今回は、決算における「剰余金の配当と処分」について解説します。
剰余金の配当と処分
剰余金とは、会社が獲得したこれまでの利益のうち、まだ使い道が決まっていない金額のことです。
基本原則は、株主からの出資があって会社が活動できるため、会社が獲得した利益は株主のものです。
そのため会社が獲得した利益は株主に還元されます。
これを「剰余金の配当」と言います。
また、剰余金は全て配当されるのではなく、一部は会社法の規定・会社の経営のため等により、会社内に留保されます。
これを「剰余金の処分」と言います。
剰余金の処分には、利益準備金の積み立て・任意積立金の積み立てがあります。
利益準備金と任意積立金はいずれも、純資産の勘定科目です。
純資産の勘定科目 | 内容 |
利益準備金 | 会社法の規定により積み立てが強制されている準備金 |
任意積立金 | 会社が任意で会社内に留保した剰余金の一部 新築積立金(純資産)という建物を新築するための積立金や 別途積立金(純資産)という特別な使用目的のない積立金がある |
剰余金の配当・処分の内容は、株主総会において決定します。
損益勘定からの振り替え
株式会社では、損益勘定で計算された当期純利益または当期純損失は繰越利益剰余金(純資産)に振り替えます。
【当期純利益を計上した時】
当期純利益を計上したときは、損益勘定から繰越利益剰余金勘定の貸方に振り替えます。
【当期純損失を計上した時】
当期純損失を計上した時は、損益勘定から繰越利益剰余金勘定の借方に振り替えます。
剰余金の配当と処分の処理
剰余金のうち、配当のもと(配当財源)となるものには、繰越利益剰余金とその他資本剰余金があります。
剰余金の配当等が決定した時
株主総会で剰余金の配当等が決定したら、繰越利益剰余金(純資産)またはその他資本剰余金(純資産)からそれぞれの勘定科目に振り替えます。
更に、株主配当金については、株主総会の場では金額が決定するだけで、実際の支払いは後日となるため、未払配当金(負債)として処理します。
配当金を支払った時
株主に配当金を支払った時は、未払配当金(負債)が減少します。
準備金積立額の計算
会社法では、剰余金を処分する際、準備金(利益準備金・資本準備金)を積み立てることを強制しています。
配当財源が繰越利益剰余金の場合
配当財源が繰越利益剰余金の場合には、利益準備金を積み立てなければなりません。
この場合の利益準備金積立金積立額は、配当金の10分の1で、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで積み立てます。
配当財源がその他資本剰余金の場合
配当財源がその他資本剰余金の場合には、資本準備金を積み立てなければなりません。
この場合の資本準備金積立額は、配当の10分の1で、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達するまで積み立てます。
準備金の積立額自体は、利益準備金の場合も、資本準備金の場合も同様です。
違いは、何を積み立てるかということです。
関連記事→決算書において【 配当財源が繰越利益剰余金とその他資産剰余金の場合 】分かりやすく解説
まとめ
株式投資では、決算を読み込むために簿記の知識もあると優位になります。
今後も決算を読み解いていきましょう。
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