今回は、アメリカの「仮想通貨の法令」についてまとめました。
時系列順にまとめました。
仮想通貨の導入の流れとそれに対する法令
1995年、アメリカでは、下院の公聴会で、インターネットを使ったお金の取引がマネーロンダリングに使われるなどの懸念が報告され、適切な取り締まりが必要だとの議論がなされました。
※マネーロンダリングとは→【 マネーロンダリングとは 】分かりやすく解説
2008年、サトシナカモトの名義でビットコインに関する論文が発表されると仮想通貨は一気に世界に浸透しました。
この流れで世界に仮想通貨が広まっていきました。
アメリカの法令や規定に関する機関の措置や対策について追っていきましょう。
・アメリカの金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)
・米国歳入庁(IRS)
・米国証券取引委員会(SEC)
・米国商品先物取引委員会(CFTC)
仮想通貨の最初
1995年、米国下院において「お金の将来」をテーマとした公聴会が開催されました。
この公聴会では、お金がインターネットを使って取引が可能になることのインパクトは大きいとの見方が示されました。
出席者からは、インターネット技術への規制がお行わなければ、一部の市場参加者が、想像もつかないような新しいお金を生み出す可能性があることも報告されました。
他にもインターネットがマネーロンダリングに使われるなどの懸念から、適切な取り締まりが欠かせないとの報告もなされました。
1998年にビーンズドットコム
1999年にフルーズ
というベンチャー企業が登場し、独自のインターネット通貨を生み出しました。
しかし、2001年両者とも経営破綻しました。
ITバブルの崩壊や、犯罪組織によって不正にインターネット通貨が引き出されたことが原因でした。
シルクロード事件と金融犯罪執行ネットワーク(FInCEN)
2011年から2013年の間、アメリカでは、違法薬物を取り扱う違法電子商取引サイトでビットコインが使われた「シルクロード事件」を機に、仮想通貨についての具体的な議論が巻き起こりました。
2013年には米国上院の国土安全保障・政府問題委員会において「シルクロードを超えて仮想通貨の潜在的リスク・脅威・将来」と題した公聴会が開かれました。
そして、米国総務省の銀行秘密法の執行機関である金融犯罪執行ネットワーク(FInCEN)は、「仮想通貨を管理・または利用する者に対する規定の適用について」と題するガイダンスを公表しました。
これは、仮想通貨を作成・取得・流通・交換・受領・送金する者に対して銀行秘密法の適用範囲を明確にするためのものです。
そのガイダンスの中で、仮想通貨の「利用者」「交換者」「管理者」がそれぞれ次の通り定義づけられました。
利用者 (User) | 仮想通貨を物品やサービスを購入するために取得する者 |
交換者 (Exchanger) | 仮想通貨を現実通貨・投資ファンド・他の仮想通貨と交換することを業とする者 |
管理者 (Administrator) | 仮想通貨を発行し(流通支)、それを無効にする(流通を停止する)者 |
これらのうち、交換者・管理者はマネーサービス事業に含まれます。
例外規定を除き、送金者としてMSBの登録・報告・記録の義務があります。
利用者はMSBに含まれずこの規制を受けません。
FinCENは、通貨の定義については、次のように、米国連邦規制(CFR)31巻1010条100の規定を準用しています。
米国または他の国家の硬貨及び紙幣であって
①法的な通用力があり
②流通生があり
③発行国において慣習的に交換の媒体として使用され受け入れられているもの
仮想通貨はこれに対し、現実通貨のように交換媒体として機能する環境もあります。
しかし現実通過の全てを属性を備えているわけではなく、特に仮想通貨は米国のどの法的管轄地域においても法定通貨として認められていないとされました。
米国歳入庁(IRS)
2014年、米国歳入庁(IRS)は、「仮想通貨に関するガイダンス及びよくある質問と回答」を公表しました。
この中で、IRAは仮想通貨が物品やサービスの対価として支払われたり、投資目的で使われたりすることを認識しているとしました。
