決算書における【 連結会計について 】深い解説まとめ

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今回は、決算書における「連結会計」について解説します。

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連結財務諸表とは

親会社と子会社

株式会社の株主総会は会社の基本的事項を決める意思決定期間です。

そして、株主総会では株主の持株数に応じた多数決によって、会社の基本的事項が決定されます。

したがって、例えばA社がB社の株式を全部所有した場合、A社はB社の経営方針などを決定することができます。

この場合のA社のように、他の会社の意思決定期間を実質的に支配している会社を「親会社」と言います。

また、B社のように、意思決定期間を実質的に支配されている他の会社を「子会社」と言います。

更に、A社とB社のような関係を支配従属関係と言います。


関連記事→決算書における【 按分法適用会社から連結子会社への移行 】分かりやすく解説

連結財務諸表

A社とB社のように、支配従属関係がある場合、親会社は子会社を含めたグループ全体の経営成績・財政状態を報告しなければなりません。

このように、支配樹族関係にある2つ以上の会社からなる企業グループの経営成績・財政状態を総合的に報告するために親会社が作成する財務諸表を「連結財務諸表」と言います。

連結財務諸表は、親会社と子会社の個別財務諸表をもとにして、これに必要な調整をして作成します。

連結の範囲

親会社は、原則として全ての子会社を連結の範囲に含めなければなりません。

更に、他の会社が子会社に該当するかどうかは、他の会社の意思決定機関を実質的に支配しているかどうか(支配力基準)によって判定します。

他の会社の意思決定機関を実質的に支配している場合とは、他の会社の株式(議決権)の過半数(50%以上)を所有している場合などのことです。


※議決権とは、株主総会等に参加して票を入れる(賛成か反対かを表明する)権利のことです。

支配獲得日の連結

支配獲得日の連結①基本パターン

投資と資本の総裁消去

ある会社が他の会社の株式(議決権)の過半数を取得するなどして、他の会社に対する支配を獲得した日を支配獲得日と言います。

支配獲得日には、親会社の投資(子会社の株式)と子会社の資本(純資産)を相殺消去する仕訳をします。

相殺消去とは、お互いに消しあって、無かったことにすることです。

支配獲得日の連結手順

支配獲得日には、次の手順によって連結貸借対照表を作成します。

①親会社と子会社の貸借対照表を合算する

②投資と資本の総裁消去をする

③連結貸借対照表を作成する

支配獲得日の連結②部分所有の場合

非支配株主

基本パターンでは、親会社が子会社の株式(議決権)を全て(100%)取得していましたが、親会社が子会社の株式(議決権)の全てを取得していない場合もあります。

例えば、親会社が子会社の株式のうち、60%を取得している場合、子会社には親会社以外の株主が40%いることになります。

この場合の、親会社以外の株主を「支配株主」と言います。


※100%所有の場合を完全所有と言います。

※100%所有でない場合を部分所有と言います。

部分所有となる場合の投資と資本の総裁消去

部分所有の場合でも、親会社は子会社を支配しているため、投資と資本の相殺消去を行います。

ただし、子会社の資本のうち、日支配株主の持分については、日支配株主持分(純資産)に振り替えます。

支配獲得日の連結③投資消去差額が生じる場合

親会社の投資金額(子会社の株式)の金額と、子会社の資本(純資産)のうち親会社に帰属する部分の金額が異なる場合には、投資と資本の相殺消去で差額が生じます。

この差額を投資消去差額と言います。

投資消去差額が借方に生じたときは、のれん(資産)として処理します。

支配獲得日1年目の連結

支配獲得日後の連結

支配獲得日には、貸借対照表のみを合算して、連結貸借対照表を作成しましたが、支配獲得日後は連結損益計算書や連結株主資本等変動計画書も作成します。

開始仕訳

連結財務諸表は、親会社と子会社の当期の個別財務諸表をもとに作成します。

この当期の個別財務諸表には前期までに行った連結修正仕訳は反映されていないため、当期の連結財務諸表を作成するにあたって連結修正仕訳を再度行う必要があります。

これを開始仕訳と言います。


開始仕訳は、支配獲得日から前期末までに行った連結修正仕訳を再度行います。

更に、連結株主資本等変動計算書を作成する場合には、純資産の項目について連結株主資本等変動計算書の科目で仕訳します。


