今回は、決算書における「精算表・財務諸表」について解説します。
精算表の作成
精算表の形式
精算表とは、決算整理前の試算表から決算整理を行い、損益計算書及び貸借対照表を作成するまでの過程を1つにまとめた表のことです。
①貸借対照表の勘定科目(資産・負債・純資産の勘定科目)
②損益計算書の勘定科目(収益・費用の勘定科目)
③決算整理で新たに出てきた勘定科目
④試算表欄:決算生理前の残高を記入
⑤修正記入欄:決算整理仕訳の金額を記入
⑥損益計算書欄:費用は借方に、収益は貸方に金額を記入
⑦当期純利益:損益計算書及び貸借対照表の差額で当期純利益(または当期純損失)を計算
棚卸消耗損と商品評価損の記入方法
棚卸減耗損と商品評価損については、精算表上、仕訳勘定に振り替える場合と、独立の勘定として表示する場合(仕入れ勘定に振り替えない場合)があります。
財務諸表の作成
財務諸表には、損益計算書・貸借対照表・株主資本等変動計算書などがあります。
損益計算書
損益計算書とは
損益計算書は、一会計期間の収益と費用から当期純利益(または当期純損失)を計算した表で、企業の経営成績を明らかにするために作成します。
損益計算書の形式には、勘定式・報告式の2つがあります。
勘定式の損益計算書
勘定式は、借方・貸方に分けて記入する方法です。
①決算整理後の仕入(費用)は売上原価を表します。
損益計算書では「仕入」ではなく、「売上原価」で表示します。
②「売上」ではなく、「売上高」で表示します。
③収益が費用より大きい場合は当期純利益となり、借方に表示します。
収益が費用より大きい場合は当期純損失となり、貸方に表示します。
当期純利益の場合は赤字で記入します。
報告式の損益計算書
報告式は、借方・貸方に分けず、縦に並べて記入する方法です。
損益計算書上の表示
【棚卸減耗損・商品評価損の表示】
棚卸減耗損(原価性のあるもの)は損益計算上、売上原価の内訳項目として表示、または販売費及び一般管理費に表示します。
①売上総利益=売上高ー売上原価
当期の販売活動から生じた利益を表します。
②営業利益=売上総利益ー販売費及び一般管理費
会社の主な営業活動から生じた利益を表します。
販売費および一般管理費・・・商品の販売に要した費用(給料・宣伝広告宣伝費・水道光熱費・租税公課・支払地代・貸倒引当金繰入・減価償却費・退職給付費用・のれん償却など)
③経営利益=営業利益+営業外収益ー営業外費用
会社の形状的な活動から生じた利益を表します。
営業外収益・・・会社の主な営業活動以外の活動から生じた収益(受取利息・有価証券利息・雑益・為替差益など)
営業外費用・・・会社の主な営業活動以外の活動から生じた費用(支払利息・雑損・為替差損など)
④税引前当期純利益=経常利益+特別利益ー特別損失
法人税等を差し引く前の会社全体の利益を表します。
特別利益・・・会社の活動で臨時的に生じた利益(固定資産売却益・保険差益・国庫補助金受贈益など)
特別損失・・・会社の活動で臨時的に生じた損失(固定資産売却損・固定資産除去損・固定資産廃棄損・火災損失・固定資産圧縮損など)
⑤当期純利益=税引前当期純利益ー法人税、住民税及び事業税
当期の最終的な会社の利益を表します。
原価性がある棚卸減耗損とは、毎期発生する程度の棚卸減耗損のことです。
更に、原価性のない棚卸減耗損の場合は、営業外費用(重要性が低い場合)または特別損失(重要性が高い場合)に表示します。
商品評価損は、損益計算書上、原則として売上原価の内訳項目として表示します。
臨時的に発生かつ多額の商品評価損は、特別損失に表示します。
【貸倒引当金繰入の表示】
売上債権(売掛金・受取手形)にかかる貸倒引当金繰入(費用)は損益計算書上、販売費及び一般管理費に表示します。
一方、営業外債権(貸付金など)にかかる貸倒引当金繰入(費用)は損益計算書上、営業外費用に表示します。
損益計算書の詳細→決算書における【 損益計算書の基礎 】解説まとめ
貸借対照表
貸借対照表とは
貸借対照表は、決算日における資産・負債・純資産をまとめた表で、企業の財政状態を明らかにするために作成します。
貸借対照表の形式には、勘定式・報告式の2つあります。
ここではメインの感情式の貸借対照表について説明します。
勘定式の貸借対照表
勘定式は、借方・貸方に分けて記入する方法です。
勘定科目 | 内容 | 具体例 |
流動資産 | 営業活動にともなって発生した債権(売掛金・受取手形)及び決算日の翌日から1年以内に現金化する資産(短期的に現金化する資産) | ・貯金預金 ・受取手形 ・売掛金 ・有価証券(売買目的有価証券) ・商品 ・短期貸付金 ・前払費用 ・未収収益など |
