【 最後通告ゲームとは 】分かりやすく解説/投資に応用すると

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今回は、「最後通告ゲーム」について解説します。

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最後通告ゲーム

最後通告ゲームとは、実際の人間行動が、自己利益最大化の仮定の通りには行かないことを示したものです。

社会的選考や互報的行動を扱う上でよく用いられる代表的なゲームと、そこで観察された実際の人間行動についてです。

最終提案ゲーム、最終通牒ゲームとも訳されます。

最終通告ゲームの概要

最後通告ゲームの内容は下の通りです。

このゲームは提案者と回答者の2人のプレイヤーで行われます。

提案者は一定の金額(例えば100円)のうち任意の額を回答者に分配することを提案します。

回答者が提案を受け入れれば、提案通りに各々の金額が提案者と回答者に分配されます。

回答者が拒否すると、両者の受取額は共に0円になります。


【経済合理性が予測する結果】

提案を拒否した場合の結果は0円のため、回答者が合理的経済人であれば、0円よりも大きないかなる分配提案も受け入れられると考えられます。

したがって、提案者は0円より大きな最小単位(1円)の分配を提案します。

【実際のプレイヤーの行動】

最も多い提案は40〜50%であり、平均提案額は30〜40%です。

平等やそれに近い分配は受容されますが、20%未満の提案は多くの場合拒否されます。

このゲームでは、少額分配という不公正に対して、利益を不意にしても拒否することで相手を罰するという負の互報性について扱っています。

ここで提案者が自分の利益を犠牲にして平等分配を提案する理由として、以下のことが考えられます。

1つは、利己的な分配は、相手に拒否されるかもしれないためやめておこうという戦略的判断です。


提案者の平等分配が、社会的選好によるのか、相手に拒否されないための戦略なのかを知るためには、独裁者ゲームとの比較が用いられます。

これは、最終通告ゲームから回答者の拒否権を取り去ったもので、提案者が任意の額の分配を提案し、提案者と回答者には提案通りの金額が分配されます。

合理的経済人の立場から考えると、どんな少額の提案でも回答者に拒否される心配はないため、提案者は1円を提案すると予測されます。

しかし最も多い反応は50%と0%の提案であり、最後通告ゲームと同様に平等提案も多く見られますが、0%提案もある程度の割合で見られるようになります。

回答者に拒否されるリスクのない独裁者ゲームで0%提案が増えるということは、最後通告ゲームでの平等提案の一部は、相手に拒否されないための戦略だったことを示しています。

一方で、拒否されるリスクが皆無であっても、やはり平等提案が少なからず見られるということは、最後通告ゲームでの平等提案のいくらかは、利他的または不平等回避的な社会的選考によるものだということを示しています。

これまでの実験のほとんどは先進国で行われてきましたが、このゲームを15の伝統的な子会社で実施した研究では、最後通告ゲームで最もよく見られる提案がくに、社会観でかなりの違いがあることが示されています。

各社会における平均提案額には、焼畑農業を主に営むマチグエンガ族(ペルー)の26%から、捕鯨で生計を立てるラマレラ族(インドネシア)の57%までの幅があり、貨幣経済が浸透しているほど、また日々の食糧獲得のために他者との協力が必要である社会ほど、提案がくが大きくなることが明らかになりました。

このことは、人間の公正感が経済的文化的要因の影響を受けて成り立っていることを示しています。

しかし、多様な集団を対象にしたこの研究でも、相手に何も分配しないという経済合理性を追求する集団は見られませんでした。

つまり、人が文化を超えて多少なりとも利他的選好を共有していることも、同時に明らかになったと言えます。

最終通告ゲームでは、提案者の提案には0〜10%までの幅があります。

しかし回答者の反応は、拒否するか受諾するかの二者択一です。

これを、提案者の提案も二者択一にし、平等な分配と不平等な分配のどちらかを選択するようにしたものに、みに最後通告ゲームがあります。

逆に、回答者の報復の度合いを連続的に調整できるようにしたゲームには、力ずくゲームがあります。

このゲームでは両プレイヤーは最初に同額を与えられ、第一プレイヤーは回答者の手持ち金の何%を奪うかを決めます。

これを受けて回答者は自分の利益の何%をぶち壊しにするかを決めます。

第一プレイヤーは、回答者がぶち壊しにせずに残した金額から、設定した割合で奪った金額を自分のものとし、残りが回答者の取り分となります。

力ずくゲームを用いた実験では、第1プレイヤーが奪おうとする割合は平均すると60%弱でした。

初期額を努力に対する報酬として与えられた場合、回答者のぶち壊し率は100%と0%の2つに分かれ、強奪率が70〜80%以上の場合、ほとんどの回答者が100%をぶち壊したという結果になりました。

