決算書における【 企業結合・事業分離 】解説まとめ

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今回は、決算書における「企業結合」「事業分離」についての解説をまとめました。

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企業結合と取得

企業結合とは

企業結合とは、ある企業(またはその事業)と他の企業(またはその事業)が1つの報告単位に結合されることです。

具体的には、合併株式交換株式移転などの取引が該当します。

企業結合の分類

企業結合は、その実態から以下の3つに分類されます。

更に、企業結合に係る企業を結合当時企業と言います。


【企業結合の分類】

・取得:ある企業が他の企業またはその事業に対する支配を獲得すること

・共同支配企業の形成:契約に基づいて、複数の独立した企業により共同で支配される企業を形成する企業結合

・共通支配下の取引:企業結合の前後で同一の株主により支配され、かつその支配が一時的ではない企業結合


ここでは、主要の「取得」に関する説明をします。

更に、取引が取得に分類される場合、他の企業またはその事業を取得する側の企業を取得企業、取得される側の企業を被取得企業と言います。


共同支配企業の形成は、契約に基づいて合併企業を設立する場合、共通支配下の取引はある企業の子会社同士が合併する場合などで、このどちらにも該当しない企業結合は取得と判定されます。

取得の会計処理

取得と判定された企業結合は、バーチェス法によって処理します。

バーチェス法とは、被取得企業から受け入れた資産及び負債の取得原価を、対価として交付する現金及び株式などの時価(公正価値)とする方法のことです。

この取得原価は、被取得企業から受け入れた資産及び負債のうち、企業結合日において識別可能(時価を把握することができる)なものに対して配分します。

また、取得原価が、受け入れた資産及び負債に配分された純額(受け入れた純資産額)を上回る場合にはのれん、下回る場合には負ののれんとして処理します。


【バーチェス法の処理方法】

・受け入れた資産:原則として企業結合日の時価で処理

・受け入れた負債:原則として企業結合日の時価で処理

・取得原価:対価として交付する現金及び株式等の時価で処理

・のれん:取得原価が配分された純額を下回る場合は負ののれんとして処理


時価ではなく、公正価値と言う用語が出てくる場合がありますが、同義語です。

取得に要した支出額の会計処理

取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業編どの費用として処理します。

のれんの会計処理

のれんは、発生時に資産として計上後、20ねにないで償却します。

これに対して、負ののれんは、負ののれんが生じた事業年度の利益として負ののれん発生益勘定で処理します。


【のれん及び負ののれんの表示】

・のれん:B/S 無形固定資産

・のれん償却額:P/L 販売費及び一般管理費

・負ののれん発生益:P/l 特別利益


負ののれんとは、取得原価が、受け入れた資産及び受け入れた負債に配分された純額を下回る場合における差額のことです。

この負ののれんが発生する状況としては、受け入れた識別可能資産及び負債の測定を誤っている可能性や、バーゲン・バーチェス(売却側に当該事業を時価よりも低い価格で処分せざるを得ない事情があり、割安に購入できたという通常では起こりにくい状況)の可能性があります。

つまり、負ののれんは、普通では生じないはずのものだけど、たまたま生じてしまったもののことです。

そこで、負ののれんは、(負債として計上せず)発生した事業年度の利益(特別利益)として処理します。

合併

合併の形態

辰平とは2つ以上の会社が合体して1つの会社になる取引のことです。

合併の形態には吸収合併新設合併の2つがあります。


吸収合併とは、ある会社が他の会社を吸収する合併のことです。

吸収された会社は消滅します。


新設合併とは、合併当時会社全てが消滅し、新しい会社を設立する合併のことです。

これらの合併により消滅する会社を消滅会社(複数合併会社)と言います。

存続する会社及び新設される会社を存続会社(合併会社)と言います。

吸収合併の流れ

吸収合併では、消滅会社の株主が所有する消滅会社株式を存続会社が受け取る代わりに、対価を校風s流ことによって合併が行われます。

吸収合併の会計処理

対価として新株を交付する場合

吸収合併において存続会社が消滅会社を取得し、存続会社が取得企業、消滅会社が被取得企業であると判断された場合、バーチェス法で処理します。

取得の対価として新株を交付する場合、取得原価である交付株式の時価を払込資本(資本金・資本準備金・その他資本剰余金)の増加として処理します。

対価として自己株式を処分した場合

対価として株式を交付する場合、新株を発行せずに、自己株式(金庫株)を処分して交付することがあります。

この場合、処分した自己株式を含む交付株式の時価により取得原価を計算し、計算した取得原価から自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本として処理します。


