決算書における【 連結会計について 】分かりやすく解説

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今回は、決算書における「連結会計」について解説します。

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連結財務諸表

親会社と子会社

株式会社では保有株式数に応じた議決権が与えられるため、約50%以上の株式を保有していれば、その会社の基本的事項を決定することができ、実質的には会社を支配していると言えます。

そして、その会社を支配している株主が他の会社だった場合、支配している会社を親会社、支配されている会社を子会社と言い、このような関係を子会社と言います。

このような関係を支配従属関係と言います。


例えば、A社がB社の株式を80%保有していたとします。

A社はB社の株主総会の議決権の80%を持っているため、多数決によってB社の都合の良いようにB社の取締役を選んだり、配当をしたり、株式を発行したりすることができます。

この状態は、A社はB社を支配しているという状態です。

そのためA社が親会社、B社が子会社と言います。

連結財務諸表の必要性

連結財務諸表とは、支配従属関係にある2つ以上の企業からなる企業グループ全体の経営成績、財政状態、キャッシュフローの状況を報告するために親会社が作成する財務諸表のことです。

支配従属関係のある親子会社の場合、親会社は子会社の意思決定を自由に行えるだけでなく、株主として損益の影響も受けることになります。

そこで、企業の利害関係社に適切な情報を提供するため、両社を合わせた企業集団全体の財務情報が必要になり、このために作成するのが連結財務諸表です。


ここで先程のA社とB社を例に挙げます。

A社はB社を支配しており、取締役も配当も自由に決めることができるため、B社は実質的にA社の一部だと考えられます。

更に、B社の経営成績が大株主であるA社の業績にも影響を与える以上、A社の株主としては、B社の事業がうまく行っているかどうかも含めたB社グループ全体の財務情報が必要になります。

そこで、A社とB社を合算したA社連結財務諸表が作成されます。


親会社は子会社を支配する強い立場にいるため、支配従属関係を利用した利益捜査を行うことが可能です。

しかし、連結財務諸表では企業グループ内部の取引は消去されるため、連結財務諸表を作成することにより企業集団全体の実態を明らかにすることができます。


例えば、親会社A社が売れ残っている商品を抱えていたとします。

この場合、A社は親会社という強い立場を利用して子会社B社に商品を無理矢理販売して利益を出すということも可能です。

しかし、A社グループ全体の視点から見れば、グループ内で商品と金銭が移動したにすぎず、この取引で売上や利益が出たとは言えません。

そのため、このようなグループの取引を相殺消去することにより、グループ全体としての実態を明らかにします。

親会社と経済的単一体説

連結財務諸表の作成については、親会社説と経済的単一体説の2つの考え方があります。

親会社説とは、連結財務諸表を主に親会社の株主の立場から作成するものとみる考え方です。

経済的単一体説とは、連結財務諸表を親会社以外の株主である非支配株主も含めた企業集団全体の株主の立場から作成するものとみる考え方です。


日本では、基本的に親会社説による考え方を踏まえた取り扱いが定められてきましたが、必ずしも親会社説と整合する会計処理が採用されているわけではありません。

親会社説と整合するものもあれば、経済的単一体説と整合するものもあります。

連結の範囲

連結財務諸表において合算の対象となる会社の範囲を連結の範囲と言います。

原則として全ての子会社を連結財務諸表に含めなければなりません。

そして、子会社に該当するかどうかは、意思決定期間を実質的に支配しているかどうかで判断します。(支配力基準)

基本的には他の企業の株主総会の議決権の過半数(50%以上)を所有していれば支配しちえると判断されますが、議決権が50%以下であっても40%以上を保有していて、かつ他の企業の取締役会の過半数を自社の役員や従業員が占めている場合など、会社の状況などに応じて実質的に支配を判断します。


親会社関係を実質的に判断する支配力基準に対して、議決権が過半数であるかどうかのみで判断する方法を持株基準と言います。


更に、子会社であっても、支配が一時的であると認められる企業、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れのある企業は、連結の範囲に含めません。(非連結子会社)


【連結の範囲】

〈原則:全ての子会社〉

子会社の判断基準(支配力基準)