初期額が努力と関係なく与えられた条件では、定額の強奪に対しても高い割合でぶち壊しにするケースが見られています。

強い互報性

前節で紹介したゲームでの実験の人間行動は、我々が事故利益最大化だけを気に掛ける合理的経済人とは違っていることを示しています。

相手と2度と会わない一度限りの状況においても、人は独裁者ゲームで少しでも相手に分け与えたり、囚人のジレンマゲームで協力したりします。

そればかりでなく、最後通告ゲームでは、人は、少なくともある程度は自分に何の見返りもなくても他者に協力的に振る舞おうとし、非協力的な者には自分の利益を減らしても罰を与えようとする傾向を持っています。

こうした行動原理は、相手との関係がもたらす将来の見返りを期待した互報性(Atrong reciprocity)と呼ばれます。

こうした強い互報性が人の心にどう備わっており、どう現れるのか、ということに関しては、現在活発に研究が進められています。

中でも、社会的感情と相手の意図の推論は、強い互報性の発動を支える心の仕組みとして注目を集めています。

協力を求める感情・不公正を拒む感情

神経経済学の領域の研究は、ゲーム場面での神経活動を調べることで、相互協力関係が、そもそも人にとって快い体験であることを示しています。

脳には、報酬を予期したり実際に受け取ったりした時に活動する特定の部位があるが、繰り返しのある囚人のジレンマでの相互協力時に、こうした領域が活動することがよく分かっています。

この活動レベルは、相手が人間であるときの方がコンピュータであるときよりも高く、他者と協力的関係を築くことが、(得られる利得額は相手を出し抜いた場合の方が大きいにも関わらず)報酬となって快感情をもたらすことを示しています。

また、チャリティに寄付をした場合、自分は何も金銭を受け取るわけではないが、金銭を受け取る時と同じ部位に活動が見られています。

その活動レベルは、自主的に寄付を決めた場合の方が、強制的に寄付するしかなかった場合よりも強まる傾向も見られました。

これらの結果は、2者関係のように特定の相手の存在が想起しやすい場合に限らず、より公共的な相互作用関係においても、自主的な協力が快感情に繋がっていることを示唆しています。

協力し合うことが快感情をもたらす一方で、他者の裏切りは我々に強いネガティブな感情をもたらします。

既に見たように、最後通告ゲームでの過少提案は、利益をゼロにするというリスクを冒しても拒否されることがほとんどです。

フォークらは、この拒否行動が、プレイヤー間の不平等性を是正するための行動なのか、不公正に報復するための行動なのかを調べようとしました。

具体的には、通常のミニ最後通告ゲーム(拒否すると、共に利得はゼロになる)と、拒否してもそれぞれ取り分が減らされるだけで、相対的な利得の比率や格差は変わらないようにしたゲームを比較し、拒否行動が不平等を是正できない状況では、拒否は低下するものの、それでもやはり自己利益を犠牲にした拒否が一定の割合で見られることが示されました。

不平等提案の拒否は結果の不平等を奪う不平等回避的選好だけで説明できるのではなく、不公正に対する報復としての意味を持つと解釈できます。

このような不公正への報復行動は、冷静な判断の結果というよりは、怒りのような強いネガティブ感情の発露として生じたらしいこともわかっています。

例えば、最後通告ゲームで回答者が自分の気持ちを文書で相手に伝えられるようにし、提案を拒否しなくても感情を表出したり伝えたりできるようにすると、分配額が2割以下であるような不平等提案を受託する割合が顕著に高まり、同時に受託した参加者のほとんどがネガティブ感情を伝えるメッセージを書きました。

これは、不平等提案の否定の一部が、相手への怒りの伝達を目的としてなされたことを示しています。

また、最後通告ゲームをプレイしているときの生理指標を表した研究では、不公正な提案に直面することで、皮膚コンダクタンス反応(不快やストレスなどに伴う精神性発汗によって皮膚の電気伝導度が変化する反応)が生じたことが報告されています。

ゲーム時の神経活動を調べた研究では、不公正拒否とネガティブ感情の関係を示すより直接的な証拠が見出されています。

人の脳には、痛みや嫌悪などの不快を感じた場合に特徴的に活動がみられる部位があるが、最後通告ゲームで不公正な提案をされると、こうした部位の活動が活発になります。

その強さは不平等提案を拒否する傾向がありました。

しかも興味深いことに、こうした反応は不暴動提案が人間によってなされた場合にのみ生じ、コンピューターによってなされた場合には生じませんでした。

これは、不平等提案の拒否が他者の不公正に対するネガティブな感情に由来することを裏付けています。

将来の見返りや評判の獲得などのメリットがなくても、コストをかけて他者の不正を罰する方法は、利他的な罰と呼ばれています。

社会秩序を作り出し維持する上で重要な役割を果たしていると考えられます。

神経経済学的な研究では、人が不正を罰するときにも脳の報酬に関わる部位が活発になることが見出され得ています。

例えば、信頼ゲームの投資者が、受託者に罰を与えられるようにした研究は、返報してくれない受託者に罰を与えるときに、こうした部位に活動が見られました。

このことは、人間にとって不公正が不快であるだけでなく、自分の利益を減らしても裏切り者を罰するという利他的な罰が、報酬を受ける時と同様に快に繋がっていることを示唆しています。