合併の対価として自己株式を処分した場合、自己株式処分差益(損)は発生しません。

この点は、企業結合以外で自己株式を処分する場合の処理と異なるため注意しましょう。

段階取得の場合

合併する以前から存続会社が消滅会社の株式の一部を所有している場合(抱合株式がある場合)があります。

このように、取得が結果として複数の取引により達成された場合を段階取得と言います。

段階取得の場合、存続会社が所有する抱合株式に対しては、取得の対価を交付しません。

したがって、取得原価は抱合株式の帳簿価額に、交付する株式などの時価を合算した金額となります。


取得原価=存続会社株式の時価×交付株式数+存続会社が所有する消滅会社株式の帳簿価額


吸収合併のうち、

①対価として新株を交付する場合

②対価として自己株式を処分した場合

③段階取得の場合

の3つのケースを説明しました。

これらは混同しがちですが、3つとも仕訳の流れは共通しています。

仕訳の流れはどれも、次のようになります。

1.取得原価の計算

2.時価による資産・負債の受入れ

3.のれんの計上

4.取得原価の内訳の決定


このうち、①〜③のケースで異なるのは1と4のみで、2と3と全体の流れはどのケースにおいても共通する部分です。

そのため①〜3の異なる部分に着目して理解しましょう。


以上の吸収合併の処理についてまとめると、次のようになります。

取得原価払込資本
①対価として新株を交付する場合交付株式の時価交付株式の時価
②対価として自己株式を処分した場合処分した自己株式を含む交付株式の時価取得原価ー自己株式の帳簿価額
③段階取得の場合抱合株式の帳簿価額+交付株式の時価甲府株式の時価

合併相殺仕訳

合併当時会社間に債権債務(貸付金と借入金、売掛金と買掛金)がある場合、相殺消去する必要があります。(合併相殺仕訳)


債権に対して貸倒引当金を設定している場合は、これを減額修正する必要があります。

しかし、貸倒引当金繰入は前期に発生した費用のため、当期に費用を取り消すことはできません。

そのため、繰越利益剰余金を通じて調整します。

交付株式数の算定

合併の際に消滅会社の株主に交付する交付株式数は、

①企業評価額の算定

②合併比率の算定

③交付株式数の算定

という流れで計算します。

企業評価額の算定

まず、交付株式数を算定する前に、企業評価額を適切に算定する必要があります。


会計基準によって規定されていないため、様々な方法が考えられます。

ここでは主要な方法を説明します。

純資産額法

純資産額法とは、企業の純資産がくで企業を評価する方法です。

企業評価額=総資産ー総負債=純資産額


純資産額法では、時価で計算する場合と帳簿価額で計算する場合があります。

収益還元価値法

収益還元価値法とは、企業の収益力によって評価する方法で、企業の過去数年間の平均利益額を資本感が減率で割って求めた価額(収益還元価値)によって企業を評価します。

企業評価額=自己資本×自己資本利益率÷資本還元率=収益還元価値

※自己資本×自己資本利益率=平均利益額


収益還元価値法の自己資本に関しても、時価で計算する場合と帳簿価額で計算する場合があります。

株式市価法

株式市価法は株式の市場価格に注目して評価する方法であり、株式の時価総額によって企業評価額を計算します。

企業評価額=1株たりの時価×発行済株式総数

折衷法

折衷法とは複数の方法で計算された企業評価額の平均値を企業の評価額とする方法です。

合併比率の算定

合併比率は、消滅会社の発行済株式総数に合併比率をかけて計算します。

交付株式数=消滅会社の発行済株式総数×合併比率

株式交換

株式交換とは

株式交換とは、株式会社がその発行済み株式の全部を他の会社に取得させる手法のことです。

株式交換により、既存の会社同士は完全親会社と完全子会社という関係になり、完全子会社となる会社の株主は、完全親会社となる会社の発行する株式の割り当てを受け、完全や会社の株主となります。


完全親会社とは、他の発行済み株式の全てを保有する会社を、完全子会社とは、他の会社に発行済み株式の全てを保有されている会社のことです。

株式交換の会計処理

株式交換において完全親会社が取得企業、完全子会社が被取得企業であると判断される場合はバーチェス法によって処理し、完全子会社株式の取得原価は、交付する完全親会社株式の時価となります。


更に、株式交換比率の計算方法は、合併比率の計算方法と同様です。


払込資本の内訳に関しては、場合によって処理しましょう。

対価として自己株式を処分した場合

合併の場合と同様に、新株を発行せず自己株式を処分して交付することがあります。

この場合、処分した自己株式を含む交付株式の時価により取得原価を計算し、計算した取得原価から自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本として処理します。


