今回は、決算書における「社債」についての解説をまとめました。
社債とは
社債とは
株式会社が長期的な資金を調達する方法には、株式発行の他、社債の発行があります。
社債とは、一般の人々(社債購入者)から資金を調達する際に発行する債権のことです。
株式と社債の違い
株式と社債は、どちらも株式会社が資金を調達するために発行するという点は同じですが、以下の点が異なります。
返済の必要性
株式の発行によって調達した資金は、後で株主に返済する必要がありません。
一方、社債の発行によって調達した資金は、一定期間(償還期間)経過後に社債の所有者に返済する必要があります。
配当金と利息
株式の場合、会社の儲けに応じて、出資者である株主に配当金が支払われます。
一方、社債の場合には、儲けに関係なく、予め決められた利息(額面金額×利率)が支払われます。
【株式と社債の違い】
株式 | 社債 |
・返済の必要なし | ・返済の必要あり |
・儲けに応じて配当金が支払われる (金額は変動) | ・あらかじめ決められた利息が支払われる (儲けは関係なし) |
社債の発行形態
社債の発行形態には、次の3つがあります。
・平価発行:額面金額で発行すること
・割引発行:額面金額よりも低い金額で発行すること
・打歩発行:額面金額よりも高い金額で発行すること
用語の説明
社債の発行によって調達した資金を返済することを償還と言います。
社債を償還する期日を満期日と言います。
社債の発行から満期日までの間(社債を発行しちえる期間)を償還期間と言います。
社債の帳簿価額の調整
社債を額面金額よりも低い金額(または高い金額)で発行した場合に、額面金額と払込金額との差額が金利の調整と認められる時、その差額である金利調整差額を償却原価法によって社債の帳簿価額に加減します。
更に、相手科目は社債利息として処理します。
A株式会社は社債(額面総額1万円、償還期間5年)を年率1%で発行しようとしていますが、B株式会社は年利率2%(額面総額1万円、償還期間5年)で発行していたとします。
この場合、B株式会社の年利率2%の社債を買った方が得になります。
しかし会社側は毎年年利息を支払うため1%で抑えようとします。
この時は、額面金額よりも低い金額で社債を発行し、利息の不利感を無くします。
仮にA株式会社が社債を9.500円で発行したとすると、社債は万記事つに額面総額(1万円)で償還するため、社債の購入者は発行時に9,500円を支払、満期日に1万円を受け取ります。
純額で500円のプラスということになります。
するとA株式会社とB株式会社の5年間の利息差は500円のため、A株式会社が割引発行することによって実質的な金利差はなくなります。
このように、利率の差を調整するために生じた払込金額(9,500円)と額面総額(1万円)の差額を金利調整差額と言います。
金利を調整するために生じが差額のため、決算において社債の帳簿価額に加算する際には、相手科目くを社債利息として処理します。
償却原価法には利息法(原則)と定額法(容認)があり、利息法では利払日ごとに償却額を計算し、定額法の場合には決算整理として償却額を計算します。
発行時の処理
社債を発行したときは、払込金額を持って社債として処理します。
社債の発行によって調達した資金は、後で社債の所有者に返済しなければなりません。
社債の発行によって、後で返さなければならない義務が生じるため、社債を発行したときは社債(負債)として処理します。
また、社債の発行に伴って生じた広告費・証券会社への手数料などは、社債発行費として処理します。
社債発行費は、原則として費用として処理しますが、繰延資産として処理することも認められています。
利払時の処理
利息の支払い
社債は借入れの一種のため、社債を発行している間は利息を払いますが、銀行などからの借入金に対する利払い利息とは区別し、社債利息として処理します。
社債の帳簿価額の調整(利息法)
償却原価法の利息法では利払日ごとに償却額を計算します。
【利息法における償還額算定の手順】
①利息配分額を算定:帳簿価額×実効利子率
