今回は、「ウォール街のランダム・ウォーカー」という本を読んだ感想と学びを共有します。
ウォール街のランダム・ウォーカー
株式投資の不滅の心理 ウォール街のランダム・ウォーカー/バートン・マルキール著/井手正介訳
上のリンクからAmazonのKindleでも買えます。
本を読もうと思ったきっかけ
私がこの本を読もうと思ったきっかけは、タイトルにある「ウォール街」の文字です。
世界一の投資家のウォーレンバフェットさんがよく、ウォール街という言葉を口にします。
ウォール街を大衆の心理に例えて解説することが多いです。
そのため、ウォール街がどのようなところか興味があったということがきっかけです。
またこの本は結構有名で、以前から知っていたということもあります。
ウォール街というところはどのような場所なのでしょうか?ということにはあまり触れていませんが、ウォール街にいる人の思考を垣間見れます。
完全に投資の本で、前半は投資の理論的なことも説明されているため、お勉強になる本です。
本の目次
第12版へのまえがき
第一部 株式と価値
第一章 株式投資の二代流派ー「ファンダメンタル価値」学派vs「砂上の楼閣」学派
1 ランダム・ウォークとは何か
2 生活の一部になった株式投資
3 将来を予測する能力
4 ファンダメンタル価値学派
5 砂上の楼閣学派
6 ランダム・ウォークの実践
第二章 市場の狂気
1 オランダのチューリップ・バブル
2 イギリスの南海バブル
3 1920年だいにウォール街が育んだバブル
第三章 1960年台から90年代にかけてのバブル
1 機関投資家の健全度
2 黄金の60年だ
3 低迷の70年代
4 狂気の80年代
5 日本の株価・時価バブル
第四章 21世紀は巨大なバブルで始まった
1 インターネット・バブルはいかにして膨らんだか
2 広い裾野を持ったハイテク・バブル
3 未曾有の新規公開株ブーム
4 証券アナリストも謳い上げだ
5 新し株価評価尺度
6 メディアの責任
7 バブルの息の根を止めた不正の横行
8 危険は予知できたか
9 21世紀初めの住宅バブルと大崩落
10 仮想通貨バブル
第二部 プロの投資家の成績表
第五章 株価分析の2つの手法
1 テクニカル分析とファンダメンタル分析
2 チャートは何を語るか
3 いかに動くかが重要だ
4 チャート分析ななぜうまくいかないのか
5 その名も今やテクニカル・アナリスト
6 ファンダメンタル主義者の「聖なる霊感」
7 「正しい」株価収益率
8 なぜファンダメンタル分析も必ずしもうまくいかないのか
9 成功するための3つのルール
第六章 テクニカル戦略は儲かるか
1 穴の空いた靴と予想の曖昧さ
2 株式市場にもメンタムは存在するか
3 ランダムなコイン投げが描くチャート
4 より高度なテクニカル手法の診断
5 損失を約束する素その他の様々なテクニック
6 「学者の戯言」という反撃に答えて
7 投資家への示唆
第七章 ファンダメンがる主義者のお手並み拝見
1 ウォール街vs学者
2 証券アナリストは占い師のようなものか
3 なぜ水晶玉は曇ってしまったのか
4 投資信託の意外な成績
5 セミストロング型かストロング型か
第三部 新しい投資テクノロジー
第八章 新しいジョギング・シューズー現代ポートフォリオ理論
1 リスクこそ株式の価値を決める
2 ではリスクとは具体的に何を意味するのか
3 ハイリスク、ハイリターンの検証
4 リスクを減らす学問
5 相関関数のマジック
6 分散投資という豊かな鉱脈
第九章 リスクをとってリターンを高める
1 「ベータ」の副音
2 CAPM施風
3 実績を見よう
4 ベータの死亡宣言
5 より完全なリスク尺度はあるか
第10章 行動ファイナンス学派の新たな挑戦
1 個人投資家の非合理的な投資行動の解明
2 行動ファイナンス理論から得られる教訓
第十一章 「スマート・ベータ」と「リスク・パリティー」ー新しいポートフォリオ構築方法
2 代表的な4つの属性についての試論
3 代表的なブレンド・ファンド
4 投資家への示唆
5 リスク・パリティー
6 結び
第四部 ウォール街の歩き方の手引
第十二章 財産の健康管理のための10ヵ条
1 第一条 元手を蓄えよ
2 第二条 現金と保険で万が一に備えよ
3 第三条 現預金でもインフレ・ヘッジ
4 第四条 節税対策と年金制度の活用
5 第五条 運用目標をはっきりさせる
6 第六条 マイホームの活用
7 第七条 債券市場に注目
8 第八条 金・ダイヤ・書画骨董・コレクターアイテム
9 第九条 投資にかかるコストに目を配る
10 第十条 分散投資が大原則
11 まとめのレビュー
第十三章 インフレと金融資産のリターン
1 何が株式と債権のリターンを決めるのか
2 四つの時代くぶんでみた金融資産のリターン
3 この先はどうなるか
第十四章 投資家のライフサイクルと投資戦略
1 リスクとリターンは正比例する
