「不安の対処法」に関して、元精神科看護師の「精神科の医学的根拠」を踏まえて解説します。
不安とは
不安とは、潜在的な危機に備えようとする反応のことです。
不安は、顕在化する前に危険を予期し、危難を潜り抜けるための準備でもあります。
~不安のメカニズム~
恐怖が脳を刺激する
↓
不安が生じる
↓
脳が注意力を目の前の脅威に集中させる
↓
脳が他の事を無視して脅威をどう処理するかだけを考えるように命じる
↓
最初に戻る
これは不安のサイクルを形成していきます。
不安のサイクルでの問題点は、近視眼的な視点になり、同じことを繰り返しで考え続け、解決に繋がらないという点です。
この状況は、脳がハイジャックされている状況と同じです。
不安により脳がハイジャックされている状況とは具体的に、
・不安がどこから生じているのかわからない
・不安をコントロールできない
・不安の感情を頭から追い出すことができない
・不安の感情が上回ってしまって、理性を受け付けない
・不安な状況を様々な視点からみることができない
等の状況を指します。
この状況に陥ると、不眠・不安発作・強迫神経症・恐怖症などの症状が見られるようになります。
良い不安と悪い不安の違い
ここで、良い不安(未来が良くなる不安)と悪い不安(未来が良くなっていかない不安)を分類します。
良い不安 | 悪い不安 |
・自分と自分の未来に必要な不安 | ・自分にも関係ない全ての事象に対する不安 |
・未来の不安に向けて解決策を見出し、行動に変換できる不安 | ・未来の不安に捕らわれ、解決策を考え得る事ができず行動に変換できていない不安 |
・未来を推測し、あらゆる可能性に対応できるよう備えることができる不安 | ・未来を推測し、あらゆる悪い不安のみを考えて不安だと言うだけで何も備えができていない不安 |
・感情を自己コントロールできる不安 | ・感情を自己コントロールできない不安 |
・不安になった後に解決行動により安心する | ・不安になった後に結局改善されていないためまた不安になるという不安の繰り返し |
良い不安と悪い不安の決定的な違いは、その不安によって「そのひとの未来が良くなっているか否か」です。
不安を助長させる要因
不安を助長させる要因は主に2つあります。
それは「不安による成功体験」「不安に捕らわれている時間は症状が緩和されている」の2つです。
不安による成功体験
この不安を序章させる原因は意外かもしれませんが、「不安による成功体験」です。
不安は本来は「潜在的な脅威や身に降りかかる可能性のある危険に対処するための方法」です。
過去に不安により行動を変えたことで成功体験がある場合は、尚更です。
不安になるることで自分の未来が良くなると思ってしまっていることが原因です。
その不安による成功体験が、不安をまた呼んでいるのです。
たしかに不安に対する予防は時としてとても必要で役立ちます。
しかし不安が役立つのは解決策に沿って行動できた場合のみです。
不安単体では何の解決にもなっっておらず、自ら不安を助長させている場合があります。
不安に捕らわれている時間は症状が緩和されている
これは一時的な逃避でしかありません。
しかし実際、不安に没頭している間、本人は心悸亢進、霊感、筋肉の緊張などの不安症状を自覚しないで済み、不安が深刻になっていくにつれて心悸亢進など一部の症状が実際に抑制されることが分かっています。
目先の不安に気を取られているうちに、1番最初に想像した壊滅的な不安を喚起したから注意がそれる。
1番最初の壊滅的な不安を忘れてそこから派生した不安に没頭している時間は、不安を部分的に緩和する効果があると言われています。
そして派生した方の不安は根源的な不安の解毒剤として作用しています。
しかし不安のサイクルは、同じような内容を延々繰り返しているだけではありません。
大脳皮質(神経)で見ても、硬直性が認められています。
これは情動の脳が状況の変化に柔軟に対応できる能力を備えていないことから生じています。
不安の対処法
①不安の自己認識
これは実際の治療の認知行動療法に基づいています。
自分の不安心理をできるだけ早い段階で捉えることが重要です。
生起する不安を放置しておくと、不安は説得力を持つようになってしまうからです。
そこで、不安のサイクルの1番最初の段階まで把握できるようにします。
不安のきっかけを把握し、その不安に伴って起こる身体症状を把握します。
これを意識して実践し続けると、不安の初期の段階で気付くことができるようになります。
不安に対する思考の偏りを自身で批判的に振り返ります。
・不安を根本的に解決できる策はないだろうか?
