今回は、決算書における「本支店会計」について解説します。
本支店会計とは
企業活動が拡大すると、全国に支店を設けるようになります。
このような、本店と支店がある場合の会計制度を「本支店会計」と言います。
支店の取引を記録する方法には、本店集中会計制度と視点独立会計制度の2つがあります。
本店集中会計制度
本店集中会計制度とは、本店のみに帳簿をおき、支店で行った取引も本店の帳簿に記入する方法です。
支店独立会計制度
支店独立会計制度とは、本店と支店に帳簿をおき、支店で行った取引は支店の帳簿に記入する方法です。
支店独自の業績を明らかにするためには支店独立会計制度の方が適しています。
本支店間の取引
支店勘定と本店勘定
本支店会計では、本店と支店の間で取引(本支店間の取引)が行われた場合、本店では支店勘定を、支店では本店勘定を用いて処理します。
例えば、本店が支店に現金を送金したとします。
この場合、本店では現金を送付しているため、現金(資産)が減少します。
また、支店では現金を受け取っているため、現金(資産)が増加します。
続いて、相手科目を処理します。
商品を仕入れて現金を支払ったり、商品を売上て現金を受け取ったり、取引を2つの側面に分けることができます。
しかし、本店と支店で行った取引を、それぞれの帳簿に記入する場合は、取引を2つの側面に訳ることができないため、相手科目が不在となってしまいます。
そこで、本店と支店で行われた取引について、支店勘定または本店勘定を用いて相手科目を処理します。
また、支店勘定または本店勘定を用いて処理することにより、会社内部の取引であることが明らかになります。
本支店間の取引の処理
本支店間の取引には、送金取引・債権債務の決済取引・費用の立替払いなどがあります。
送金取引の処理
本店が支店に現金を送った場合の処理は次の通りです。
本店から支店に現金を送った場合、本店の現金は減るため、本店では現金(資産)の減少として処理します。
一方、支店の現金は増えるため、支店では現金(資産)の増加として処理します。
相手科目は、本店では「支店」、支店では「本店」で処理します。
債権・債務の決済取引の処理
支店が本店お買掛金を現金で支払った場合の処理は次の通りです。
支店が本店の買掛金を現金で支払った場合、本店の買掛金(負債)が減少します。
一方、支店が現金で支払うことにより、支店の現金(資産)が減少します。
相手科目は、本店では「支店」、支店では「本店」で処理します。
費用立替払いの処理
本店が支店の営業費を現金で支払った場合の処理は次の通りです。
本店が支店の営業費を現金で支払った場合、本店の現金(資産)が減少します。
一方、本店の営業費を本店が立替払いしているため、本店では営業費(費用)を計上します。
相手科目は、本店では「支店」、支店では「本店」で処理します。
本店が支店に商品を送付したときの処理
本店が支店に原価のまま商品を送付したときは、本店では仕入(費用)の減少として処理し、支店では仕入(費用)の増加として処理します。
相手科目は、本店では「支店」、支店では「本店」で処理します。
本支店合併財務諸表の作成
本支店合併財務諸表とは
本店と支店が別々に帳簿をつけていたとしても、実際は1つの会計のため、外部の人(株主・投資家など)に報告するための財務諸表は本店と支店の帳簿を合算して作成します。
本店と支店の帳簿を合算した会社全体の財務諸表を本店支店合併財務諸表と言います。
本支店合併財務諸表の作成手順
本支店合併財務諸表は次の手順で作成します。
本店:決算生理前残高試算表→決算整理
支店:決算生理前残高試算表→決算整理
上記2つを合算し、内部取引の相殺をしてから、本支店合併財務諸表が出来上がります。
決算整理
決算において、本店および支店で、それぞれの決算整理を行います。
更に、決算整理については、これまでに学習した決算整理と同じです。
内部取引の相殺
本支店合併財務諸表には、企業外部との取引高のみを計上するため、本支店の取引を表す「支店」と「本店」は相殺して消去します。(本支店合併財務諸表には計上しません。)
関連記事→決算書における【 本支店会計について 】解説まとめ
帳簿の締め切り
帳簿の締め切り
決算が終わったら、次期の帳簿記入に備えて本店と支店の帳簿を締め切ります。
本支店会計における帳簿締め切りは、次の手順で行います。
【本店】
↓
決算生理前残高試算表
↓
決算整理
↓
損益振り替え
↓
法人税等の計上
↓
資本振替
↓
帳簿の締め切り
【支店】
決算生理前残高試算表
↓
決算整理
↓
損益振り替え
↓
帳簿の締め切り
当期純利益の振り替え
本店と支店の帳簿において、決算整理後の収益と費用を損益勘定に振り替えます。
これは、支店がない場合の通常の損益振替と同様です。
そして、損益勘定で、本店・支店独自の当期純利益を算定します。
更に、本支店会計では、本店に総合損益勘定を設け、本店と支店のそれぞれの当期純利益を総合損益勘定に振り替えます。
本店の当期純利益の振り替え
本店の損益勘定で算定した当期純利益を総合損益勘定に振り替えます。
支店の当期純利益の振り替え
支店の損益勘定で算定した当期純利益を、本店の総合損益勘定に振り替えます。
この取引は本店・支店間の取引と捉え、本店と支店の両方で仕訳をします。
更に、相手科目は本店勘定または支店勘定で処理します。
法人税等の計上
法人税等(法人税、住民税及び事業税)は、会社全体の利益にかかるものです。
したがって、法人税等を計上する処理をした後、その法人税等の金額を総合損益勘定に振り替えます。
総合損益勘定には、会社全体の利益(本店の当期純利益+支店の当期純利益)が計上されているため、ここに法人税等の金額も集計していきます。
繰越利益剰余金勘定への振り替え(資本振替)
総合損益勘定で算定した会社全体の当期純利益は、総合損益勘定から繰越利益剰余金勘定に振り替えます。
まとめ
経営や株式投資において、決算書の理解は必須になります。
その際、簿記の知識も活かして理解を深めましょう。
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