今回は、決算書の裏側「個別原価計算」について解説します。
個別原価計算とは
個別原価計算とは、顧客の注文に応じて製品を製造する受注生産形態に適用される原価計算方法のことです。
製造指図書の発行・原価計算用
個別原価計算では、顧客から注文を受けると、注文内容を記載した「製造指図書」が発行されます。
工場では、この製造指図書に基づいて製品の製造を開始します。
また、製造指図書の発行と同おじに、「原価計算書」が作成されます。
原価計算表は、製造指図書ごとに原価を集計する表です。
原価計算表に集計された原価が各製品の原価となります。
製造直接費の賦課
製造原価のうち、製造直接費(直接材料費・直接労務費・直接経費)は、ある製品にいくらかかったかが明確な原価のため、製造指図書ごとに個別に集計します。
これを、賦課と言います。
直課と言うこともあります。
製造間接費の配賦
製造原価のうち、製造間接費(間接材料費・間接労務費・間接経費)は、ある製品にいくらかかったかが明確でない原価のため、製造指図書ごとに個別に集計することができません。
そのため、製造間接費に関しては、作業時間・直接労務費など、何らかの基準に基づいて各製造指図書に振り分けます。
これを配賦と言います。
製造間接費を配賦する際に用いた何らかの基準のことを、「配賦基準」と言います。
製造間接費の配賦計算
製造間接費を各製造指図書に配賦するときは、まず、製造間接費の実際発生額を配賦基準数値の合計で割って、配賦率を計算します。
次に、配賦率に各製造指図書の配布基準数値をかけて、各製造指図書の配賦額を計算します。
これを計算式に表すと下の通りです。
①配賦率 = 製造間接費の実際発生額 ÷ 配布基準数値の合計
②配賦額 = 配賦率 ×各 製造指図書の配賦基準数値
製品が完成し、引き渡した時
原価計算表の備考欄の記入
原価計算表の備考欄には、月末の製品の状態を次のように記入します。
・仕掛品・・・未完成
・製品・・・完成
・未引渡しの製品・・・未引渡
・引渡済み・・・引渡済
各勘定の記入
製品が完成したら、完成した製品の原価を仕掛品勘定から「製品勘定」に振り替えます。
また、完成した製品を顧客に引き渡したときは、その原価を製品勘定から「売上原価勘定」に振り替えます。
製造間接費の予定配賦
上記では、実際発生額をもとにして、実際配賦(製造間接費を各製造指図書に配賦)しました。
しかし直接材料費・直接労務費を予定単価・予定賃を用いて計算したように、製造間接費に関しても「予定配賦率」を用いて計算することが認められています。
これを、「予定配賦」と言います。
予定配賦の計算
製造間接費を予定配賦するときは、まず、年間の製造間接費の予算額である「製造間接予算額」を見積ります。
これを、年間の予定配賦基準数値である「基準操業度」で割って、「予定配賦率」を計算します。
次に、予定配賦率に各製造指図書の実際配布基準数値をかけて、各製造指図書の配賦額を計算します。
これらを計算式にまとめると次の通りです。
①予定配賦率 = 年間の製造間接費予算額 × 基準操業度
②予定配賊額 = 予定配賦率 × 各製造指図書の実際配賦基準数値
月末の処理
月末に製造間接費の実際発生額を計算し、予定配布額と実際発生額の差額を、製造間接費勘定から「製造間接費配賦差異勘定」に振り替えます。
更に、製造間接費の予定配布額は「製造間接費勘定」の貸方に、実際発生額は「製造間接費勘定」の借方に計上されるため、この差額を「製造間接費配賦差異勘定」に振り替えます。
会計年度末の処理
予定配賦率を用いた場合、会計年度末において、月末ごとに計上された製造間接費配賦さい勘定の残高を「売上原価勘定」に振り替えます。
具体的には、製造間接費配賦差異が不利差異の場合は「売上原価勘定」の借方に振り替えます。
製造間接費配賦差異が貸方残高の場合は、「売上原価勘定」の貸方に振り替えます。
関連記事→決算書の裏側【 部門別個別原価計算とは 】流れ・処理まで解説
まとめ
株式投資では、決算を読み込むために簿記の知識もあると優位になります。
今後も決算を読み解いていきましょう。
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