今回は、FXの3第経済指標である雇用統計について説明します。
1.雇用統計とは
∟失業率は台替えに注意
∟NFPは「民間雇用」をチェック
∟好景気の時には賃金にも注目
2.雇用統計と相場の関係
3.雇用統計とセットのアメリカ2つの雇用指標
4.アメリカの次に注目したい7つの雇用統計
雇用統計とは
雇用統計
注目度 ★★★★★
発表期間:米労働省労働統計局
発表時期:毎月第1金曜日
・最も注目すべきは「失業率」「非農業部門雇用者数(NFP)」
・次いで注目されるのは「平均時給」、「週労働時間」
経済の回復具合が最後に反映される指標です。
「有効求人倍率」は雇用統計の中の一つです。
就職・転職活動をしている人、企業の人事担当者などが常にウォッチしているということは当然、FX市場でも雇用統計は経済の温度を示す大注目の指標として、大きな存在感があります。
景気動向を示す遅行指標(景気の動向よりもやや遅れて反映される指標)という位置づけです。
経済が成長する過程で、企業は資金が潤沢になります。
そして、その資金を用いたり融資を受けたりして設備投資をし、従業員を増やして生産力を高めます。
このように、雇用が高まるのは経済成長の後段になるため、経済の回復がしっかり進んでいることの確認となるというわけです。
雇用統計が上向いている初めて経済の本格的な復興、成長が確認できます。
ポイント
・雇用は景気動向の遅行指標
・雇用統計の好転は国民の景況感を回復させ、経済を盛り上げる活力となる
・好転すれば、上昇トレンドになるため「買い」
<失業率は代替えに注意>
2012年1月のアメリカの失業率は8.3%。次の発表がこの数値を上回るか下回るのかが注目です。
失業率の上昇は経済の後退を意味しているため、ドル安になります。
逆に
失業率の低下は経済の回復を意味し、ドル高になります。
2011年の前半は9%台の高い失業率となっていましたが、2桁台への「台替え」となると、市場心理へのインパクトが大きくなるため、マーケットの反応は大きくなりやすくいです。
例えば、9.9%と10%では、わずか0.1%の違いですが、失業率悪化のイメージが一層増すため、台替えのインパクトは数字以上の違いを生みます。
<NFPは「民間雇用」をチェック>
続いて、農業以外の仕事に就業した人を対象として算出する非農業部門雇用者数(NFP)です。これは2012年1月、24万3000人増です。
内訳には、民間雇用か政府雇用かという数字まで出てきます。選挙や国勢調査など、政府サイドの事情より一時的に雇用が増える場合にもありますので、実際の景気の変動が顕著に表れるのは民間雇用です。
アメリカの企業は、日本企業とは比べ物にならないくらいシビアに雇用を変動させます。
バブル崩壊後の低迷期の日本には、アメリカ型の企業再建である「リストラ」という言葉が伝わり、今では当たり前になりましたが、アメリカは本家本元です。さらには「レイオフ(一時解雇)」なども必要に応じて即座に実施されます。
こうした動向を受けて、アメリカの雇用統計に出る数字は非常にタイムリーかつ景気を如実に表すものとして、マーケットに多大な影響を与えるのです。
<好景気の時には賃金にも注目>
労働者が手にする賃金が増えれば増えるほど、個人消費が活発化し、経済活動が一段と高まるという予測のもと、マーケットはもう一段のポジティブな反応を示すようになります。
このように、景気動向に「お墨付き」を与える遅行指標の代表である雇用統計は、為替市場に非常に大きな影響を与えるのです。
雇用統計を踏まえたトレードでは、事前予想で盛り上がりが最高値に達します。発表後は、逆に「材料出尽くし」となります。
そのため、日本時間の金曜日夕方から発表にかけての「思惑相場(実際の発表を前に、様々な予想を元に売買される相場)」がトレードの狙い場です。
雇用統計と相場の関係
経済成長スタート
NFP:増加 失業率:改善
ドル | 株 | 債券 | 債券利回り |
買い | 買い | 売り | 上昇 (金利上昇見込みで) |
経済成長過渡期
NFP:増加中 失業率:低下中 労働時間賃金:上昇
ドル | 株 | 債券 | 債券利回り |
買い | 買い | 売り | 上昇 (金利上昇中) |
経済成長下降期
NFP:減少 失業率:悪化