・他の企業の株主総会の議決権の50%以上を保有している

・他の企業の株主総会の議決権の40%以上50%以下を保有し、かつ自社の役員・従業員が他の企業の取締役会の過半数を占めている


〈例外〉

連結の範囲に含めない子会社(非連結子会社)

・支配が一時的と認められる企業

・連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせる恐れのある企業


詳細→決算書における【 按分法適用会社から連結子会社への移行 】分かりやすく解説

連結財務諸表の種類

連結財務諸表には、連結損益及び包括利益計算書(または連結損益計算書及び連結包括利益計算書)、連結貸借対照表、連結キャッシュフロー計算書、連結株主資本等変動書、連結付属明細表があります。


【連結で特徴的な項目】

・のれん償却額

・持分法による投資利益

・負ののれん発生益

・段階取得に係る差益

・当期純利益

・非支配株主に帰属する当期純利益

・親会社株主に帰属する当期純利益

・為替換算調整勘定

・親会社株主に係る包括利益

・非支配株主に係る包括利益

連結財務諸表の作成方法

連結財務諸表作成の流れ

連結財務諸表は、親会社の財務諸表と各子会社の財務諸表の数値を合算した上で、親子会社間のとりひきなどについて修正を加えることで作成します。

この仕訳を連結修正仕訳と言います。


各個別財務諸表の合算や連結修正仕訳といった連結の作成手順は、連結精算表上で行われます。

連結精算表には様々な様式があります。

連結修正仕訳の分類

親会社と子会社の各個別財務諸表を合算した金額を、連結財務諸表あるべき金額に修正するために連結修正仕訳が行われます。

連結修正仕訳のうち、前期以前の修正に係るものを開始仕訳、当期分の修正に係るものを期中仕訳と言います。

また、親会社の投資と子会社の資本を相殺する仕訳を資本連結と言います。

親子会社間の取引を相殺する仕訳を連結会社間取引の相殺消去法と言います。


【連結修正仕訳の分類】

○連結の基本構造に係る分類

・開始仕訳(前期以前の修正)

・期中仕訳(当期に発生した修正)


○仕訳対象に係る分類

・資本連結(親会社の投資と子会社の資本の相殺)

・連結会社間取引の相殺消去(親会社間取引の相殺)

支配獲得日の連結

支配獲得日の連結の流れ

会社が他の会社の株式を取得して支配を獲得することで両社はそれぞれ親会社・子会社となr、連結財務諸表を作成することになります。

支配を獲得した日には、両社の個別財務諸表の合算に加えて、子会社の資産・負債の時価評価と、資本と資本の相殺消去を行います。


親会社が子会社株式を時価で取得し、親会社が子会社の支配を獲得したということは、子会社の資本(子会社の資産と負債)を時価で取得し企業グループに含まれることとなった、と考えることができます。

支配獲得日の差結修正仕訳を理解する上では、この点を意識することが非常に重要になります。


子会社の資本は、子会社の個別貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等と評価差額からなります。

投資と資本の相殺消去

会社が他の会社の株式を取得することによって支配を獲得した時、この株式は、親会社の個別財務諸表では子会社株式(資産)として表示されます。

一方、子会社の個別財務諸表では(自社が発行した株式のため)株主資本として表示されているため、両社の財務諸表を単純合算すると、子会社株式(親会社が行った投資)と子会社の資本が両建てで表示されることになります。

しかし、企業グループ全体の視点で見ると、これは株式を通してグループ内で資金が移動しているだけのため、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去します。

100%子会社となる場合

親会社が子会社の全ての株式を取得して100%子会社とした場合、支配獲得日の連結貸借対照表の純資産の部に計上される金額は、親会社の個別財務諸表の金額になります。

部分所有となる場合

親会社が子会社の株式の100%を保有していない場合において、親会社以外の子会社株主のことを、非支配株主と言います。

この場合でも支配従属関係にはあるため、100%を保有していた場合と同様に投資と資本の相殺消去仕訳を行いますが、子会社の株式の一部を支配株主が保有しているため、親会社の株式だけでは子会社の資本を全て相殺できません。