②クーポン利息支払額の算定:額面金額×クーポン利子率
③金利調整差額の算定:①ー②
利息法は、満期保有目的債券の内容と同様です。
決算時の処理
社債発行費の償却
社債発行費を繰延資産として計上した場合、利息法(原則)または定額法(容認)により、社債の償却期間に渡って償却し、償却額は社債発行償却として処理します。
社債利息の未払計上
決算日と利払日が異なる場合には、前回の利払日の翌日から決算日までの社債利息を未払計上します。
社債の帳簿価額の調整(定額法)
定額法による償却原価法を採用している場合、決算において社債の額面金額と払込金額との差額(金利調整差額)を、償却期間にわたって月割償却します。
【社債の帳簿価額の調整】
社債の帳簿価額の調整額=(額面金額ー払込金額)×当期の経過月数/発行日から満期日までの月数
償却時の処理(満期償還)
社債の償還とは
社債は借入金の一種のため、償還時には社債の購入者に返済しなければなりません。
これを社債の償還と言います。
社債の償還方法には、満期償還・買入償還・抽選償還があります。
【社債の償還の種類】
・満期償還
・買入償還
・抽選償還
満期償還時の会計処理
満期日に社債を償還することを満期償還と言います。
社債を満期償還したときは、期首から満期日までの金利調整差額の調整を行なって、社債の帳簿価額を額面金額に一致させた後、額面金額で社債を償還します。
償還時の処理(買入償還)
買入償還とは
社債の買入償還とは、満期日前に時価で市場から社債を買い入れることです。
社債を発行していると、その期間の利息を支払い続けなければなりません。
そのため、資金に余裕ができたら、満期日前に償還してしまう方が会社にとって得な場合があります。
そのような場合、会社は満期日まで待たずに時価で社債を償還(買入償還)してしまうのです。
買入償還の会計処理
社債を購入償還したときは、まず期首から買入償還日までの期間の金利調整差額を加減し、社債の帳簿価額を調整します。
そして、買入償還日における社債の帳簿価額を減額し、社債を償還します。
更に、減少する社債の帳簿価額と買入価額(時価)との差額は、社債償還損または社債償還益として処理します。
償還時の処理(抽選償還)
抽選償還とは
社債を満期日に至るまで一定期間ごとに分割して償還する方法を分割償還と言います。
分割償還の中でも代表的なものが抽選償還で、償還する社債を抽選で決定します。
抽選償還の会計処理
抽選償還は次の流れの通りです。
発行時
社債を発行したときの処理は、これまで見てきた処理と同様に払込金額で社債を計上します。
抽選償還においても金利調整差額の償却方法は利息ほうが原則になります。
利払時
抽選償還の場合は、残っている額面金額に年利率をかけて社債利息を計上します。
抽選償還時
抽選償還は額面金額で行います。
したがって、まず抽選償還する社債の帳簿価額を額面金額に調整してから、その分を償還します。
【金利調整差額の計算】
まず、金利調整差額を計算します。
額面金額から払込金額を差し引いた額が金利調整差額となります。
【金利調整差額の償却】
社債の利用割合に応じて償却します。
更に早い処理の手順は下の通りです。
①ボックス図を作成する
②マス目の総数を数える
③金利調整差額をマス総数で割る
④冬季分のマス数に③を乗じて冬季分償却額を出す
【抽選償還の仕訳】
抽選償還は額面金額で行います。
この処理によって、抽選償還分の社債の帳簿価額は額面金額と一致することになります。
決算時
【未償還分の金利調整差額の償却】
決算において、未償還分の社債帳簿価額を調整します。
【一年以内償還社債への振替え】
貸借対照表上、1年以内に返済される負債は流動負債に表示するため、当期末の社債残高のうち翌期中に償還予定のものを1年基準にしたがって分類して表示します。
まとめ
株式投資においては、決算書を読み解く必要があります。
その際、簿記の知識もあると更に理解が深まります。
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