の相殺消去しない
債権債務の相殺消去しない
貸倒引当金の修正する
手形割引の修正しない
未実現損益の消去する

内部取引高・債権債務の相殺消去

未達取引の処理

親会社と子会社が期末直前に取引を行うと、一方では適切に処理されていても、もう一方では期末までに処理されておらず未達になっている場合があります。

連結上で連結会社間取引を修正する前に、このような未達取引をあらかじめ処理しておく必要があります。

内部取引高・債権債務の相殺消去

連結会社間で行われた内部取引や債権債務は、企業グループ全体ではあくまで内部取引のため相殺消去します。

更に、連結損益計算書では期首・期末商品棚卸高や期末商品仕入高を表示しないため、仕入に関する修正仕訳は売上原価勘定で処理します。


【相殺消去する内部取引高・債権債務】

○内部取引高の相殺消去

売上高   ⇄  売上原価

受取利息  ⇄  支払利息

受取配当金 ⇄  剰余金の配当


○債権債務の相殺消去

買掛金   ⇄    売掛金

支払手形  ⇄  受取手形

借入金   ⇄   貸付金

未払費用  ⇄  未収収益

前受け収益 ⇄ 前払費用

貸倒引当金の修正

期末貸倒引当金

連結修正仕訳で債権債務を相殺消去した場合、消去された債権に対して設定されていた貸倒引当金も消去する必要があります。

また、貸倒引当金の修正の処理では貸倒引当金繰入(費用)が変動するため、税効果会計を適用します。

親会社の貸倒引当金

親会社が計上していた債権の相殺消去に伴い、貸倒引当金貸倒引当金繰入を取り消します。

また、税効果会計を適用する場合、借方に法人税等調整額を、貸方に繰延金負債を計上します。

更に、小野繰延税金負債は親会社に帰属します。


繰延税金資産・負債の帰属は、連結上の繰延税金資産・負債の相殺表示で重要となります。

子会社の貸倒引当金

子会社が親会社に対する債権を計上している場合、上記の処理に加えて変動額を非支配株主持分に負担させる処理(非支配株主持分への按分)が必要になります。


子会社の貸倒引当金や法人税等調整額が変動することで、連結上の子会社の当期純利益や利益剰余金が変動し、その結果、非支配株主に帰属する利益も変動するため、調整が必要になります。

期首貸倒引当金

親会社の期首貸倒引当金

前期以前に行った連結修正仕訳は、当期に影響を及ぼす場合には開始仕訳として改めて行います。

したがって、開始仕訳では貸倒引当金の修正についても仕訳を行う必要があります。

また、前期に貸倒引当金を修正しているため、当期は追加計上した貸倒引当金の金額部分のみ修正を行います。

更に、開始仕訳では、損益項目である貸倒引当金繰入や法人税等調整額については、利益剰余金当期首残高として処理します。

子会社の期首貸倒引当金

子会社が期首に貸倒引当金を計上している場合、親会社の場合と同様に開始仕訳を行い、更に非支配株主持分についても按分します。

更に、開始仕訳では非支配株主持分について非支配株主持分当期首残高として処理します。

手形の割引

手形の割引

連結会社間で振り出した手形を銀行で割り引いた場合、個別上は手形の割引として処理されています。

しかし、企業グループ全体で考えた場合、企業グループが銀行に手形を振り出して借入れを行なったと考えます。


したがって、連結会社間で振り出した手形を割り引いた場合、手形借入金として処理する必要があります。

そこで、連結修正仕訳によって支払手形を借入金に振り替えます。

更に、借入金は連結貸借対照表上では一年基準により短期借入金または長期借入金として表示します。


連結会社間で振り出した手形を他者に裏書譲渡した場合、割引の場合とは異なり連結グループの視点でも支払手形である点は変わらないため、借入金に振り替える連結修正仕訳は必要ありません。