ドル | 株 | 債券 | 債券利回り |
売り | 売り | 買い | 低下 (金利下落) |
雇用統計とセットのアメリカ2つの雇用指標
アメリカの雇用統計は最重要の指標ですが、それが全てではありません。アメリカに関しては、雇用用統計と併せてチェックしておきたい統計が2つあります。
「ADP雇用統計」
注目度 ★★★★☆
発表期間:ADP社
発表日程:雇用統計発表週の水曜日
・雇用統計発表前の前哨戦として注目されるのが、ADP雇用統計
・アメリカの民間会社が算出した雇用環境を示す数値だが、雇用統計の直前に発表されるため、市場関係者、アナリストはこの指標を踏まえて雇用統計の予想数値を確認し、そのコンセンサスが市場に動意を作っていく。
・近年、計算方法が変わって一段と雇用統計の数値に近付いたため、特に注目度が高まっている
・指標発表後に為替に急激な変動が出やすい
「失業保険申請件数」
注目度 ★★★★☆
発表期間:米国労働省雇用訓練局
発表日程:毎週木曜日
・1週間に申請された失業保険の申請件数
・内訳の失業保険継続需給件数も、現在の雇用環境を把握する上で有効
・毎週発表される数値だが、とりわけ「12日」を含む週の結果は注目される(この週の分は、労働統計局が発表する雇用統計のサンプル採取機関と言われていて、特に雇用統計と相関性が高い)
・申請件数40万件が好悪分岐点(超えてくると市場コンサスは悪化する)
ポイント
失業保険申請件数は、
・好悪分岐点の40万件を上回ったか下回ったか
・どの程度の期間続いているか
を確認する
・雇用統計との連動制が高いため、統計発表前の思惑相場で素早く動く
おまけ
アメリカの指標には、雇用に直接関係のない「ISM製造業景況指数」や「フィリー指数」等、その内訳に雇用に関連する項目が盛り込まれていることが多いため、これらにも注目する
アメリカの次に注目したい7つの雇用統計
アメリカに次いでチェックしておきたいのが、次の7か国の統計です。
1.ドイツの雇用統計
注目度 ★★☆☆☆
発表期間:ドイツ連邦統計局
発表日程:毎月(集計翌々月上旬)
・ヨーロッパ圏全体の雇用統計も発表されるが、最も重視されるのはドイツの雇用統計
2.イギリスの雇用統計
注目度 ★★☆☆☆
発表期間:英国国立統計局(ONS)
発表日程:月次
・失業率と失業保険申請件数に注目
3.オーストラリアの雇用統計
注目度 ★★★☆☆
発表期間:豪連邦統計局
発表日程:月次で毎月5日前後
・失業率と新規雇用者数に注目(新規雇用者については、常勤雇用者とパートタイマーに分けて、ネット値が公表されるため、雇用環境の実勢がつかみやすい)
・雇用状況を示す指標の1つに民間指標の「ANZ(オーストラリア)・ニュージーランド銀行)求人広告件数」というものがある
・経済環境においてどの程度求人活動が行われているかを示す指標となり、雇用統計の前段階として状況を映しやすいことから注目されている
4.ニュージーランドの雇用統計
注目度 ★★★☆☆
発表期間:ニュージーランド
発表日程:四半期ごと
・毎月発表される他国の雇用統計とは異なり、年に4回しか公表されないため、これが注目度が高い
・予想値との乖離はもちろん、前期比・前年比での変化に注意が必要
5.カナダの雇用統計
注目度 ★☆☆☆☆
発表期間:カナダ統計局
発表日程:月次(毎月上旬に発表)
・注目度は他国に比べると低い
・予想を大きく乖離した結果が出た場合に限り、市場が大きく反応する
6.スイスの雇用統計
注目度 ★☆☆☆☆
発表期間:スイス連邦統計局
発表日程:月次(毎月5日前後)
・発表時間が比較的早い時間帯のため、日本時間とヨーロッパ時間のはざまになって、それほど注目される指標ではありません。
・スイス経済が不安定のときに限っては、この指標も注目度が一時的に高まる
7.日本の雇用統計(有効求人倍率)
注目度 ★☆☆☆☆
発表期間:総務省
発表日程:毎月
・遅行指標とみられる失業率に対し、有効求人倍率は景気の流れがほぼダイレクトに反映される指標
ポイント
「材料探し」の地合いになると、注目度が高まる
・予想値や前回値との乖離が大きければトレードチャンスとなる
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