具体的には、純資産の勘定科目の後ろに当期首残高をつけて資本金当期首残高などで処理します。

当期の連結修正仕訳

開始仕訳(前期末までの連結修正仕訳)を行った後、当期の連結修正仕訳を行い、当期の連結財務諸表を作成します。

当期の連結修正仕訳(支配獲得日後の連結修正仕訳)には、

①のれんの償却

②子会社の等基準損益の振り替え

③子会社の配当金の修正

などがあります。

それぞれ解説します。

①のれんの償却

投資と資本の相殺消去によって、のれん(資産)が生じた場合は、原則として20年以内に定額法等の方法によって償却します。

具体的には、のれん(資産)を減少させたとともに、のれん償却(費用)を計上します。

②子会社の等基準損益の振り替え

子会社の等基準損益のうち、日支配株主に帰属する部分を日支配株主持分(純資産)に振り替えます。

更に、仕訳上は、非支配株主持分当期変動額(連結株主資本等変動計算書上の科目)として処理します。

また、相手科目は非支配株主に帰属する等基準損益として処理します。


非支配株主に帰属する等基準損益は、非支配株主に帰属する当期純利益という科目で仕訳する場合もあります。

③子会社の配当金の修正

子会社が配当金を支払った場合、親会社は子会社から配当金を受け取ることになりますが、子会社から配当金を受け取ることになりますが、子会社から親会社への配当金支払いは連結グループ内の取引になるため、相殺消去する必要があります。


具体的には、子会社で行った配当の全額について、剰余金の配当(連結株主資本等変動計算書計算書上の科目)という科目を用いて取り消す(貸方に計上する)処理をします。


更に、連結株主資本等変動計算書を作成しない場合には、利益剰余金として処理します。


また、親会社が受け取った配当金は受取配当金(収益)として処理しているため、これを取り消します。

更に、子会社の配当金のうち、非支配株主に帰属する部分を非支配株主持分(純資産)の減少として処理します。

また、仕訳上は、非支配株主持分当期変動額(連結株主資本等変動計算書上の科目)として処理します。

支配獲得日後2年目の連結

支配獲得日後2年目(以降)の連結は、支配獲得日後1年目と同様に、前期末までに行った連結修正仕訳を再度行います。(開始仕訳)

この時、純資産項目には「等期首残高」をつけて仕訳します。(連結株主資本等変動計画書を作成する場合)

また、利益に影響を与える項目(のれん償却など)は利益剰余金等期首残高として処理します。

内部取引高と債権債務の相殺消去

連結会社間(親会社と子会社の間)で行われた取引は、連結会計上、企業グループ内部の取引となるため、連結財務諸表の作成にあたって相殺消去します。

また、親会社の子会社に対する売掛金など、連結会社間の債権債務の期末残高も相殺消去します。

相殺消去する内部取引高、債権債務には次のようなものがあります。

内部取引高の相殺消去債権債務の相殺消去
売上高 ⇄ 売上原価
受取利息 ⇄ 支払利息
受取配当金 ⇄ 配当
売掛金 ⇄ 買掛金
受取手形 ⇄ 支払手形
貸付金 ⇄ 借入金
未収収益 ⇄ 未払費用
前払費用 ⇄ 前受収益

貸倒引当金(期末貸倒引当金)の修正

連結修正仕訳で債権債務を相殺消去した場合、債権(売掛金・受取手形・貸付金など)に赤かる貸倒引当金も修正します。

親会社の期末貸倒引当金の修正

親会社が計上していた債権の相殺消去に伴って、貸倒引当金と貸倒引当金繰入(費用)の計上を取り消します。

子会社の期末貸倒引当金の修正

子会社の貸倒引当金を修正する場合の連結修正仕訳は、親会社の貸倒引当金を修正する場合と同じ仕訳を行いますが、更に貸倒引当金繰入(費用)の減額分を非支配株主持分に負担させます。


具体的には、貸倒引当金繰入(費用)の減額分に非支配株主持分割合をかけた金額を非支配株主に帰属する等基準損益に振り替え、相手科目は非支配株主持分当期変動額(純資産)として処理します。

未実現利益の消去

親会社が子会社に対して商品を販売するとき(または子会社が親会社に対して商品を販売するとき)は、他の得意先に対して商品を販売するのと同様に、原価に一定の利益を加算して販売します。

したがって、親会社から仕入れた商品(または子会社から仕入れた商品)が、期末に残っていた場合、個別財務諸表上は加算された利益を含んだ金額で期末商品棚卸高が計上されています。

しかし、連結会計上は親会社と子会社を同一のグループとして財務諸表を作成するため、期末商品棚卸高に親会社(または子会社)が加算した利益が含まれている場合には、これを消去しなければなりません。