株式交換の対価として自己株式を処分した場合、自己株式処分差益(損)は発生しません。

これは合併の場合と同様のため、合わせて確認しましょう。

株式移転

株式移転とは

株式移転とは、株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する会社に移す手法のことです。

株式移転により、既存の株式会社は完全子会社となり、新たに設立する株式会社が完全親会社になります。

また、完全子会社となる会社の株主は、完全親会社となる会社の発行する株式の割り当てを受け、完全親会社の株主となります。


つまり株式移転とは、会社設立と株式交換という2つの手続きを同時に行う手法です。


現にホールディングスといった会社が存在しますが、この中には株式移転によって新設されたものが多くあります。

これは、株式移転により持株会社ホールディングスを設立して、他の企業を完全子会社化したものです。


詳細→決算書における【 株式移転の連結上の処理 】分かりやすく解説

株式移転の会計処理

完全親会社は、株式移転により設立されるため、株式移転時に完全親会社の株式の時価は存在しません。

そのため、株式移転によって完全子会社となる会社のいずれかが、他の企業を取得したと仮定して処理します。


どの会社が取得企業となるかは、完全子会社となる株主の議決権比率の大きさなどから判断します。


また完全親会社が取得する子会社株式のうち、取得企業の株式は取得企業の株主資本の額(帳簿価額)とし、被取得企業の株式は取得企業の株式の時価に基づいて計算します。

子会社株式(取得企業)の取得原価=取得企業の株主資本の額(帳簿価額)

子会社株式(被取得企業)の取得原価=取得企業の株式の時価×交付株式数


更に、株式交換比率の計算方法は、合併比率の計算方法と同様です。

また、払込資本の内訳に関しては、その時の場合によって処理しましょう。

事業分離

事業分離とは

事業分離とは、ある会社を構成する事業を他の会社に移転することです。

事業分離の形式には、会社分割・事業譲渡・現物出資などがあります。

ここでは主要な会社分割について説明します。

会社分割とは

会社分割は、吸収分割と新設分割に分けられます。

吸収分割とは、ある会社がその事業を他の会社に継承させることです。

新設分割とは、ある会社がその事業を新しく設立する会社に継承させることです。

吸収分割の会計処理(分離元企業)

会社分割の際の対価は、現金などの財産や株式となります。

この時、対価の種類などにより、分離元企業の事業に対する投資の継続性の有無が決まります。

対価と投資の継続性のパターンは次の通りです。


【事業分離のパターン(分離元企業)】

〈受付対価が現金などの財産のみ〉

投資の継続性移転損益
分離先企業が子会社である場合共通支配下の取引認識する
上記以外投資は投資は精算されたとみなす認識する


〈受取対価が株式のみ〉

投資の継続性移転損益
分離先企業が子会社や関連会社の場合投資は継続しているとみなす認識しない
上記以外投資は精算されたとみなす認識する


元々親子関係であった会社間での取引は共通支配下の取引となります。

この場合、単なる内部取引と考えられるため、投資が精算されているとはみなしません。

しかし、対価が現金の場合は受け取った現金と移転した事業の帳簿価額が異なるため移転損益が計上されます。

投資が精算されたとみなす場合(投資の継続性はなし)

移転した事業に対する投資が精算されたとみなす場合には、期待された成果が確定したと言えるため、移転損益を認識し、その他いかは時価で評価します。

投資が継続しているとみなす場合

移転した事業に対する投資が継続しちえるとみなす場合は、事業分離後も、分離元企業が事業に対して何らかの影響を与えることができると考えられるため、移転損益は認識しません。

そのため、その対価は移転した事業の株主資本相当額(帳簿価額)で評価します。

投資が継続しているとみなす場合

移転した事業に対する投資が継続しているとみなす場合は、事業分離後も、分離元企業が事業に対して何らかの影響を与えることができると考えられるため、移転損益は認識しません。

そのため、その対価は移転した事業の株主資本相当額(帳簿価額)で評価します。

吸収分割の会計処理(分離先企業)

分離先企業の会計処理は、会社分割によって分離先企業が分離元企業の子会社になるかどうかで決まります。

分離先企業が子会社になる場合、移転された資産及び負債は、移転前に付された事業の適正な帳簿価額で評価します。

一方、分離先企業が子会社にならない場合、バーチェス法によって処理します。

つまり移転された資産及び負債は、事業の時価によって評価し、支払い対価との差額はのれん(または負ののれん)として処理します。


【事業分離のパターン(分離先企業)】

〈支払対価が現金などの財産のみ〉

企業結合の実態支払対価との差額
分離先企業が子会社である場合共通支配下の取引のれん(または負ののれん)として処理
上記以外取得のれん(または負ののれん)として処理


〈支払対価が株式のみ〉

企業結合の実態支払対価との差額
分離先企業が子会社になる場合逆取得
上記以外取得のれん(または負ののれん)として処理

事業分離した結果、事業を取得した分離先企業が分離元企業の子会社となることを逆取得と言います。

まとめ

株式投資や経営において、決算書の理解は必須になります。

その際、簿記の知識も生かして決算書の理解を深めましょう。


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