未実現損益の消去

未実現損益とは

連結会社間で商品を売買する場合、外部と取引する場合と同様に仕入原価に利益を上乗せした価額で販売します。

しかし、企業グループ全体の視点で考えると、企業グループ内の取引は単なるグループ内の商品の移動であるため、グループ内取引で上乗せされた利益は計上が認められず、消去する必要があります。

この期末棚卸資産に含まれる企業グループ内で上乗せさせられた利益のことを未実現利益と言います。


例えば、親会社が100円で仕入れた商品10個を子会社に120円で販売しているとしましょう。

親会社で計上した子会社への売上1,200円は子会社では仕入れ1,200円として計上されているため、内部取引高を相殺消去します。

また、子会社において親会社から仕入た商品が1つ期末に残っていた場合、子会社では商品120円として計上されています。

しかし、連結上は企業グループ外部との取引価額に基づいて計上しなければなりません。

したがって、連結上、期末商品は親会社が外部から仕入れた100円で計上します。

差額の20円は企業グループ内の内部利益であり、企業グループ全体の視点で見ると未実現の利益であるため、連結修正仕訳で処理します。

また、連結会社間の債権債務も相殺消去します。

期末棚卸資産の未実現利益

ダウンストリーム

親会社から子会社に商品などの資産を販売することをダウンストリームと言います。

ダウンストリームでは、子会社に販売した商品が期末まで販売されて子会社に残っていた場合、親会社がその商品に上乗せした利益を消去します。

また、未実現利益を消去することで損益が変動するため、税こう赤いけいを適用します。

更に、消去される内部利益を計上しているのは販売した親会社であるため、繰延税金資産は親会社に帰属します。

アップストリーム

子会社から親会社に商品などの資産を販売することをアップストリームと言います。

アップストリームの場合も、ダウンストリームと同様に未実現利益を消去し、税効果会計を適用しますが、この場合の繰延税金資産は子会社に帰属します。

更に、アップストリームの場合は未実現利益の消去によって子会社の利益が変動するため、非支配株主持分へ按分する処理が必要になります。

未実演損益の消去方法

ダウンストリーム、アップストリームのいずれの場合も、未実現損益は全額消去します。

ダウンストリームでは、消去された損益は全て親会社が負担しています。

小野方法を全額消去親会社負担方式と言います。

一方、アップストリームでは、消去された損益の一部を非支配株主持分に負担させています。

この方法を全額消去持分按分負担方式と言います。


【未実現損益の消去方法】

・ダウンストリーム:全額消去・親会社負担方式

・アップストリーム:全額消去・持分按分方式

期首棚卸資産の未実現利益

ダウンストリーム

期首の商品に含まれる未実現利益は、前期の連結修正仕訳で消去しています。

これにより利益剰余金や非支配株主持分などの期首残高が変動しているため、当期の開始仕訳で再度仕訳を行います。

更に、開始仕訳では、売上原価や法人税等調整額について、利益剰余金当期首残高として処理します。


期首の商品は全て期中に販売されて未実現利益が実現したと考えて処理します。

アップストリーム

アップストリームの場合、期末の時と同様に、ダウンストリームの処理に加えて非支配株主持分への按分の処理を行います。

翌期の仕訳

非償却固定資産を売却した翌期以降の連結財務諸表の作成では、開始仕訳として再度未実現利益の消去等の仕訳を行います。

この際、損益項目は利益剰余金当期首残高、非支配株主持分は非支配株主持分等期首残高で処理します。

償却固定資産の未実現損益

ダウンストリーム

備品や建物といった償却固定資産の売買の場合、子会社では親会社からの取得原価をもとに減価償却費を計算します。

しかし、連結上は親会社の購入原価をもとに減価償却費を計算しなければならないため、その差額を修正することになります。

更に、減価償却費の修正によって損益が変動するため、税効果会計を適用します。


親会社が保有している備品(帳簿価額600円、残存価額0円、耐用年数2年、定額法で償却)を子会社に700円で売却したとします。

個別上、〇〇年度に親会社が売却益100円を計上し、〇〇年度から700円の備品を2年で償却しています。(減価償却費350円)

