今回は、「意思決定と経済の心理学」という本に関する本の学びを共有します。
意思決定と経済の心理学/井上貴之 編
研究論文の形で記載されています。
そのため数式が多く、かなり専門的に解説されています。
シリーズで出版されているのですが、根拠に基づいて記載されていたため、また興味のあるタイトルは読んでみようと思えました。
目次
序章 コンビニのある物語に寄せて
1 価値を測る
2 行動分析学と行動経済学
3 不確実性を測る
4 大きな枠組みから考える
5 院理学と経済学との出会い
第一部 価値を測る
第一章 マッチング関数を使う
1 日常生活の中の選択
2 好ましさの表し方
3 マッチング法則
コラム1 バイアスパラメータbを用いた選好の尺度化
コラム2 人や動物はなぜ蒸れるのか
4 逆マッチング
5 効用関数としてのマッチング関数
第二章 需要関数を使う
1 私たちの消費行動に与える価格の影響
2 実験的行動分析における行動経済学と本章の目的
3 行動経済学の基本的な概念と個体の消費行動の分析
4 個体の消費行動に影響を与える経済学的要因
コラム3 個体内比較法を用いた行動実験のスタイル
5 需要関数と反応支出関数による消費行動の数量的分析と2つの行動指標
6 相対的強化子効力に対する行動経済学的アセスメント
7 強化子の価値の尺度化に対する期待
コラム4 行動経済学の応用行動分析への適用例
第三章 遅延割引関数を使う
1 遅延割引の基礎的事実
コラム5 経済・経営場面における遅延割引
第四章 変化抵抗を使う
1 変あk抵抗についての一般的知見
2 変化抵抗研究の応用
3 価値を示す他の行動指標との関係
4 価値指標研究の意義と今後の展望
コラム6 行動もメンタム概念のスポーツへの適用
第二部 不確実性を測る
第五章 随伴性を測る
1 随伴性とは
2 随伴性の指標
3 随伴性に対する敏感さ
4 人間を対象とした随伴性の判断実験
5 判断の方略
6 随伴性と因果性
7 随伴性学習研究の今後
第六章 リスク性を測る
1 リスク性と不確実性
2 キャリブレーションにおける主観確率の導出の方法
3 キャリブレーションカーブと「自信過剰」
4 自信過剰への影響要因
5 キャリブレーションにおける文化差
第七章 曖昧性を測るー2次確率から見る
1エルスバーグのパラドクス
2 曖昧性忌避に関する研究と経済現象
3 2次確率分布による曖昧性の把握と選好
4 有能感からの説明
第八章 インセンティブ両立的な手段で測る
1 はじめに
2 インセンティブ両立的メカニズム
3 BDMメカニズム
4 BD<メカニズムの実験
5 被験者の選考の特定化をめぐる諸問題
コラム7 オークション
第三部 不確実状況の意思決定を菅gなえる
第九章 行動的意思決定理論から考える
1 意思決定研究の分類
2 規範的意思決定理論
3 人間の決定と規範的決定論の齟齬
4 記述的決定理論
5 確率判断の非合理性
6 処方的アプローチ
7 より近年の動向
8 将来の展望:フォン・ノイマンの彼方へ
第十章 行動的ゲーム理論から考える
1 他者という不確実性
2 よく用いられるゲーム、よくみられる現象
3 他者を考慮する心
コラム8 神経経済学
第十一章 意思決定以前の選択から考える
1 同一物間選択
2 反応バイアス:選ばれやすい内容の選択肢
3 多肢選択肢問題での選択と正当が置かれたいち
3 異質選択肢がある多肢選択肢問題
5 選択からの逃避:「五分五分」解答
6 原始的な選択原理からの出発
学びになった文章ピックアップ・その心理を投資に当てはめる
ほおおおと感銘を受ける研究結果がいくつかあったのですが、今回はそのうちの1つをピックアップさせていただきます。
小腹のすいたあなたにとって、今すぐに手に入れられる乳脂肪たっぷりのアイスクリームと、6ヶ月先の検診でのメタボ解消とでは、あまりに前者の魅力がおおきいのではないだろうか。
ある選択とその選択の結果までの遅延が、ここでは大きな鍵をにぎっている。
ひとも含めた様々な研究から、自分に得にならない結果を選んでしまうという、一見非合理的な行動が様々な酒類の動物で見られるだけでなく、その程度が条件によって色々と変わることもわかってきた。
コンビニの便利さは、そういう意味デはセルフコントロールをさせない仕組みになっているとも言える。
遅延割引とは、遅延時間による、選択の結果の勝ちの低さをさす。
一般に、選択の対象となるものには、「食事」や「給料」など、せんたくしゅたいにとってこのましくないものもあれば、「支払い」や「試験勉強」など、選択主体にとって好ましくないものもある。
ここでは、前者のような話に限定し、選択対象のことを「報酬」と呼ぶことにする。