その上で仮想通貨を「交換媒体・会計単位・価値の保存の機能を持つ、価値のデジタル表現」と定義づけられました。
そして、置かれた環境によっては現実通貨として運用されることもありますが、FinCENの立場同様に米国においてはどの法的管轄地域においても法定通貨ではないとしました。
一方で、現実通貨と同等の価値を有し、または現実通過の代用となるものを「交換可能な仮想通貨」と定義しました。
そしてビットコインがその一例であるとしました。
IRSは、仮想通貨を、米国の税務上、通貨ではなく資産として扱うとしました。
そして、物品またはサービスの対価として仮想通貨を受領した場合は、受領日時点での構成市場の価格のドル建て価格をその仮想通貨の取得価額として計算すると定めました。
またそれらの交換は、資産を扱ったものとしてキャピタルゲインや損失を帳簿に記載しなければならないとしました。
更に、販売用のものは棚卸資産として計上しなければなりません。
この他に、経理利益及び損失も帳簿に記載しなければなりません。
決済に仮想通貨が使われた場合は、通貨として取り扱うが、必ず両替し、その両替の際には、構成な市場価格を確認することとなります。
IRSは、2018年、「納税に対する仮想通貨取引の報告に関する再度喚起」と題する通達を発行しました。
それは、仮想通貨の取引で得た利益は確定申告の際申告しなければならないことについて改めて注意喚起するものでした。
仮想通貨について正しく申告しなかった場合には税務調査の対象となり、行政処分や追徴金が課されることがあります。
これらに反すると、次のように処せられることもあります。
・故意に税を免れようとした場合には5年以下及び25万USドル以下の罰金
・不正に還付を受けた場合には、3年以下及び25万ドル以下の罰金の刑罰
米国証券取引委員会(SEC)
2017年、米国証券取引委員会(SEC)は、仮想通貨資産技術を使った資金調達に関する投資公報を発表しました。
その中でSECは、ICO(詳細→仮想通貨における【 ICOとは 】歴史・機能・条件・規制・リスク/IPO・IEOとの違いまで解説)を公正で合法的な投資機会とする一方で、正しく使用されない可能性もあるとしました。
SECは、ICOによって売り出されたトークンは、1933年証券法及び1934年証券取引所法が定義する証券に該当する場合があるとの見解を示しました。
SECはICOのスポンサーに対し停止・詐欺容疑の公開などの強制行動を発しました。
SECは、2017年に公表したThe DAOに対するサイバー攻撃事件に関する調査報告書において、仮想通貨の払い込みを受けて行われるトークンなどデジタル資産の発行が有価証券の募集にあたり得るという考え方を示しました。
報告書においてSECは、1946年の事件連邦最高裁判決で示された判断枠組みである「HowEY基準」に照らして、The DAOが発行しようとしたトークンは有価主権の一類型である投資契約にあたるという判断を示しました。
2018年、SECは、1000年の仮想通貨人気で900%の株価急騰をしたUBIブロックチェーン・インターネットの株式の売買を同社事業について投資家が誤解している恐れがあるとして停止しました。
そしてテキサス州に拠点を置くアライズバンクが6億ドル余りを調達したと主張しているICOについて、資金凍結の裁判所命令を出しました。
SECは、不正なICOで仮想通貨を凍結しました。
そして米条議会で仮想通貨関連の公聴会が開催されました。
SECは以前から仮想通貨やICOに厳格でした。
また、ICOで6億ドルを調達した企業に対しても、仮想通貨の凍結命令を行いました。
SECのジェイ・クレイトン会長は「仮想通貨市場はまるでアメリカの開拓時代の西部のような無法地帯だ」と表現しました。
同会長は、デジタル通貨をアジェンダの筆頭項目とし、仮想通貨の多くがSECの監督下に入るべきだと述べました。
更にSECは、多くの仮想通貨交換業者が必要な行政登録をしておらず、違法の可能性が高いとの見解を示しました。
そして投資家保護のため仮想通貨交換業者に登録を促しました。
SECは、ネット上で仮想通貨の売買取引を提供する業者の多くが「連邦証券北条の証券にあたる資産取引を提供している」と指摘しました。
