今回は、「ブランド知識の構築ステップ」について解説します。
ブランド知識の構築ステップ
ブランド構築のプロセスは、次の2つの段階に大別されます。
〜ブランド構築のプロセス〜
①ブランドの価値構造をポジショニングという形でデザインし、それを価値提案として提示するまでのフェーズ
②そのポジショニングと価値提案を具体化していくためのブランド化やコミュニケーションなどの取り組みのフェーズ
①は具体的に、ブランドの価値領域や中核顧客層の設定・競合関係を踏まえた上でのポジショニングの決定・価値提案の策定のことです。
②は具体的に、名前やロゴなどのブランド要素による製品のブランド化・コミュニケーションによるブランド知識形成・顧客との関係性の構築や維持のことです。
※ブランド知識形成の詳細→【 ブランド知識の構築手段について 】ブランド要素・マーケティングプログラム・二次的連想/分かりやすく解説
ここでは、特にブランド知識形成から後者のフェーズに限定し、次の2つの問題について説明します。
①ブランド要素の選択と統合
②ブランド知識の構築ステップ
ブランド要素の選択と統合
自社製品を識別し、他社製品と差別化する際の手段となるブランド要素には、次のようなものがあります。
・ブランド名
・ロゴ
・シンボル
・キャラクター
・パッケージ
・スローガン
これらのブランド要素は、ブランド化すべき製品の識別性を高め(深くて広いブランド認知の確立)、強く・好ましく・ユニークなブランド連想を形成するために、統合されなければなりません。
ブランド連想を形成するための要件
この目的を達成するための選択基準としては、次の5つの要件があります。
①記憶可能性
②意味性
③移転可能性
④適合可能性
⑤防御可能性
それぞれ説明していきます。
①記憶可能性
識別の手段としてのブランドという観点から考えると、購買や消費の場面においてブランドの再任や早期を助成するようなブランド要素が選択されるべきです。
また、次の点も、ブランド名やロゴタイプの組み合わせなどの選択において重要になります。
・覚えやすい(記銘性)
・目を惹く
・見つけやすい(視認性)
②意味性
ブランド要素の選択において、ブランドの認知を高めるだけでなく、望ましいブランド連想の形成に寄与するような固有の意味を持っていることが重要です。
例えば、次のことも検討していく必要があります。
・ブランドが属する製品カテゴリーやその製品特徴の記述的意味を持っていること
・視覚的ないし言語的イメージに広がりや楽しさがあること
③移転可能性
ブランド要素が、異なる製品カテゴリーや他の地域や国においても使用可能かということも重要です。
つまり、ブランド要素が製品カテゴリーを超えても使用可能であることは、ブランド拡張(カテゴリー拡張)のための前提条件です。
また、国や地域を超えて使用可能でなければグローバルブランドとなり得ません。
④適合可能性
時の経過とともに消費者の価値観が変わり、それに伴ってブランド要素も修正や調整を余儀なくされます。
このような場合、修正や調整が可能であるといった柔軟性や時代に合わせて変化する適応性なども重要になります。
例を挙げると最近だと、動物愛護の風潮が始まったため、革製品の受け取り方が変化してきています。
そのため、CHANELやDiorなどが、革でなく布やビーズの製品(特にバッグ)を多く製作するようになってきています。
詳細→ HERMES【 価格下落の考えられる理由 】時代的背景を考慮
⑤防御可能性
ブランド要素の中には、ブランド名やロゴなどのように商標法などにより法的に保護されるものもあります。
それ以外についても競争相手が簡単に模倣できないような工夫は必要です。
ブランド要素における防御可能性は、重要な選択基準です。
まとめ
上記を表にまとめると下の通りです。
ブランド要素 | ①認知可能性 | ②意味性 | ③移転可能性 | ④適合可能性 | ⑤防御可能性 |
ブランド名 | ブランドの再生と認知を高める | 時として間接的ではあるが、ほとんど全てのタイプの連想を進化する | やや限界がある | 困難 | 限界はあるが、一般的に有効 |
ロゴ・シンボル | 一般的にブランドの再認に有効 | 時として間接的であはあるが、ほとんど全てのタイプの連想を強化する | 優れている | デザインの変更が可能 | 優れている |
キャラクター | 一般的にブランドの再認に有効 | 一般的に製品属性外のイメージやブランド・パーソナリティ形成に有効 | やや限界がある | 場合によってはデザインの変更が可能 | 優れている |
スローガン | ブランドの再生と再認を高める | ほとんど全ての連想を明示的に伝達する | やや限界がある | 修正が可能 | 優れている |
パッケージ | 一般的にブランドの再認に有効 | ほとんど全ての連想を明示的に伝達する | やや優れている | デザインの変更が可能 | コピーされる可能性が高い |
それぞれに特徴があり、それぞれに一長一短があるということです。
そのため、これらを組み合わせてブランドを強固にしていく必要があります。
特に、急速に時代や風潮が変化していく中で、適合可能性だけはいつ訪れてゲームチェンジがやって来るか分かりません。
そのため、時代が変化した時に適合できる(何が起こってもすぐ対応できる)準備を事前にしておく必要があります。
関連記事→【 顧客ベース・ブランド・エクイティとは 】分かりやすく解説
最近のコメント