固定資産 | 決算日の翌日から1年を超えて現金化する資産 | ・有形固定資産・・・建物・備品・車両運搬具・土地・建設仮勘定など ・無形固定資産・・・のれん・特許権・ソフトウェアなど ・投資その他の資産・・・投資有価証券 |
流動負債 | 営業活動に伴って発生した債務(買掛金・支払手形)及び決算日の翌日から1年以内に支払い期限が到来する負債 (短期的に支払い期限が到来する負債) | ・支払手形 ・買掛金 ・短期借入金 ・前受収益 ・未払費用 ・未払金 ・未払法人税など |
固定負債 | 決算日の翌日から1年を超えて支払い期限が到来する負債 (短期的に支払期限が到来しない負債) | ・長期借入金 ・退職給付引当金など |
株主資本 | 会社の元手である資本金や経営活動によって生じた剰余金 | ・資本金・・・株式会社が最低限維持しなければならない金額 ・資本剰余金・・・資本準備金・その他資本剰余金 ・利益剰余金・・・利益準備金・任意積立金・繰越利益剰余金 ※貸借対照表の繰越利益剰余金=残高試算表の金額+当期純利益 |
評価・換算差額等 | 資産または負債にかかる評価差額で、損益計算書に計上していないもの | その他有価証券評価差額金など |
貸借対照表の詳細→決算書における【 貸借対照表の基礎 】分かりやすく解説
資産と負債の流動・固定分類
流動資産・固定資産・流動負債・固定負債は次の2つの基準によって分けられています。
正常営業循環基準
正常営業循環基準とは、企業の主な営業活動のサイクル(仕入→代金の決済→売上→代金の回収)の中にある資産・負債を流動資産・流動ふさいとする基準のことです。
したがって、現金・売掛金・受取手形は回収期限にかかわらず常に流動資産に表示し、買掛金・支払手形は決済期限にかかわらず常に流動負債に表示します。
一年基準
一年基準とは、決算日の翌日から1年以内に現金化される資産・負債を流動資産・流動負債とし、1年を超えて現金化される資産を固定資産・決算期限が1年を超えて到来する負債を固定負債とする基準のことです。
一年基準は正常営業循環基準の適用を受けない資産・負債(貸付金・借入金・前払費用など)に対して適用されます。
前払費用・長期前払費用(一年基準の適用例)
当期において、次期以降の費用もまとめて支払った場合には、次期以降の費用分については決算において前払処理をします。
この場合、当期の決算日の翌日から1年を超える期間の費用については長期前払費用(資産)として処理します。
更に、長期前払費用は貸借対照表上、固定資産に表示します。
一般的に、貸借対照表では「前払保険料」「前払利息」などをまとめて前払費用として表示します。
その他の有価証券評価差額金の表示
その他有価証券の評価替えによって生じた評価差額(その他有価証券評価差額金)は、相殺した純がくを貸借対照表の純資産の部に表示します。
株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書とは
株主資本等変動計算書は、株主資本等(純資産)の変動を表す財務諸表で、貸借対照表の純資産の部について、項目ごとに、当期期首残高・当期変動額・当期末残高を記載します。
株主資本の変動がくは、変動要因ごとに記載します。
株主資本等変動計算書の形式は、次の通りです。
①株主資本等(純資産)の項目
②当期首時点の残高
③当期の株主資本等(純資産)の変動額
→株主資本の当期変動額は変動要因(新規の発行・剰余金の配当等・当期純利益など)ごとに分けて記載します。
→株主資本以外(その他有価証券評価差額金など)の当期変動額は一括して純額で記載します。
④当期末時点の残高
→等期首残高に当期変動学合計を加減算して計算します。
株主資本等変動計算書の記入
当期首残高の記入
まずは、純資産の部の項目について、当期首残高を記入します。
当期変動額の記入
次に、純資産の部の当期変動学を変動原因ごとに記入します。
更に、株主資本等変動計算書には、純資産の部の変動額のみ記入し、それ以外(資産・負債)の項目の変動額については記入しません。
また、純資産の減少については金額の前に△などのマークをつけます。
仕訳で借方に純資産の勘定科目が記入される場合は、純資産の減少となります。
当期末残高の記入
最後に、当期末残高を記入します。
とう期末残高は当期首残高に当期変動額合計を加減算して計算します。
まとめ
経営や株式投資においては決算書の理解が必須になります。
その際、簿記の知識も活かして理解を深めましょう。
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