そこで、子会社の純資産のうち非支配株主の株式保有割合に当たる部分については、非支配株主持分(純資産)に振り替えます。


非支配株主持分は、子会社の純資産のうち、「非支配株主に帰属する部分」を表す勘定科目です。

非支配株主持分は、子会社の純資産の合計額に非支配株主の株式保有割合(非支配株主部分割合)をかけることで求めます。

投資消去差額が生じる場合

親会社の投資の金額と子会社の純資産のうち、親会社に帰属する部分の金額が異なることにより、投資と資本の相殺消去で差額が生じることがあります。

この差額を投資消去差額と言い、借方に生じた場合はのれん(無形固定資産)、貸方に生じた場合は負ののれん発生益(特別利益)として処理します。


投資と資本の相殺消去の本質は、投資をそれに対応する具体的な形(子会社の資産・負債など)に置き換えることにあると言われています。


親会社と子会社の個別貸借対照表を合算し、投資と資本の相殺消去を行った結果、投資(子会社株式)がそれに対応する具体的な形(子会社の資産・負債など)に置き換えられていることが分かります。

子会社の資産・負債の時価評価

子会社の保有している資産は、取得原価主義に基づく帳簿価額で計上されていますが、子会社の保有している資産を企業グループの視点で見ると支配獲得日に新たに外部から取得した資産と言えます。

通常の取引で資産を外部から取得した場合、取得価額は当然取得時の時価となるため、連結でも同様に子会社の資産・負債を支配獲得日の時価に評価替えする必要があります。(全面時価評価法)


例えば、A社(親会社)がB社(子会社)の株式を取得して子会社とした場合を考えてみましょう。

A社の個別財務諸表の土地の帳簿価額は500円ですが、この土地の時価は600円であり、含み益が100円ありました。

B社グループの視点で考えると、支配獲得日に土地を時価600円で取得したと考えることができます。

もとも持ち主の帳簿価額がいくらであったかは関係ありません。

また、A社はB社の株式を通してこの土地を取得したわけですが、B社の株式の取得価額(取得時の時価)には土地の含み益が反映されていると考えられます。

つまり、B社の持っていた土地は、連結上では600円であるべきです。

しかし、B社の個別財務諸表上は500円で計上されているため、連結財務諸表上で時価の600円に評価替えします。

税効果会計を無視した場合

子会社株式の取得価額には、資産・負債の時価が反映されています。

一方、子会社株式は会社にとってみれば資本のため、評価差額は連結上子会社の資本として処理します。

税効果会計を考慮した場合

子会社の資産・負債を評価替えすることによって税務上の資産・負債との間に一時差異が生じるため、評価差額に対して税効果会計を適用します。

支配獲得日後の1年目の連結

支配獲得日後の連結

支配獲得日時点では貸借対照表のみを合算(連結)しましたが、支配獲得日以降は損益計算書株主資本等変動計算書も連結する必要があります。

開始仕訳

連結財務諸表は、毎期末に各社の当期の個別財務諸表を合算して新たに作成しますが、当期の個別財務諸表には前期までに行った連結修正仕訳が反映されていません。

そこで、前期までに行った連結修正仕訳を当期にもう一度行う必要があります。

これを開始仕訳と言います。

開始仕訳では、支配獲得日から前期までに行った仕訳を再度行います。

ただし、資本金や利益剰余金といった純資産項目については、勘定科目の後ろに「当期首残高」をつけて、資本金当期首残高利益剰余金当期首残高のように、連結株主資本等変動計算書の勘定科目で仕訳をします。

のれんの償却

投資と資本の相殺消去によってのれん(借方の投資消去差額)が生じた場合、原則として20年以内に定額法等の方法で償却します。

子会社の等基準損益の振り替え

子会社の等基準損益の振り替え

連結損益計算書では、当期純利益から非支配株主に帰属する部分を控除して親会社株主に帰属する当期純利益を表示します。

ここで、子会社の当期純利益(子会社株式の利益剰余金の変動要因)のうち、連結損益計算書に計上される親会社株主に帰属する当期純利益の金額は、親会社株主持分のみです。

したがって、子会社の当期純利益のうち非支配株主に帰属する部分は非支配株主持分に振り替えます。

更に、仕訳上は非支配株主持分当期変動額として処理し、相手勘定は非支配株主に帰属する当期純損益とします。

非支配株主に帰属する等基準損益の損益計算書上の表示

非支配株主に帰属する等基準損益は、借方の金額と貸方の金額を相殺して、連結損益計算書に計上します。

更に、非支配株主に帰属する等基準損益が借方残高の場合、連結損益計算書上は非支配株主に帰属する頭位純利益として表示し、当期純利益から減額します。


連結財務諸表の当期純利益には、非支配株主に帰属する部分も含められます。

しかし、親会社株主の視点も重視されるため、2計算方式の場合は、当期純利益に、非支配株主に帰属する等基準損益を加減して親会社の株主に帰属する当期純利益を表示し、1計算書方式の場合は、当期純利益の直後に、親会社株主に帰属する当期純利益と非支配株主に帰属する当期純利益を付記します。

