今回は、決算書における「連結キャッシュフロー計算書」にいての深い解説をまとめました。
連結キャッシュフロー計算書
連結キャッシュフロー計算書は、企業業績の一会計期間におけるキャッシュフロー(資金の収入・支出)の状況を報告するために作成します。
連結キャッシュフロー計算書の作成方法には、原則法・簡便法の2つの方法があります。
詳細→決算書における【 キャッシュフロー計算書について 】解説まとめ
原則法
原則方とは、親会社と子会社の個別キャッシュフロー計算書を基礎として連結キャッシュフロー計算書を作成する方法です。
具体的には、まず親会社と子会社が作成した個別キャッシュフロー計算書を合算し、次に連結手続き上で連結会社間のキャッシュフローを相殺して、連結キャッシュフロー計算書を作成します。
【原則法による作成方法】
親会社:個別キャッシュフロー計算書 子会社:個別キャッシュフロー計算書
↓
合算
↓
相殺消去
↓
連結キャッシュフロー計算書
簡便法
簡便法とは、連結財務諸表を基礎として連結キャッシュフロー計算書を作成する方法のことです。
具体的には、まず親会社と子会社で作成した個別キャッシュフロー計算書以外の個別財務諸表を合算します。
次に、連結てつぢうきを行うことにより連結財務諸表を作成します。
そして、連結財務諸表から必要な調整をして連結キャッシュフロー計算書を作成します。
簡便法による場合、親会社、子会社の個別キャッシュフロー計算書は作成せず、連結キャッシュフロー計算書のみを作成します。
【簡便法による作成方法】
親会社:個別財務諸表 子会社:個別財務諸表
↓
合算
↓
相殺消去
↓
連結損益計算書
連結貸借対照表
連結株主資本等
変動計算書
↓
調整
↓連結キャッシュフロー計算書
原則法・簡便法と直接法・間接法の関係
連結キャッシュフロー計算書を作成する場合、原則法・簡便法と直接法・間接法の組み合わせは次の通りです。
この組み合わせは4通り考えられますが、ここでは頻繁に使われる「原則法・直接法」と「簡便法・間接法」を説明します。
原則法・直接法による連結キャッシュフロー計算書
作成方法
原則法・直接法により連結キャッシュフロー計算書を作成する場合、連結会社間のキャッシュフローを相殺消去する必要があります。
そして、相殺消去の対象となる連結会計間のキャッシュフローには、次のようなものがあります。
【相殺消去の対象となるキャッシュフロー】
・営業収入と仕入支出
・貸付けによる支出と借入れによる収入
・利息の受取額と利息の支払額
・有形固定資産の売却による収入と有形固定資産の取得による支出
・配当金の受取額と配当金の支払額
会計処理
営業収入と仕入れ支出の相殺消去
連結会社間で現金及び現金同等物による商品の売買を行った場合、ここの会社としては資金の増減は営業主運輸及び仕入支出となりますが、企業グループの観点からはその取引はなかったものとみなします。
したがって、連結会社間の取引による営業収入と仕入支出は相殺消去します。
貸付けによる支出と借入れによる収入の相殺消去
連結会社間で現金及び現金同等物による資金の貸借を行った場合、ここの企業としては資金の増減は貸付けによる支出及び借入による収入となりますが、企業グループの観点からはその取引はなかったとみなします。
したがって、連結会社間の貸付けによる支出と借入による収入は相殺消去します。
また、資金の貸借に伴う利息の受け取りと支払いも同様に相殺消去します。
有形固定資産の売却収入と取得支出の相殺消去
連結会社間で、現金及び現金同等物による有形固定資産の売買を行った場合、個々の企業としては資金の増減は有形固定資産の売却による収入及び有形固定資産の取得による支出となりますが、企業グループの観点からは取引はなかったものとみなします。
したがって、連結会社間の取引による有形固定資産の売却による収入と取得による支出は相殺消去します。
配当金の受取額と支払額の相殺消去
子会社から親会社へ配当を行った場合、ここの企業としてはその取引による資金の増減は配当金の受取額及び配当金の支払額となりますが、企業グループの観点からは取引はなかったものとみなします。
したがって、子会社の配当金の支払額のうち親会社に対する支払額(子会社の配当金の支払額×親会社持分割合)は、非支配株主への配当金の支払額として、親会社の配当金の支払である配当金の支払額とは区別して記載します。
連結キャッシュフロー計算上における配当金の支払額は、親会社の配当金の支払額の金額のみとなります。
持分法適用会社からの配当金の受取額
持分法適用会社からの配当金は、相殺消去せず、利息及び配当金の受取額に計上します。
原則法・直接法の場合は、投資会社の個別キャッシュフロー計算書上の利息及び配当金の受取額に、持分法適用会社からの配当金の受取額が既に含まれているため、そのまま金額を合算します。
原則法により連結キャッシュフロー計算書を作成する場合、持分法適用会社の個別キャッシュフロー計算書は合算しないため、投資会社の配当金の受取額と相殺消去の対象となる配当金の支払額は存在しません。
そのため、持分法適用会社からの配当金の受取額は連結キャッシュフロー計算書上に計上されます。
簡便法・間接法による連結キャッシュフロー計算書
作成方法
簡便法・間接法による連結キャッシュフロー計算書の作成は、個別キャッシュフロー計算書の間接法の作成と同様に行います。
簡便法では、連結財務諸表を作成する際に、既に連結会社取引について相殺消去が行われているため、連結キャッシュフロー計算書の作成にあたり、改めて連結会社間のキャッシュフローの相殺消去を行う必要はありません。
会計処理
個別キャッシュフロー決算書の間接法と作成方法は基本的に同様ですが、次のてんに留意する必要があります。
【留意すべき事項】
・営業活動によるキャッシュフローが税金等調整前当期純利益から始まること
・連結特有の科目(非支配株主に帰属する当期純利益、持分法による投資損益、のれん売却額など)が存在すること
非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益を計算した後に敬意上される項目であるため、間接法における調整項目にはなりません。
持分法による投資損益
持分法による投資損益は、営業活動に関係のない営業外損益項目のため、税金等調整前当期純利益に対する調整項目となります。
【持分法による投資損益】
・持分法による投資利益(営業外利益)→税金等調整前当期純利益から減算
・持分法による投資損失(営業外費用)→税金等調整前当期純利益に加算
のれん償却額、負ののれん発生益
のれん償却額及び負ののれん発生えきは非資金損益項目のため、税金等調整前当期純利益に対する調整項目となります。
【のれん償却額、負ののれん発生益】
・のれん償却額→税金等調整前当期純利益に加算
・負ののれん発生益→税金等調整前当期純利益から減算
持分法の適用会社からの配当金の受取額
持分法適用会社からの配当金の受取額は、利息及び配当金の受取額に計上します。
そのため、簡便法・間接法の場合に利息及び配当金の受取額を求める際は、持分法適用会社からの配当金の受取額を、連結損益計算書の受取利息配当金の金額に加えて算定する必要があります。
簡便法・間接法の場合は、連結修正仕訳の際に持分法適用会社からの配当金の受け取り分は受取配当金から消去しているため、連結損益計算書の受取利息配当金には持分法適用会社からの配当金の受け取り分は含まれていません。
そのため、連結キャッシュフロー計算書作成には、連結損益計算書の金額に、持分法適用会社からの配当金の受け取り分を別途加算する必要があります。
まとめ
株式投資や経営において、決算書の理解は必須になります。
その際、簿記の知識も生かして理解を深めましょう。
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