この場合の、期末商品棚卸高に含まれる親会社(または子会社)が加算した利益を未実現利益と言います。


未実現利益の消去に関しては棚卸資産に対して行います。

ダウンストリームとアップストリーム

親会社が子会社に対して商品(またはその他資産)を販売することを「ダウンストリーム」と言います。

反対に、子会社が親会社に対して商品(またはその他の資産)を販売することを「アップストリーム」と言います。

期末商品に含まれる未実現利益

ダウンストリーム

ダウンストリームにおいて、子会社に、親会社から仕入れた商品が期末に残っていた場合には、連結修正仕訳において親会社が加算した利益(未実現利益)を消去します。


具体的には、未実現利益の分だけ、個別貸借対照表の商品(資産)を減少させるとともに、相手科目は売上原価(費用)として処理します。

アップストリーム

アップストリームにおいても、親会社の期末商品に含まれる未実現利益(子会社が加算した利益)は消去します。

ただし、子会社が加算した利益のうち親会社に帰属するのは、親会社の持分に相当する部分だけのため、消去した未実現利益のうち、非支配株主の持分に相当する部分については、非支配株主持分に負担させます。


具体的には、ダウンストリームの場合の未実現利益を消去する仕訳をもとに、損益項目(売上原価)の逆側に非支配株主に帰属する当期純損益(損益項目)を記入し、相手科目非支配株主持分当期変動額(または非支配株主持分)として処理します。

非償却性固定資産の未実現利の消去

建物や備品のように、決算において減価償却する固定資産を償却性固定資産、土地のように減価償却しない固定資産を「非償却性固定資産」と言います。

ダウンストリーム

親会社が子会社に対して土地を売却した場合、連結グループ内の取引のため、親会社が計上した固定資産売却益(収益)(または固定資産売却損(費用))を償却する必要があります。

アップストリーム

子会社が親会社に対して土地を売却した場合の未実現利益の消去も、ダウンストリームの場合の処理をもとにして、消去した未実現利益のうち非支配株主の持分に相当する部分については、非支配株主持分に負担させます。

連結財務諸表

親会社は、企業グループの経営成績や財政状態を総合的に報告するために連結財務諸表を作成します。

連結財務諸表には、連結損益計算書・連結貸借対照表・連結株主資本等変動計算書があります。

連結損益計算書

連結損益計算書は、企業グループ全体の経営成績を表します。

連結損益書の形式

連結損益計算書の形式は次の通りです。

①売上原価

連結(P/L)では売上原価の内訳(期首商品棚卸高・当期商品仕入高・期末商品棚卸高)を表示しません。

②のれん償却

貸方に生じたのれんの償却額は販売費及び一般管理費に表示します。

③当期純利益以下

企業グループ全体の当期純利益を計上した後、非支配株主に帰属する当期純利益を差し引き(または非支配株主に帰属する当期純損失を加算し)、親会社に帰属する当期純利益を計算します。

非支配株主に帰属する等基準損益の表示

子会社の等基準損益のうち、非支配株主に対応する部分に対応する部分については、非支配株主持分(当期変動額)に振り替えるとともに、相手科目は非支配株主に帰属する等基準損益として処理します。


非支配株主に帰属する当期純損益が借方残高の場合(子会社が当期純利益を計上した場合)、親会社にとっては利益を減少を表すため、連結損益計算書上は、当期純利益から減算します。

ただし、非支配株主にとっては利益の増加を表す(子会社が当期純利益を計上している)ため、「非支配株主に帰属する当期純利益」として表示します。

一方、非支配株主に帰属する等基準損益が貸方残高の場合(子会社が当期純損失を計上した場合)、親会社にとっては損失の減少を表す(子会社が当期純損失を計上している)ため、「非支配株主に帰属する当期純損失」として表示します。


関連記事→【 非支配株主持分とは 】分かりやすく解説

連結貸借対照表

連結貸借対照表は、企業グループ全体の財政状態を表します。

①連結貸借対照表の形式

連結貸借対照表の形式は次の通りです。

①資本剰余金・利益剰余金

一括して表示し、その内訳(利益準備金・任意積立金・繰越利益剰余金など)は表示しません。

②非支配株主持分

子会社の純資産のうち、非支配株主に帰属する部分の金額です。

連結株主資本等変動計算書

連結株主資本等変動計算書は、企業グループ全体の株主資本等(純資産)の変動を表します。

連結精算表

個別財務諸表を作成する際に精算表を作成したように、連結財務諸表を作成する際にも連結精算表を作成します。

連結精算表は、個別財務諸表の金額をもとに連結修正仕訳の金額を加減して、連結財務諸表(連結損益計算書・連結貸借対照表・連結株主資本等変動計算書)を作成する前の過程を1つにまとめた表のことです。

まとめ

株式投資においては、簿記の知識があると決算書の読み解きにおいて優位となります。

そのため、決算書を分析できるようになりましょう。


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