子会社の配当金の修正

子会社が配当金を支払った場合、親会社は子会社から配当金を受け取りますが、子会社から親会社への配当の支払いは企業グループの内部取引のため、連結修正仕訳で相殺消去する必要があります。

更に、利益剰余金は純資産項目であるため、連結株主資本等変動計算書に従い、剰余金の配当という勘定科目で処理します。

また、非支配株主がいる場合は非支配株主持分の減少として処理します。

支配獲得日後2年目以降の連結

2年目以降の開始仕訳

支配獲得日後2年に以降になっても、1年目と同じように、前年以前におおなった連結修正仕訳を開始仕訳として再び行います。

この場合も、1年目と同様に、純資産項目は「当期首残高」という連結株主資本等変動計算書の勘定科目を用います。

また、前期以前に計上した損益項目(のれん償却など)についても利益剰余金当期首残高で処理します。


前期以前の損益項目は、その期の損益計算書の当期純利益を通して利益剰余金を変動させますが、当期の連結損益計算書には当然反映しません。

したがって、他の純資産項目が変動した時と同様に、利益剰余金当期首残高の変動として取り扱います。

タイムテーブルを使った解き方

本来、支配獲得日後2年目以降の連結財務諸表作成の際には、前期以前の全ての仕訳そ開始仕訳として行いますが、全ての年の仕訳をし、そこから開始仕訳をするとなると時間がかかる上に、計算量も多くなります。

そこで、ある程度連結会計に慣れて理解が深まったら、1つ1つの仕訳を行わずにタイムテーブルから開始仕訳を行ったり、直接財務書評項目を算定することもできます。


タイムテーブルの作り方は次の通りです。


①支配獲得日の状況を明記する

まず、タイムテーブルに支配獲得日の日付と親会社の取得割合、親会社の所有する子会社株式の帳簿価額、子会社の純資産項目(評価差額を含む)を記入します。

②支配獲得日の非支配株主持分を計算する

①で記入した子会社の純資産額を合計して、非支配株主持分割合をかけることで、非支配株主持分を求めます。

③支配獲得日ののれんを算定する

タイムテーブル上の借方の貸方の差額で、のれんを算定します。

④前期末の状況を記入する

支配獲得日と同じように、前期末の状況も記入します。

純資産の項目は問題に与えられていればそのまま使います。

与えられていなければ、期中の増減から計算します。

純資産項目は、当期純利益・配当・のれんの償却などにより増減します。

⑤利益剰余金の増減額を記入する

利益剰余金の変動額のうち、非支配株主持分に振り替える額を記入します。

ここでは、子会社の等基準損益の振り替えと子会社の配当金の修正の仕訳による非支配株主持分の増減を記入します。

⑥開始仕訳を行う

これまでに作ったタイムテーブルをもとに、当期の開始仕訳を行います。

開始仕訳は、タイムテーブル上の支配獲得日の数値と、前期中の利益剰余金の非支配株主持分への振り替え、のれんの償却などの合計となります。

⑦当期の状況を記入し、期中仕訳を行う

当期中の子会社の等基準損益・子会社の配当金の修正・のれんの償却について計算し、当期末の子会社の純資産を記入します。


これで連結修正仕訳とタイムテーブルが完成します。

タイムテーブル上の数値には個々の仕訳の結果が反映されていて、各期の状況が見やすく整理されています。

タイムテーブルを作成することによって、連結修正仕訳も作りやすくなり、ミスも大幅に減らすことができます。

まとめ

株式投資や経営において、決算書の読み解きは必須になります。

その際、簿記の知識もいかして決算書の理解を深めましょう。


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