今回は、連結財務諸表における「退職給付会計」について解説します。
2012年に「退職給付に関する会計基準」が公表され、主に連結財務諸表における退職給付の会計処理が一部変更されました。
ここでは、未確認数理計算上の差異と未確認過去勤務費用の会計処理の変更について説明します。
退職給付に関する会計基準
2012年に改正されたポイント
連結財務諸表における取り扱いを中心に用語と会計処理が変更されました。
主な改正点は次の通りです。
【用語の変更】
改正前 | 改正後 |
退職給付引当金 | 退職給付に係る負債 |
前払年金費用 | 退職給付に係る資産 |
過去勤務債務 | 過去勤務費用 |
期待運用収益率 | 長期期待運用収益率 |
【未確認数理計算上の差異と未確認過去勤務費用の処理】
改正前 | 改正後 |
遅延認識 | その他の包括利益としてB/S上即時認識 |
【退職給付見込額の計算方法】
改正前 | 改正後 |
期間定額基準 | 期間定額基準または給付算定式基準 |
連結における退職給付の会計処理
当期の会計処理
個別財務諸表では、未確認数理計算上の差異や未確認過去勤務費用が発生しても貸借対照表には計上しませんでした。(オフバランス)
しかし、連結財務諸表では、この差異を退職給付に係る負債(退職給付に係る資産)として貸借対照表に計上します。(オンバランス)
つまり、個別財務諸表では未確認となっていた部分を退職給付費用とはせず、退職給付に係る調整額(その他の包括利益)として処理します。
例えば、期末の退職給付債務の見積額が25,000円、実績がくが26,000円、年金資産の時価は20,000円で、当期以前にさい等はなく、数理計算上の差異10,000円は発生した年度から10年間で均等焼却したと仮定すると、個別譲渡連結上ではそれぞれ次のように処理されます。
〈個別上〉
見積額をもとに「退職給付引当金」を計算し、数理計算上の際は焼却された部分のみを貸借対照表上で認識します。
〈連結上〉
r円欠場は、実績額をもとに「退職給付に係る負債」を計算するため、退職給付に係る負債には数理計算上の差異が全額含まれます。
つまり、連結上では、未確認部分についても退職給付に係る調整額(その他の包括利益)として計上されます。
未確認際は退職給付に係る負債として即時に認識されますが、相手勘定科目は退職給付費用(営業費用)ではなく退職給付に係る調整額(その他の包括利益)となります。
営業費用は純利益に含まれますが、その他の包括利益は含まれない点で大きく異なります。
連結財務諸表は、基本的に個別財務諸表を合算し、連結修正仕訳で金額を加減算することで作成します。
したがって、退職給付に係る負債についても連結修仕訳として処理します。
「退職給付に係る調整額」は連結包括利益計算書のその他の包括利益に記載されるとともに、残額は連結貸借対照表の純資産の部のその他の包括利益累計額に「退職給付に係る調整累計額」として記載されます。
この「退職給付に係る調整累計額」は連結貸借対照表の純資産の部の科目である、連結株主資本等変動計算書にも記載されます。
このことから、当期の変動額は連結株主資本等変動計算書の科目である「退職給付に係る調整累計額当期変動額」を用います。
更に、最初から連結財務諸表の会計処理を想定して仕訳を行うことで、連結修正仕訳を経ないで連結財務諸表の数値を直接求めることもできます。
この方法では、便宜上連結財務諸表の作成プロセスを無視して、連結財務諸表を直接作成すると仮定して処理します。
翌期の会計処理
未確認の差異を償却して当期の費用とした場合、その他の包括利益の調整(組替調整)を行います。
具体的には、差異を償却した場合、連結上は退職給付に係る調整累計額を減少させ、退職給付費用を認識します。
この処理のように、一度その他の包括利益に計上した金額を、後に純利益の構成要素として振り返る方法を組替調整と言います。
税効果会計を加味した会計処理
退職給付に係る負債や退職給付費用は、基本的に税務上認められないため、退職給付会計に税効果会計が適用されます。
まとめ
株式投資や経営において、決算書の理解は必須になります。
その際、簿記の知識も生かして理解を深めましょう。
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