今回は、決算書における「外貨建取引」について解説します。
外貨建取引の換算
日本の会社が海外の会社と外貨(ドル建て・ユーロ建てなど)で取引をした場合、仕訳をしたら、財務諸表を作成する時に、一定のルールに基づいて日本円に換算する必要があります。
取引が発生した時には、原則としてその取引発生時の為替相場によって換算します。
輸入時の処理
商品を輸入した時
商品を輸入した時は、取引発生時(輸入時)の為替相場によって換算した金額で仕入れの処理をします。
前払金の支払いがある場合
前払金を支払った時
商品の輸入(仕入)に先立って、前払金を支払ったときは、取引発生時(前払金を支払った時)の為替相場によって換算した金額で前払金(資産)を計上します。
商品を輸入した時
商品を輸入したときは、商品を仕入れた時の仕訳をしますが、商品の輸入に先立って前払金を支払っていた場合には、まずは①計上している前払金(資産)を減少させます。
そして、②外貨建ての輸入金額と前払金の額との差額は、取引発生時(輸入時)の為替相場によって加算した金額で計上します。
上記①と②の金額の合計が仕入(費用)の金額となります。
輸出時の処理
商品を輸出した時
商品を輸出した時(売り上げた時)は、取引発生時(輸出時)の為替相場nによって換算した金額で売上の処理をします。
前受金の受け取りがある場合
前受金を受け取った時
商品の輸出(売上)に先立って、前受金を受け取ったときは、取引発生時(前受金を受け取った時)の為替相場によって換算した金額で前受金(負債)を計上します。
商品を輸出した時
商品を輸出したときは、商品を売り上げた時の仕訳をしますが、商品の輸出に先立って前受金を受け取っていた場合には、まずは①計上している前受金(負債)を減少させます。
そして、②外貨建ての輸出金額と前受金の額との差額は、取引発生時(輸出時)の為替相場によって換算した金額で計上します。
上記の①と②の金額の合計が売上(収益)の金額となります。
決済時の処理
買掛金・売掛金を決済したときは、対応する買掛金(負債)・売掛金(資産)を減少させます。
これらの買掛金(負債)・売掛金(資産)は輸入時または輸出時の為替相場で換算されています。
更に、現金等の支払額については、決済時の為替相場で換算します。
ここで、輸入時・輸出時の為替相場と決済時の為替相場が異なる場合、仕訳に貸借差額が生じます。
この貸借差額(換算差額)は為替差損(費用)または為替差益(収益)として処理します。
仕訳の時点では、為替差損(費用)も為替差益(収益)も、為替差益という勘定科目で処理しておきます。
決算時の処理
外貨建ての資産・負債は、取得時または発生時の為替相場(HR)で換算された金額で計上されていますが、決算時にはこのうち貨幣項目(外国通貨・外貨預金・外貨建金銭債権債務など)については、決算時の為替相場(CR)によって換算替えをします。
この時の換算差額は為替差損益として処理します。
取得時または発生時の為替相場をヒストリカルレート(HR)と言います。
また、決算時の為替相場をカレントレート(CR)と言います。
為替予約
為替予約とは
例えば、現時点で買掛金100ドル(取引発生時の為替相場は100円)があって、この買掛金の決済日が3ヶ月後であったとしましょう。
既に学習したように、買掛金を決済する時の現金支払額は決済時の為替相場で換算します。
したがって、もし3ヶ月後の為替相場が現時点よりも円高(例えば90円)となった場合には、現金支払額が少なくなりますが、反対に円安(例えば120円)となった場合には、現金支払額が多くなってしまいます。
100ドルの買掛金の場合、決済時の為替相場が1ドル90円であれば、現金支払額は9,000円で済みますが、決済時の為替相場が1ドル120円となった場合、現金支払額は12.000円となります。
このような為替相場の変動リスクを回避するため、あらかじめkっ際時の為替相場を契約として決めておくことができます。
これを為替予約と言います。
独立処理・振当処理
為替予約の処理には、独立処理・振当処理という方法があります。
主要な振当処理の説明をします。
取引発生時までに為替予約を付した場合の処理
為替予約をしたとき(取引が発生した時)
取引発生時までに為替予約を付したときは、外貨建債権債務(外貨建て売掛金・買掛金など)を買わせよやkじの先物為替相場(予約レート)で換算します。
先物為替相場とは、先物取引に適用される為替相場のことです。
これに対して直物為替相場とは、直物(現物)取引に適用される為替相場のことです。
決算時
取引発生時までに為替予約を付したときは、決算において買掛金などの換算替えは行いません。
決済時
為替予約を付したときは、為替予約時の先物為替相場(予約レート)によって決済が行われます。
そのため、換算差額(為替差益)は生じません。
為替予約を付していなかったら、現金支払額は12,000円(100ドル×120円)でしたが、為替予約を付しておいたため、現金氏はリアがくは10,500円となります。
取引発生後に為替予約を付した場合の処理
取引が発生した時
取引発生時には、取引発生時の直物為替相場として換算します。
為替予約を付した時
外貨建債権債務について、取引発生後に為替予約を付したときは、外貨建債権債務を為替予約時の先物為替相場(予約レート)として換算します。
この時生じた換算差額は為替差損益として処理します。
厳密には、換算差額を分解して、当期の為替そうん駅とするものと、次期以降の為替差損駅にするものに分けるのですが、重要性が乏しい場合には、換算差額を全て当期の損益(為替差損益)にすることができます。
上記の仕訳をすることにより、買掛金の帳簿価額が10,600円(10,000円+600円)になります。
決済時
為替予約を付したときは、為替予約時の先物為替相場(予約レート)によって決済が行われます。
そのため、換算差額(為替差損益)は生じません。
関連記事→決算書における【 外貨建荷為替手形 】分かりやすく解説
まとめ
経営や株式投資において決算書の理解は必須になります。
その際、簿記の知識も活かして理解を深めましょう。
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