しかし、連結上は親会社の売却時の帳簿価額600円をもとに、毎年300円で減価償却を行わなければなりません。

したがって、連結修正仕訳では、まず親会社の売却益100円を取り消して備品の取得原価を減少させませす。(未実現利益の消去)

更に、〇〇年度以降に子会社が行なった減価償却費を1年あたり50円(売却時価額をベースとした減価償却費300円ー子会社の減価償却費350円)減らします、(減価償却費の修正)

アップストリーム

アップストリームの場合、ダウンストリームの処理に加えて非支配株主持分への按分の処理を行います。

翌期の仕訳

償却固定資産を売却した場合、その翌期では開始仕訳として再度未実現利益の消去や減価償却費の修正等の仕訳を行います。

この際、損益項目は利益剰余金当期首残高、非支配株主持分は非支配株主持分等期首残高を用います。

更に、減価償却費を計上することにより、未実現利益を償却する際に計上された繰延税金資産は取り崩されます。

繰延税金資産・負債の表示

表示方法

個別財務諸表と同様に、連結財務諸表でも繰延税金資産は投資その他の資産に、繰延税金負債は固定負債に表示します。

詳細→決算書における【 繰延税金資産の回収可能性 】分かりやすく解説

繰延税金資産繰延税金負債を、それぞれ相殺して表示することも個別財務諸表と同じです。


連結精算表上は相殺しないこともあります。


ただし、親会社に帰属する繰延税金資産・負債と、子会社に帰属する繰延税金資産・負債を相殺することはできません。


納税は個別の会社ごとに行うため、異なる会社間の繰延税金資産・負債は相殺できません。


【繰延税金資産・負債の相殺】

資産相殺できるかどうか負債
親会社に帰属する繰延税金資産相殺できる親会社に帰属する繰延税金負債
親会社に帰属する繰延税金資産相殺できない子会社に帰属する繰延税金負債
子会社に帰属する繰延税金資産相殺できない親会社に帰属する繰延税金負債
子会社に帰属する繰延税金資産相殺できる子会社に帰属する繰延税金負債

連結会計の処理方法

連結会計の処理方法の流れは次の通りです。

未取引の処理

連結会社間の未達取引があれば最初に処理します。

投資と資本の相殺消去の開始仕訳を行う

子会社の資産・負債の評価替え

子会社の資産・負債を時価に評価替えします。

繰延税金資産・負債があった場合、親会社と子会社どちらに帰属するかわかるようにしておきます。

支配獲得日のタイムテーブルの作成とのれんの計算

支配獲得日のタイムテーブルを作成し、支配獲得日の暖簾の金額を計算します。

前期末のタイムテーブルの作成と開始仕訳

タイムテーブルに前期末の数値を書き加え、これをもとに開始仕訳を行います。

当期の連結修正仕訳を行う

【当期の連結修正仕訳の種類】

・のれんの償却

・子会社の当期純利益の振り替え

・子会社の配当金の修正

・内部取引高の相殺消去

・債権債務の相殺消去

・貸倒引当金の修正(期首・期末)利益が変動する

・未実現利益の消去(期首・期末)税効果会計の適用

内部取引高と債権債務の相殺消去

資本連結の仕訳が一通り終わったところで、内部取引高と債権債務の相殺の仕訳を行います。

貸倒引当金の修正(期首・期末)

期首・期末に貸倒引当金の修正を行います。

未実現利益の消去

未実現利益の消去を行います。

連結財務諸表の作成

個別財務諸表の合計に連結修正仕訳の数値を加減して連結財務諸表欄を記入します。

更に、消去・振り替え欄には連結修正仕訳を記入します。

まとめ

株式投資や経営においては、決算書の理解は必須になります。

その際、簿記の知識も生かして決算書の理解を深めていきましょう。


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