2018年、無登録業者に対する初の排除措置命令が出されました。
その後2019年、SECは、ICOを検討している企業などを対象に特定の仮想通貨及びトークンが有価証券に該当するかどうかを判断するためのフレームワークを発表しました。
2020年にSECは、リップル(XRP)という仮想通貨を提訴しました。
米国商品先物取引委員会(CFTC)
1974年に設立された米大統領直轄の政府機関である米国商品先物委員会は、商品先物取引委員会法に基づき、ビットコインを「商品」であると規定しました。
そして、州間で取引されるビットコインに関わる詐欺・改ざん・将来のビットコインに直接関わる規定は同委員会下にある旨を発表しました。
CFTCは2015年に発出した命令において、コインフリップ社の運営するビットコインのオプション取引所が、商品取引所法で求められる登録を受けずに開設された無登録取引所であるとしました。
これはCFTCがビットコインは商品取引所法の規制を受ける商品であると断定したことを意味しています。
このことが、CFTCがその後、米国先物取引所大手CMEとシカゴ・オプション取引所(CBOE)に対し、先物ビットコインの発行を許可することにつながりました。
CFTCはまた、Ledger XとLLCに対する取引のプラットフォームと仮想通貨デリバティブの解禁・スワップ執行ファシリティ・デリバティブ解禁協会を許可しました。
2017年、トランプ大統領は、CFTCの委員長に指名し、米国議会は満場一致でそれを承認しました。
そしてCTFCは「仮想通貨取引におけるリスクの理解」と題した通知文を公表しました。
ここでは、仮想通貨は、米ドルや他の世界の通貨を交換されることがあるが、どの国の政府にもまたどの国の中央銀行も後ろ盾になっていないことを挙げました。
その価値は需要と供給という市場の力でのみ成り立っており、伝統的な法定通貨よりもはるかに不安定なものだとしました。
また、仮想通貨がもたらす具体的なリスクとして次のことを挙げました。
①ほとんどの市場が政府機関によって規制されたり監視されていない
②市場において利用者保護のようなセーフガードシステムが欠如している
③価格のアップダウンが激しい
⑤市場操作がされかねない
⑥消費者間同士が売買する場合不公平な売買が行われる可能性がある
しかしその後の2018年、米議会上院の銀行住宅都市委員会は、仮想通貨についての公聴会を開催し、ジャンカルロ委員長は証言において、「ビットコイン先物は完全に透明性がある」と強調しました。
仮想通貨市場は小さく、システムリスクは現状で限定的だとの見解を示しました。
米国の「トークン分類法」法案
仮想通貨の資産運用を手掛けている、米国サンフランシスコに本拠地の「ビットワイズ・アセットマネジメント」は、世界81の交換所を対象に売買状況を分析し、2019年にSECに報告書を提出しました。
それによると、仮想通貨取引所は活発に見せかけるため自社内のアカウントでの売買を繰り返す偽装が目立つと指摘しました。
ビットワイズが調査し、期間の日ごとの取引量60億ドルのうち実態のある顧客取引は2億7,300万ドルで、水増しされた取引が全体の95%超えと分析しました。
一方で、米国議会では、仮想通貨を有価証券でない新たな資産クラスのデジタルトークンとして定める法案を提出する動きもありました。
2018年、米国下院議会では、共和党と民主党の1名ずつ議員による「トークン分類法2018」という法案が提出されました。
2019年にはそれに微調整を加えた「トークン分類法2019」が共和党・民主党それぞれ2名ずつが加わって提出されました。
「トークン分類法」が実現すれば、SECが遵守する証券方が改正され、仮想通貨やデジタルアセットなどの発行を望む企業や弾劾た有価証券としての登録が不要となり、業界参入の障壁が取り除かれます。
まとめ
ちなみに、ブロックチェーン技術について米国連邦法で規制する動きはこれまで見られていません。
トランプ政権はむしろブロックチェーン技術の活用に積極的に取り組んでいました。
米国は、マネーロンダリング・徴収・消費者保護の観点から法的整備を整えてきています。
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