互報性と意図

上記のように人は不公正に対して感情的に反応し、それを罰しようとします。

しかし、結果として不公正であっても、それが相手の意図したことではない場合、人はそれをある程度は寛大に受け入れることもできることが分かっています。

例えば、最後通告ゲームで、相手が提案を乱数発生装置に従ってランダムに決定する場合には、不平等提案でも受け入れる割合が高まることが分かっています。

また、最後通告ゲームで得られるチップの交換レートを提案者と回答者で変えた条件を設けた実験では、提案者が交換レートの違いを知らずに分配する場合より、違いを知った上で不平等が生じるように分配している場合の方が、拒否確率が高かったです。

更にフォークらは、10ドルを分配するミニ最後通告ゲームで、提案者にとっての選択肢の片方を8ドル、相手に2ドルとし、もう一方の選択が5:5の場合と10:0の場合で、8:2提案の拒否率が異なることを示しました。

平等提案もできるのにも関わらず、あえて不平等な選択肢を選んだという前者の場合の方が、可能な中で少しでも平等に近い選択肢を選んだという後者の場合より、拒否率は遥かに対という結果が出ました。

以上のような結果は、相手が意図的に不公正な行動をとっている場合、ランダムに・知らずに・やむを得ず不公正な行動をとってしまった場合に比べて負の強い互報性が発動しやすいことを示しています。

不公正を罰する行動に相手の意図が影響するならば、相手の善意に善意で答えるという正の互報性の発動にも、相手の意図が影響しているはずです。

従来までは、正の互報性行動は負の互報行動ほどには強く表れず、初期の研究では相手の意図の影響も明確には見出されてきませんでした。

しかし近年、正の互報性においても意図の効果を示す結果が報告されています。

例えば、ムーンライティングゲームでの第一プレイヤーが人間の場合、コンピューターの場合よりも、相手の受託額に対して多く返金する傾向があります。

ミニ信頼ゲームでは、提案者の平等提案が自主的に選択されたものである場合、強制的に選択させられた場合よりも相手に多く返報する選択が選ばれやすかったです。

コックス氏らは、ムーンライティングゲームで、第1プレイヤーの自由な決定に対して第二プリエヤーが決定する条件と、独裁者ゲームのように第一プレイヤーの決定所与として第二プレイヤーの行動だけを取り出したコントロール条件を比較し、相手の意図が無関係なコントロール条件での分配額よりも、相手の信頼行動に対する返報額の方が大きいことを示しました。

こうした結果は、相手が意図的に利他行動を行った場合に、ランダムに・強制的に・所与として、その状態が生じたときよりも、正の互報性が引き出されやすいことを示しています。

以上の知見から、人は単に結果的な金額の多寡やバランスに反応しているのではなく、それらの行動が搾取や信頼といった意図を持ってなされたものかどうかに敏感に反応し、行動を変えていると言えます。

まとめ・投資に応用すると

人は、強力に対して友好的ですが、不公正に対しては嫌悪感を感じ、自分が損したとしても罰したいということです。

社会的には、人は自分が損したとしても不公正な人を罰したいと思う傾向があるということです。


これは個人的には恐ろしいなと思いました。

私は合理的に考えるからか、不公正な人がいたとしても私が損をしてまで罰を受けさせる必要はないという考え方です。

しかし大半の人間は、自分が損してまで不公正な人を罰したいと思うという傾向があるため、社会が成り立っているということです。

自分が損してまで罰することに快の感情をいだくからです。

しかしこれはエスカレートしてしまった時が恐ろしいなと思いました。


そして人間は、相手が意図的に自分に対して良くしてくれた場合には、協力的になり、返報したくなるという正のループもあります。

この正のループが続く人間関係は素晴らしいですね。



この心理を投資に応用すると下記です。

例えば株式会社だったとしたら、株主にも利益をもたらそうとする経営方針の企業はやはり株価が伸びていく傾向がありますね。(もちろん事業でも純利益を伸ばし続け卯rことができている前提ですが)

一方、株主にあまり還元したがらない企業もあります。(株価で還元したいという方針でもなく、ただ還元したくないという企業)

このような企業はやはり株主総会で株主が起こっていたり、株価もつられて下落していく傾向があります。


そのため、純利益を伸ばしながらも投資家にシェアする意向のある企業は人々から選好されやすいということです。

反対に、搾取することしか考えていないような方針だと長期的に見て衰退してしまうリスクがあるということです。

投資においても、目先の自己利益だけでなく、長期的に他者に分配できる企業が良いと分かりますね。


関連記事→【 相互依存的状況とは 】行動的ゲーム論からも分かりやすく解説/投資に応用すると


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