2 リスクは投資期間に依存する
3 $コスト平均法はリスクを効果的に軽減する
4 リバランスによってリスクを減らしリターンを高める
5 リスク選好とリスク許容度を区別する
6 投資家のライフサイクルと投資戦略
7 ライフサイクルに合わせた投資の手引
第十五章 ウォール街に打ち勝つための3つのアプローチ
1 思考停止型の歩き方ーインデックスファンドを買う
2 手作り型の歩き方ー有望銘柄を自分で探す
3 人に任せるライプの歩き方ー専門家を雇うべし
4 投資アドバイザー
5 ランダム・ウォークの旅の終わりに
エピローグ
訳者あとがき
学びになった文章ピックアップ
ここからは、個人的に特に学びになった文章をピックアップさせていただきます。
学びになった文章その1
チューリップの球根が二〇倍に跳ね上がった後、二月にはそれ以上の幅の下落を示した現象については、ガーバーも合理的な説明は見当たらないと言っている。
どんな投機熱の時でもそうだが、価格があまりに高くなりすぎると、一部の人たちがここらあたりで売っておいたほうが賢明だろうと考え始める。
すると他の人たちがこれに続く。
こうなると後は急な坂を転げ落ちる雪だるまのようなもので、価格の下落は加速がつき、わずかの間にパニック状態に陥るのである。
これを受けて政府の要人たちは、チューリップの価格がこれ以上下落する理由は何もないと公式に発言したが、耳を傾ける者はいなかった。
そして破産したディーラーたちが、一定の価格でチューリップの球根を買い取るというオプション契約の履行を拒否したのだ。
政府は、すべてのオプションを契約価格の一〇%で清算させる方針を立てたが、球根価格がそれ以下になってしまったために、失敗に終わった。
そして価格はさらに下がり続けて、ついにはほとんどの球根はただ同然に、つまり普通の玉ねぎと変わらないくらいの値段になってしまった。
この本で最も興味深かった内容は、私的にはチューリップバブルのお話でした。
チューリップバブルは私がまだ生きていない頃に起きたバブルとその崩壊のため、歴史を遡って知ることができて嬉しかったです。
この文章だけを見ると、チューリップにそんな価値がつくの???と滑稽に思えるかもしれませんが、当事者になると加熱してしまって、その世界観が当たり前のようになり麻痺してしまうのでしょうね。
冷静に考えるとチューリップの価格が20倍になるって、相当バブルで異常ですよね。
しかし人間は、感覚がバブルに慣れてしまうとなかなか冷静になれないということです。
これは、価格が上がっているとずっと上がるような気がしてしまう心理に似ていますね。詳細→投資における【 非回帰的予測とは 】分かりやすく解説
そのため私たちも、バブルの真っ只中にいるときほど冷静に考えた方が良いということです。
なかなかその世界観が上がり前位にあり、客観視することができなくなってしまいます。
そのため、本質の価値を冷静に見極める精神力と分析力が必要になります。
学びになった文章その2
バブルはまず、インターネット・ブームに関連が深いと思われる一群の銘柄が買い上げられることから始まった。
株価が上がり始めると、さらに多くの投資家がそれらの銘柄を買い始め、それをテレビや雑誌が盛んに取り上げる。
これによってより広範な投資家が引き寄せられることになる。
こうして初期にゲームに参加した投資家は、大きな儲けを手にする。
彼らは金儲けがいかに簡単かをパーティの席などで自慢げに吹聴して歩き、それを耳にした多くの人々がゲームに参加し、株価は一層上昇する。
しかし、これは結局のところ「ポンジ・スキーム(ねずみ講)」そのものであり、ブームを持続させるためにはますます多くのお人好しの投資家を引き入れて、株を転売し続けることが必要なのだ。
問題は「より馬鹿」な投資家の供給には限度があるということなのだ。
どんな時もバブルになるときの流れは似ていますね。
私の経験則も踏まえると、バブル前の流れは次の順序です。
①イノベーター層が話題に挙げる
②情報収集の早い層つまりアーリーアダプター層(詳細→投資における【 イノベーター理論とは 】どの層が優位か)が投資し始める
③株価が上がり始め、一般の投資家が投資し始める(アーリーマジョリティ層)
④テレビに出たり、雑誌に載ったりし、初心者が投資し始める(ここがバブルのピーク+この時点でレイトマジョリティ)
結構、一般の雑誌やテレビに挙げられるとピークを迎えますよね。
これはわかりやすい指標です。
そして投資をやったことのない初心者が投資し始めたらもうかなり怪しいですね。(そこを目処に利確してくる人が多いから)
いつでもこのような波を意識して投資しましょう。
また、株式投資でも仮想通貨の投資でも、自分より後に買う人がいなければ価格は下がってしまいます。
そのためどの市場にもポンジスキームに似た要素はあると思います。
自分が養分とならないためにも、相場の心理についても理解するようにしましょう。