・同じことを何度も心配することが役に立つのだろうか?
と自分に問いかけて答えを出します。
不安の自己認識と懐疑心を組み合わせると、不安を起こす脳神経の活動を抑制することができるからです。
不安を自己コントロールする力を身に付けることができれば、不安を抑制する神経回路自体を活性化できます。
不安を喚起するひとつの見方だけを単純に信じ込む傾向も阻止することができます。
②リラクゼーション
自己認識で不安サイクルを止めることが出来なかった場合に効果があるのは「リラクゼーション」です。
リラクゼーションの目的は、意識を不安から遠ざけるということです。
不安を自己コントロールできない状況から、不安をその意識から遠ざける事により、不安の感情自体を阻止するということです。
意識的に思考を不安から乖離させます。
同リラックスした状態を積極的に作り出す努力をすることで、情動の脳が送り出す不安信号に対抗できるようになります。
ただし、リラクゼーションは不安に陥ってしまってどうしようもない時のみ有効です。
不安自体を克服するためには、不安に陥る思考に積極的に必要が解決に向ける必要があります。
それをしない限り、不安の悪循環を何度でも再発します。
③薬物療法 + 心理療法
①②方法で不安を止めることが出来なかった場合は、本格的な治療が必要な状態です。
ただの不安だけではない可能性があります。
精神的な病状(うつ病や不安に関する病状)に該当する可能性があるため、医療を介入して治していきましょう。
そもそもその「受診する」という判断をできること自体が、不安の自己認識でできてきるという素晴らしい行為です。
薬物療法では脳のシナプスや神経の根本の問題を治療しましょう。
心理療法では、思考回路自体を変化させることができます。
不安が重度になってしまった場合、医療での治療が最も早いです。
時間が経ってしまってからだと、不安思考が定着してしまうため治すのに時間を要するからです。
早期に治していきましょう。
結論
日本は世界で最も労働時間が長いこともあり本来の自分を取り戻せず、精神を病まれてしまうかたは大勢いらっしゃいます。
現代は、コロナショックの影響もあり、尚更増加し続けています。
精神を病まれてしまうことは決して恥ずかしいことではありません。
むしろ、精神を保てなくなってしまうほど頑張ってこられたということです。
本当によく頑張りましたね。
そもそも人は、誰しも何かしらの精神症状を持っていると言われています。
皆何かしら持っているのです。
それが悪化してしまう時もあるでしょう。
・不安になった時に対処法で対処できたかたは、おめでとうございます。良かったです。
・対処法でも不安が解決せず苦しいい場合は、受診してみて下さい。
精神科医師は「ひとを理解したい」という気持ちが強く、とても優しいです。
あなたが心健やかに過ごせますように。心より願っています。
番外編:もし身近なひとが不安で困っていたら/その時の対応
もし身近なひとが不安で困っていたら、まずは話を否定せずさえぎらずに一通り聞いてあげてください。
相手が一通り話し終えて満足して様子になったら、次のステップに進みます。
自己認識で解決できる不安であれば、対処法①を実践してあげてください。
不可であれば②を実践してみてください。
それでも不安に陥ってしまっている場合は、優しく受診を勧めてあげてください。
最初心療内科に一人で行くのは不安もあると思うので、希望があれば一緒に付添って行ってあげてください。
注意点
重度の不安に陥っているかたに対して、ただ単に「心配するのはやめなさい」「心配しないで明るくなってね」という言葉をかけないでください。
これらの言葉をかけても無意味です。
不安神経症までいっていると、扁桃核から生じているため本人の意志ではどうにもならないことに加え、始まってしまうと容易にはその不安は消えません。
自己認識で変える事ができる範囲であれば大丈夫な場合もありますが、重度であればあるほど無意味で、むしろそのかたを傷つけてしまうことになります。
是非実践してみてください。
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