今回は、決算書における「資産除去債務」について解説します。
資産除去債務
資産除去債務とは
資産除去債務とは、有形固定資産の取得・建設・開発および通常の使用によって発生し、有形固定資産の除去に関して法令または契約で要求される法律上の義務のことです。
例えば、土地を貸借した時に、契約で「土地に建物を建てた場合、契約終了時に建物を除去して変換しなければならない」という法律上の義務がある場合、解体作業や廃材処分の除去費用を負債として計上しなければなりません。
ここでいう除去とは、売却・廃棄・リサイクルなどの方法により有形固定資産を処分することです。
会計処理
有形固定資産の取得時
有形固定資産の取得時(見積額)について割引現在価値を計算し、資産除去債務として計上すると同時に、同額を有形固定資産の帳簿価額に加算します。
資産除去債務計上額=除去に要する支出額×1/(1+割引率)n
=除去に要する支出額×現価係数
※n=累乗根で、発生時から履行時までの年数
決算時
【利息費用の計上】
当初計上した資産除去債務は、期首における現在価値のため、決算時には期末時点の価値に修正します。
具体的には、期首の資産除去債務、割引率を乗じて利息費用を計上し、同額を資産除去債務として増額します。
笑に、利息費用は損益計算上、「資産除去債務に係る固定資産の減価償却費」と同じ区分に表示します。
この利息費用の金額を減価償却費の金額に含めて表示することもあります。
利息費用=資産除去債務期首残高×当初負債計上時の割引率
【減価償却費の計上】
当初資産計上した除去費用は、有形固定資産の残存耐用年数にわたり費用配分します。
有形固定資産の償却計算をする際に、資産計上した除去費用も減価償却費として計上します。
有形固定資産の除去・資産除去債務の履行時
計上していた有形固定資産と減価償却累計額を消去するとともに、除去債務と実際支払額との差額は履行差額として計上します。
履行差額=履行時の資産除去債務残高ー除去にかかる実際の支払額
履行差額も減価償却費と同じ区分に表示します。
表示
資産除去債務・除去費用およびこれに係る損益について、財務諸表の表示区分は次の通りです。
資産除去債務の項目 | 表示区分 | |
資産除去債務 | 1年以内に履行 1年を超えて履行 | 流動負債 固定負債 |
・資産計上した除去費用の費用配分額(減価償却費) ・利息費用 ・履行差額 | 通常の有形固定資産 投資不動産 | 販売費および一般管理費 営業外費用 |
見積もりの変更が生じた時
割引前の将来キャッシュフローに重要な見積もりの変更
割引前の将来キャッシュフローに重要な見積もりの変更が生じた場合の見積もりの変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額や関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します。
※ここでの、割引前の将来キャッシュフローとは、将来の除去費用(見積額)のことです。
適用する割引率
割引前将来キャッシュフローの見積もりの変更に位より、割引前将来キャッシュフローが増加する場合と減少する場合とでは、割引計算に用いる割引率が異なります。
【割引計算に用いる割引率】
割引前将来キャッシュフローの見積もりの変更 | 適用する割引率 |
増加する場合 | その時点の割引率 (見積もりを変更した時点の割引率) |
減少する場合 | 負債計上時の割引率 |
割引前将来キャッシュフローが増加する場合
割引前将来キャッシュフローが増加する場合は、新たに資産除去債務が発生したと考えて、見積もりを変更した時点の割引率を用います。
見積もりの変更を行った後の利息費用や減価償却費の計算は、見積もりの増加分も含めて処理します。
割引前将来キャッシュフローが減少する場合
割引前将来キャッシュフローが減少する場合は、資産除去債務を計上した時点の割引率を用います。
過去の割引前将来キャッシュフローの見積もりが減少した場合、減少部分に適用すべき悪い日きりいつを特定できない時は、加重平均した割引率を適用します。
まとめ
株式投資では、決算書を読み解くために簿記の知識も必要になります。
知識を活かして決算書の理解を深めましょう。
最近のコメント