学びになった文章その3
将来予想は非常に難しいが、もし株価水準に何らかの合理性があるとすれば、期待成長率の差が株価に反映されるべきである。
同時に、高成長期がどの程度持続するかを推定することも、非常に重要である。
一〇年間にわたって二〇%で成長する企業は、他の条件が等しければ、同じ成長率を五年間しか維持できない企業よりも、投資家にとってより魅力があることは言うまでもない。
ここで強調したいのは、成長率とは絶対的な真実ではなく、相対的なものだという点である。
ここで筆者が最も伝えたいのは、絶対的だということでなく相対的であるということですね。
そうなんですよね。
投資は全て相対的なのです。
絶対はないし確定もありません。
そんなこと言ったら、地球上の全てのことは曖昧ですが、特に投資の世界は曖昧だということです。
私はこの本を読んでいて、投資の曖昧さについて実感し、同時に怖くもなりました。
リスクをとっているからこそ得ている利益なのだなと。
この本は、投資の曖昧さについて教えてくれます。
そのため、自信過剰になりそうになったり、過熱感から覚ましたい時は読むと冷静になれる本ですね。
学びになった文章その4
あなたの購入した銘柄についてのストーリーが人々の心をつかめそうかどうか、まず自問せよ、ということである。
それは、伝染性の夢を生じさせることができる種類のストーリーだろうか。
投資家がそれに基づいて砂上の楼閣を作り上げられるようなストーリーだろうか。
その砂上の楼閣は、ファンダメンタルズの基盤に基づいて作られたものだろうか。
これらの点をよく吟味しなければならない。
このルールを実践するために、テクニカル分析を用いる必要はない。
その銘柄に関するストーリーが、人々の想像力をつかむことができるか、中でも機関投資家の気を引くことができるか、それを判断する直感力、あるいは投機のセンスを用いればいいのだ。
それに対して、テクニカル・アナリストたちには、その投資アイデアが実際に受け入れられるものかどうか、目に見える証拠を見つけるまでわからない。
彼らが言う目に見える証拠とは、もちろん上昇トレンドの始まりや、上昇トレンドの形成を「確かに」予言する、テクニカル・シグナルのことである。
この文章で学びになったのは、「他者視点」ということです。
この銘柄は上がるか?でなく
この銘柄は人々の心を掴めそうか?
ということです。
上記でも述べたように、投資では、自分の後に購入してくれる人が多ければ多いほど利益は出るし、いなければ損失となります。
そのため、自分がその銘柄の虜になるのはもちろんですが、他の人々の心も掴めるかどうかは非常に重要なポイントなのです。
自分だけ魅了されていても価格は上がりませんし、本質を見極めて見る目がある時のみ(他の人も魅力的に感じているため)価格が上昇していきます。
しかし仕込む時期は目立たなかったり下落相場の時のみのため、その時に人々が気づくのではなく、盛り上がってきた時に人々を魅了できるか?ということが重要になります。
銘柄購入前に、他者目線でも考えてみることは大切ですね。
学びになった文章その5
過去の株価変動に基づいて、将来の株価を予測することはできないということを意味する。
過去の株価の動きがどうあれ、明日の株価の上昇下降は五分五分でしかない。
株価が次にどう動くかということは、コイン投げと同じで、誰にも予測できないのである。
この本で私的に2番目に面白いと思った内容は、コイン投げのチャートです。
コイン投げをして出た結果をチャートにしたら、テクニカル分析者は、そのチャートを見て「このチャートは何の銘柄だい?上がりそうなチャートをしているから是非購入したい」と答えたそうです。
ただのコイン投げの結果のチャートなのに。
また違う本でも、猿がダーツをして当たった銘柄に投資をするのと、投資の専門家が投資した結果の利回りがほとんど同じだったという事例もありました。
このように、ウォーレンバフェットさんのように利回りを出し続ける投資家もいますが、ランダムで出た結果とほぼ同様になる人もいます。
そのくらい投資は曖昧性が高いということです。
だからこそ根拠を持って分析し、より確率の高い銘柄を見極めなければなりません。
曖昧性を前提にして、確率を絞り込んでいきましょう。
まとめ
後半は、投資の手法などが具体的に書かれていますが、個人的には手法は自分の頭で考えて投資したい派なのであまり参考にはしませんでした。
しかし本の前半の、歴史的なバブルの実際の例などは非常にお勉強になります。
また、投資の曖昧性についても事例とともに言及してあるため、投資において冷静に考えることができる本です。
関連記事→本の学びを共有【 バフェットからの手紙 】経営視点から考えられている投資の本
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