今回は、「相互依存的状況」について解説します。
相互依存的状況とは
相互依存的状況とは、互いの選択の結果が互いの選択の影響を受け合うような状況のことです。
意思決定における選考や不確実性のうち、社会関係の中で発生するもの(他社の存在によって発生するもの)を特に重視している点にあります。
他者を相手として決定を行う場合、自分の選択だけから決まるのではなく、相手の選択にも影響を受けます。
相互依存的状況では、他者の選択をどう捉えるかによって不確実性のあり方が左右されます。
また、自分の結果が同じであっても、同時に相手が得た結果によってその受け止め方が異なるように、人間の選好自体が、自分の結果だけではなく他者の結果も含めて形成されています。
他者の選択に影響を受けながらなされる意思決定においては、他者によって引き起こされる不確実性や、他者を考慮に入れた選好(社会的選好)を取り扱う必要性が生じます。
そして実際、人間にとって重要な意思決定の多くは、他者の選択に左右される社会的状況でなされることの方が多いです。
詳細
人間は自分の利益に関心を持ち、事故利益を最大化しようとする強い動機を持っています。
しかし、これまでの実験の積み重ねから、人は自分の利益だけでなく他者の利益・行動・意図についても関心を持っており、それらを考慮して行動を変えていることが明らかになってきました。
以下に紹介するゲームの中で、人が他者を考慮していることは3つの形で表れています。
第一は、人は選択の結果として、利益について、自分のものだけでなく他者のものも含めた選好を持つということです。
相手の利得を多くしようとする利他的選考や、自他の利得の差を最小にしようとする不平等回避的選好などがこれにあたります。
第二は、人は相手の行動によって自分の選好を変えるということです。
協力的な相手には自分の協力的であろうとするが、そうでない相手には非協力的に振る舞います。
この条件付きでの協力は、このような形で他者を考慮に入れた結果と考えられます。
更に、このような、相手にされたことを同じように返す行動原理を互報性(Reciprocity)と言います。
強力に対して強力で応えることを正の互報性と言います。
非協力に対して非協力で報いることを負の互報性と言います。
第三は、人は同じ結果であっても、それをも新した相手の意図によって結果の受け止め方を変えるということです。
結果として得られる利得が同じであっても、それが相手のどのような意図に基づくと受け止めるかによって、心理的な利得は異なります。
相手の意図の有無は、相手に報復したり返報したりする互報的行動にも影響を与えます。
行動的ゲーム理論
行動的ゲーム理論は、相互依存的状況下での意思決定を取り扱うツールとして優れた可能性を持っています。
ゲーム理論では、このようなプレイヤー間の相互作用状況を、ゲームと呼ばれる数学的モデルによって定式化して取り扱っています。
伝統的には、各プレイヤーは事故利益最大化を目指して行動するという仮定を置き、様々な相互依存的状況下で、各プレイヤーの選択の最適解を求める手法が探究されてきました。
しかし、人を合理的経済人と位置付けるこの伝統的な仮定は、後述するように必ずしも実際の人間行動に適合しません。
ゲーム理論のアプローチには、どう行動することが合理的なのかに関する規範的理論と、実際に人間がどう行動するのかに関する記述的理論があります。
しかし行動的ゲーム理論は後者に属します。
すなわち、プレイヤーが自己利益最大化にのみ関心を払うという伝統的な仮定を緩め、心理学の知見を取り入れた、人々の実際の振る舞いや、その背後にある認知についての理論だといえるでしょう。
心理学においては、ゲームを用いた人間行動の研究は、主に社会心理学の領域でなされてきました。
それらの研究は、個人の非協力行動を抑制して相互協力を実現することを目指し、それに貢献するだろう要因を次々と操作して膨大な知見を蓄積してきました。
しかし、その歴史を振り返れば、統一理論を欠いたままにゲーム場面での行動説明にのみ焦点を当て、ただ個別的な実験けっかを量産してきた面も否めませんでした。
行動的ゲーム理論は、伝統的なゲーム理論や社会心理学的な実験ゲーム研究が、意思決定研究、神経科学、進化心理学といった領域と、互いに出会うことによってたどり着いた1つの突破口と言えます。
我々の意思決定における心の役割について、多くの刺激的な知見をもたらしつつある領域です。
行動的ゲーム理論では、プレイヤー自身の利得を組み込んだ効用関数だけでなく、他プレイヤーの利得を組み込んだ効用関数や、プレイヤーの信念の関数として利得を定めた効用関数も用いられ、古典的なゲーム理論では説明できなかった社会転機な人間行動についての統一的モデル化と説明が目指されています。
更に、ゲームにおける実際の人間行動を手がかりとして、人間の心の社会性の起源や働きに迫ることにも大きな関心が寄せられ、心理学や行動経済学だけでなく、神経科学や動物行動学も巻き込んで盛んに研究がおこなされています。
投資に応用すると・まとめ
相互依存的状況とは、互いの選択が互いの選択の影響を受け合うような状況のことです。
これは依存のような状況だけでなく、社会生活でも日常的に起こっています。
相互依存的状況になると不確実性が増すということです。
つまり関わる他者が増加すればするほど、不確実性が増してしまうということです。
個人だとコントロールできることでも、他者が関わることにより不確実性が増すということを、覚えておきましょう。
投資に応用すると、例えば企業の傘下の子会社のジャンルが増加すればするほど不確実性が増すということです。
そのため企業は、手を出すジャンルを絞っていた方が良いと言われています。
多くのジャンルに手を出せば出すほど様々な事象から影響を受けてしまうことになるからです。
そのため投資先が、ジャンルを多角化しすぎていないか確認しましょう。
何事も手を出しすぎるのではなく、1つ2つのジャンルを極める方が質が高くなります。
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