今回は、決算書の裏側「部門別個別原価計算」について解説します。
部門別個別原価計算とは
違いを述べるためにまず、単純個別原価計算から説明します。
単純個別原価計算
製造間接費を配賦するとき、工場全体で発生した製造間接費を、1つの配賦基準(直接作業時間など)によって配賦します。
このような個別原価計算を、「単純個別原価計算」と言います。
単純個別原価計算は、規模の小さな工場などで採用される傾向があります。
部門別個別原価計算
小規模な工場で採用される単純個別原価計算に対して、
規模の大きな工場で採用される傾向があるのが「部門別個別原価計算」です。
工場の規模が大きくなると、作業内容に応じて「部門」が設けられます。
複数の部門がある場合、工場全体で発生した製造間接費を部門ごとに集計しなおします。
そしてその部門に適した配布基準で各製造指図書に配賦したほうが、より正確に製造間接費を配賦することができます。
このような個別原価計算が部門別個別原価計算です。
※ここにおける部門とは、部署のことです。
製造部門と補助部門
製造部門とは
製造部門とは、材料の切断・部品の組み立て・製品の塗装など、製品の製造に直接関わる部門のことです。
製造部門には、切削部門・組立部門・塗装部門などがあります。
補助部門とは
補助部門とは、材料や製品の運搬・機械の修繕・工場全体の事務処理など、製品の製造に直接関わらずに、製造部門をサポートしている部門のことです。
補助部門には、運搬部門・修繕部門・工場事務部門などがあります。
製造間接費の部門別計算の流れ
製造間接費の部門別計算の流れは下記の通りになります。
①製造間接費を各部門に集計し直す
②補助部門費を製造部門に配賦する
③製造部門費を製造指図書に配賦する
それぞれを説明します。
①製造間接費を各部門に集計し直す
製造間接費は、どの部門で発生したものかが明確かどうかによって、「部門個別費」「部門共通費」に分けられます。
【部門個別費とは】
どの部門で発生したものかが明確な製造間接費のことです。
そのため、各部門に賦課します。
【部門共通費とは】
どの部門で発生したものかが明確ではない製造間接費のことです。
そのため、適切な配布基準を用いて各部門に配賦します。
②補助部門費を各製造部門に配賦する
製造間接費を各部門に集計し直したら、補助部門に集計された製造間接費(補助部門費)を各製造部門に配賦します。
この際の配賦方法には、「直接配賦法」「相互配賦法」の2種類あります。
【直接配布法】
補助部門間のサービスのやりとりを計算上無視し、補助部門ひを製造部門のみに配賦する方法です。
【相互配賦法】
補助部門間のサービスのやりとりを計算上でも考慮し、補助部門費を製造部門・補助部門に配賦する方法です。
③製造部門費を製造指図書に配賦する
最後に、各製造部門に集計された製造部門費を、適切な配賦基準を用いて各製造指図書に配賦します。
製造部門費の予定配賦
上記では、実際発生額をもとにして、実際配賦(製造部門費を各製造指図書に配賦)しましたが、製造間接費を予定配賦したように、製造部門費についても「予定配賦率」を用いて予定配賦することが認められています。
予定配賦額の計算
製造部門費を予定配賦するときは、まず、年間の製造部門費の予算額である「製造部門予算額」を見積もります。
これを年間の予定配布基準数値(基準操業度)で割って、部門別予定配布率を計算します。
年間の製造部門費予算額を計算する際は、実際配布と同時に部門別配賦表を用いて配賦計算をします。
配賦計算のもととなる金額が実際発生額か予算額か、と言うことが異なるだけで、計算方法は同じになります。
これを計算式にまとめると次の通りになります。
①部門別予定配賦率 = 年間の製造部門費予算額 ÷ 基準操業度
②予定配賦額 = 部門別予定配賦率 × 各製造指図書の実際配賦基準数値
月末の処理
月末において、製造部門費の実際発生額を計算し、予定配賦額と実際発生額の差額を、製造部門費勘定から「製造部門費配賦差異勘定」に振り替えます。
更に、製造部門費の予定配賦額は製造部門費勘定の貸方に、実際発生額は製造部門費勘定の借方に集計されるため、この差額を「製造部門費配賦差異勘定」に振り替えます。
まとめ
株式投資では、決算を読み込むために簿記の知識もあると優位になります。
今後も決算を読み解いていきましょう。
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