決算書における「有価証券の保有目的の変更」について解説します。
有価証券の保有目的の変更
有価証券を取得した当初の保有目的を、取得後に変更することは原則として認められません。
これは、保有目的区分を厳密にすることで、経営者による恣意性を排除するためです。
ただし、正当な理由がある場合は、保有目的を変更することが認められます。
変更が認められる正当な理由とは、資産の運用方針の変更、特定の状況が発生した場合や金融商品実務指針によって保有目的の変更があったとみなされる場合など、内容が限定されています。
振替時及び振替後の評価
有価証券の保有目的の変更を行う場合、変更前の保有目的によって処理が異なります。
【保有目的の変更の会計処理】
変更前 | 変更後 | 振替価額 | 振替時の評価差額 |
売買目的有価証券 | ・子会社株式及び関連会社株式 ・その他有価証券 | 振替時の時価 | 有価証券評価損益 |
満期保有目的債券 | ・売買目的有価証券 ・その他有価証券 | 振替時の償却原価 または取得原価 | ー |
子会社株式及び関連会社株式 | ・売買目的有価証券 ・その他有価証券 | 帳簿価額 | ー |
その他有価証券 | ・売買目的有価証券 | 振替時の時価 | 投資有価証券評価損益 |
その他有価証券 | 子会社株式及び関連会社株式 | 全部:帳簿価額 部分:益の場合は帳簿価額、損の場合は前期末時価 | ー |
※変更時の評価額は、変更前の保有目的区分に従う
※変更後の処理は、変更後の保有目的区分に従う
※その他有価証券から子会社株式・関連会社株式への変更は例外的な処理をする
例えば、売買目的有価証券であれば、通常決算時には時価評価します。
そのため、保有目的の変更時も、いったん時価評価をした上で、他の保有目的の有価証券へ振り替えます。
更に、満期保有目的債券は、取得した当初から満期まで保有する意図を持っていなければならないため、途中から満期保有目的債券に変更することはできません。
その他有価証券に変更した後の決算整理仕訳は、いつも通り、その他有価証券の時価評価の処理を行います。
また、子会社株式から他の保有目的に変更する場合とは、保有株式を売却したことにより株式を保有している会社が子会社ではなくなった場合が該当します。
この場合、保有目的の変更の処理の前に株式の売却の処理を行います。
更に、その他有価証券から関係会社株式に振り返る場合、企業結合の会計基準と整合性から例外処理が行われます。
関連記事→決算書における【 売買目的有価証券の総記法 】分かりやすく解説
まとめ
株式投資・経営において、決算書の理解は必須になります。
その際、簿記の知識も生かして決算書の理解を深めましょう。
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