今回は、決算書における「会計上の変更・誤謬の訂正」について解説します。
会計上の変更・誤謬の訂正
会計上の変更
会計上の変更とは、会計方針の変更・表示方法の変更・会計上の見積変更のことです。
過去の財務諸表における誤謬の訂正は、会計上の変更には該当しません。
誤謬
誤謬とは、原因となる行為が意図的であるか否かに関わらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、またはこれを誤用したことによる誤りのことです。
誤謬の例としては、次のようなものがあります。
・財務諸表の基礎となるデータの収集または処理場の誤り
・事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り
・会計方針の適用の誤りまたは表示方法の誤り
会計処理の必要性
財務諸表は、有価証券報告書などを通じて開示され、一般的に当期の財務諸表と前期の財務諸表を並べて表示します。
ここで、会計上の変更・誤謬が見つかった場合、当期の財務諸表にのみ反映させて前期位の財務諸表に反映させないと、財務諸表の期間比較が難しくなります。
そこで、過去の財務諸表に遡ってこれを適用・修正します。
これを遡及処理と言います。
会計上の変更の会計処理
会計方針の変更
会計方針の変更とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することです。
会計方針は、正当な理由により反抗を行う場合を除き、毎期継続して適用しなければなりませんが、正当な理由により変更する場合は、原則として新たな会計方針を過去に遡って適用します。
この会計処理を遡及適用と言います。
例えば、棚卸資産の評価方法を先入先出法から総平均法に変更する場合や、キャッシュフロー計算書における資金の範囲を変更する場合などが該当します。
更に、減価償却の方法は会計方針に該当しますが、その変更(定率法から定額法への変更など)は、「会計方針の変更を会計上の見積りの変更と区別することが困難な場合」とされます。
この場合、会計処理上は、会計上の見積りの変更と同様に取り扱い、遡及適用は行いません。
表示方法の変更
表示方法の変更とは、従来採用していた一般的に公正妥当と認められた表示方法から他の一般に公正立とうと認められた表示方法に変更することです。
財務諸表の表示方法w変更した場合は、原則として、新たな表示方法を過去の財務諸表に遡って適用していたものとして表示し直します。
この会計処理を財務諸表の組替えと言います。
例えば、減価償却累計額の表示を直接控除方式から間接控除方式に変更する場合などが該当します。
会計上の見積りの変更
会計上の見積の変更とは、新たに入手可能となった情報に基づいて、過去に財務諸表を作成する際に行った会計上の見積を変更することです。
会計上の見積りの変更は、新たに入手可能となった情報に基づく変更であるため、過去の期間の財務諸表に影響を与えるものではないと考え、遡及処理は行いません。
例えば、備品の耐用年数を5年から7年に変更する場合や、市場販売目的のソフトウェアにおける見込み販売数量を変更する場合などが該当します。
誤謬の訂正の会計処理
過去の財務諸表における誤謬が発見された場合は、過去の財務諸表に遡って修正します。
これを修正再表示と言います。
会計上の変更・誤謬の訂正のまとめ
会計上の変更・誤謬の訂正をまとめると、次のようになります。
適用場面 | 遡及処理 | 処理の名称 | |
会計上の変更 | 会計方針の変更 | する | 遡及適用 |
会計上の変更 | 表示方法の変更 | する | 財務諸表の組替え |
会計上の変更 | 会計上の見積の変更 | しない | ー |
誤謬の訂正 | 過去の誤謬の訂正 | する | 修正際表示 |
適用場面 | 具体例 |
会計方針の変更 | 棚卸資産の評価方法を先入先出法から総平均法に変更 |
表示方法の変更 | 減価償却累計額の表示を直接控除方式から間接控除方式に変更 |
会計上の見積りの変更 | 備品の耐用年数を5年から7年に変更 |
過去の誤謬の訂正 | 現金3300円としていたものが3400円だった等 |
まとめ
株式投資や経営において、決算書の理解は必要です。
そのため簿記の知識も活かして決算書の理解を深めましょう。
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