心理学において、セルフコントロールという言葉は様々な定義が与えられているが、選択行動の視点から見た場合、「すぐに得られる小さい報酬」と「遅延の後に得られる大きい報酬」の間の選択場面において、後者を選択することがセルフコントロール、前者を選択することが衝動性と定義されている。
例えば、ダイエットを試みている人にとっては、「1個のケーキ」よりも「スリムな身体」の方が大きな報酬と考えられるが、今1個のケーキを食べることは、すぐに得られる小さな報酬を選ぶこと、すなわち衝動性をしめしたことになる。
一方、そのケーキを食べずに我慢することは、一ヶ月後に得られるスリムな身体を選ぶこと、すなわちセルフコントロールを示したことになるのである。
セルフコントロールと衝動性の問題は、遅延割引の観点から理解できる。遅延割引の程度における個人差は、割引率で示されるが、割引率の高い人ほど、報酬までの遅延による価値の低下が激しい。
そのため、セルフコントロール選択が不可能な人は、可能な人に比べて、割引率が高く、即時小報酬の価値の方が、遅延大報酬の価値よりも高くなるために、即時小報酬を選択してしまうと考えられるのである。
つまり、人は目先の利益を先にとる傾向があり、後にもっと大きなものを得られる場合でも目先の誘惑に負けてしまいやすいということです。
これを投資に当てはめると、すぐに利益を得られるものに惹かれるが、後々もっと大きくなっていく利益は取りにくいということです。
長期投資よりも短期のトレーダーに流れやすいのはこのことも関係しているでしょうね。
痩せたい痩せたいと言いながら痩せられない人も、目先の美味しさを選択してしまっていることが明らかになっています。
逆に、目先の小さな利益にとらわれずに長期の大きな利益を取れる人は少ないため、とれるかたは非常に優位性があります。
私は常に、目先の利益よりも遠くのもっと大きな利益を取りに行くことを意識して行動することにしました。
続いて、上記の真理を応用した例も挙げられています。
遅延割引の応用
報酬の効果 | 報酬の量が小さいほど、割引率はおおきくなる。 例えば、1000万円と1万円を比べた場合、1万円の方が割引率が大きい。言い換えれば、「10年後の1万円」を待つことは難しいが、「10年後の1000万円」なら待つことは優しい。 これは、少量の報酬ほど消費しやすいためではないかと考えられている。 |
年収の効果 | 年収が少ないほど、割引率が大きくなる。 例えば、年収1000万円の人よりも、年収200万円の人の方が、割引率が大きい。 これは、年収が少ないほど、目先の現金を必要としている度合いが大きいためであるとされている。 一方、収入が多い場合には、長期的に見て有利な報酬を選ぶことができる。 |
年齢の効果 | 若者の方が割引率が大きい。 例えば、60歳被験者よりよ20歳の被験者の方が、割引率がおおきい。 若者よりも中高年のほうが、平均余命が短いことを考えると、中高年のほうが遅延に強いという結果は、直感に反する。 しかし、米国の研究でも日本の研究でも、若者ほど割引率が大きいことは確かである。 この理由としては、いくつかの仮説が考えられる。 例えば、中高年は遅延される大きな報酬を選ぶ方が得であることを、長い時間をかけて学習してきたのかよそれない。 毎月の給与を全て使ってしまえば、いつまでたっても結婚資金や住宅資金はてにはいらない。 目先のご馳走を全て食べてしまうと、生活習慣病になるかもしれない。 一方、これとは別の説も考えられる。 例えば、後に紹介するように、割引率の大きい若者は、喫煙・飲酒・不健康な生活を選びがちである。 そのため、そのような若者は、中高年になれない確率が高い。 その結果として、いま生存している高齢者には、割引率の小さい人が多いのかもしれない。 |
ここにおける割引率とは、よろしくない意味です。
年収が少ないほど割引率が高い結果が興味深いなと思いました。
収入が多いと、長期的にみて有利な方を選択できるということです。
やはり余裕があると、視野が広くなり、より長期的に資産を増加させることができるため、私自身も、まずは収入自体を上げて余裕を得てから、資産の拡大をするとより長期的に見て割引率が低い行動ができると考えました。
心理は投資にも非常に影響しますもんね。
まとめ
このように、心理学を応用した、根拠に基づいた仮説が立てられています。
研究論文のように論理的に書かれていて、根拠があるため読んでいて学びが深いです。
本当に読んでよかったです。
シリーズもので興味深いタイトルはまた読ませていただきます。
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