今回は、決算書における「金銭債権・貸倒引当金」について解説をまとめました。
時間価値
貨幣の時間価値
例えば、銀行にお金を10000万円預けた時にあ、年利を5%とすると1年後には利息500円をプラスした10500円を受け取ることができます。
このように、時間が経過することによって貨幣の価値が高くなることを貨幣の時間価値と言います。
そして、会計ではよく金銭債権などの評価において、この貨幣の時間価値、つまり現在の価値(現在価値)や将来の価値(将来価値)を考える必要があります。
例えば今現金100円をねんり5%で銀行に預け入れたとします。
1年後には利息5円を加えた105円(=100円×1.05)を受け取ることができます。
つまり、現在の100円と1年後の105円の価値が同じだということを意味しています。
この時、100円を現在価値(現時点の価値)、105円を将来価値(一定期間後の将来の価値)と言います。
今度は、現在の100円の2年後を考えてみましょう。
2年後の将来の価値は110.25円になります。
つまり、利子率rにおける現在価値のn年後の将来価値は次の式で表すことができます。
将来価値=現在価値×(1+r)n
※nは累乗根です。
次に反対のことを考えてみましょう。
1年後に100円受け取るには、今いくら預ければ良いかというと、100円÷1.05で95。24円を預ければ良いことになります。
この時、95.24円を割引現在価値(将来価値を現在価値に直した金額)と言います。
2年後に100円受け取るときは、以下のようになります。
100円÷1.05で90.70円(割引現在価値)ということになります。
つまり、利子率rにおけるn年後の将来価値の現在価値(割引現在価値)は、次の式で表すことができます。
現在価値=将来価値÷(1+r)n=将来価値×1/(1+r)n
※nは累乗根です。
現在係数
現在係数とは、将来価値から現在価値を求めるときに使う係数のことです。
年金現価係数
年金現価係数とは、毎年、同じ金額の収支があるときに将来価値から現在価値の合計を求めるときに使う係数のことです。
つまり、年金現価係数は、現価係数を年数分合計したものになります。
金銭債権
金銭債権とは
金銭債権とは、将来他人から一定金額を受け取ることができる権利のことです。
金銭債権は、発生源泉(本業によって生じたものか否か)により次のように分類することができます。
【金銭債権の分類】
営業債権 | 売上債権・・・受取手形や売掛金など |
営業債権 | その他・・・営業上、計上的に発生する得意先・仕入先に対する貸付金や 立替金など |
営業外債権 | 営業債権以外の貸付金・立替金・未収入金など |
金銭債権の評価
金銭債権は、取得原価から貸倒引当金を控除した金額を貸借対照表価値とします。
ただし、債権を債権金額より低い価額または高い価額で取得した場合で、取得価額と債権金額の差額が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定し、その算定した償却原価から貸倒引当金を控除した金額を貸借対照表価額とします。
【金銭債権の評価】
取得の形態 | 貸借対照表価額 |
・債権金額=取得価額(原則) ・債権金額×取得価額:差額が金利調整差額と認められない場合 | 取得価額ー貸倒引当金 |
・債権金額×取得価額:差額が金利調整差額と認められる場合 | 取得価額ー貸倒引当金 |
償却原価法
償却原価法とは、債権金額と取得価額の差額(金利調整差額)を償還日に至るまで、毎朝一定の方法で債権の貸借対照表価額に加減する方法のことです。
償却原価法には利息法・定額法の2つの方法があります。
原則は利息法になりますが、継続適用を条件として定額法を採用することもできます。
定額法(容認)
定額法では、償却額を次の計算式によって求めます。
更に、償却額の計算は決算日(期末)に行います。
金利調整差額償却額=(債権金額ー取得価額)×当期の所有月数/取得日から償還日までの月数
※金利調整差額=債権金額ー取得価額
利息法(原則)
利息法とは、将来の現金収支の(割引)現在価値の合計が取得価額に一致するような割引率(実効利子率)をもとにして算定した額を、帳簿価額に加減する方法です。
利息法では、償却額を次の計算式によって求めます。
更に、償却額の計算は利払い日ごとに行います。
金利調整差額償却額=利息配分額ー利息受取額
※利息配分額=帳簿価額×実効利子率
※利息受取額=債権金額×利子率(券面利子率)
売上債権などに含まれる金利部分の取り扱い
売上債権の発生から回収までに一定の期間が必要な場合、売上債権に金利が生じる場合があります。
この場合、売上債権を取得したときに、債権に関する金利部分を区分して処理する方法と区分しないで処理する方法があります。
どちらの方法を採用しているかで、売上債権の計上価額や決算時(利払時)の処理が異なります。
【金利部分を区分する方法としない方法】
①金利部分を区分する方法
債権金額(額面金額)から金利部分を差し引いた現金正価を売上債権の計上価額とする方法
②金利部分を区分しない方法
債権金額(額面金額)を売上債権の計上価額とする方法
③金利部分を区分しない方法
債権金額(額面金額)を売上債権の計上価額とする方法
金利部分を区分する方法
①売上債権の計上価額
金利部分を除いた現金取引の金額(現金正価)で売上債権の金額を計上します。
②金利部分の処理
金利部分は、償却原価法(定額法または利息法)によって、各期の損益に配分します。
・定額法
定額法では、債権金額(額面金額)と現金正価の差額を回収までの期間で均等に受取利息として計上します。
・利息法
利息法では、帳簿価額に利率をかけて受取利息として計上します。
金利部分を区分しない方法
金利部分を区分しない方法では、金利を不運だ債権金額(額面金額)を売上債権の計上価額とします。
更に、金利部分を区分する方法と異なり、決算時などに償却原価法の処理は行いません。
貸倒引当金の設定
貸倒引当金とは
貸倒引当金は、受取手形や売掛金などが次期以降に回収不能となる可能性がある場合に備えて設定します。
そこで、貸倒引当金を設定する際に、それぞれの債権を、その債権の回収可能性に応じて区分し、この区分ごとに定められた方法で貸倒見積高を算定します。
【債権の区分】
・一般債権:経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権
・貸倒懸念債権:経営破綻の状態には至っていないが、経営状態の悪化などにより、回収が懸念される債権
・破産更生債権等:経営破綻または実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権
一般債権は、問題ありません(貸倒懸念債権・破産更生債権等以外の債権で、ほぼ問題ない)。
貸倒債権は、ややリスクが伴います。
破産更生債権等は、大きなリスクがあります。
貸倒見積高の算定方法
債権の区分ごとに算定方法を見ていきましょう。
一般債権
一般債権は、債権全体または同種・同類の債権ごとに、過去の貸倒実績率などをかけて貸倒見積高を算定します。(貸倒実績率法)
貸倒見積高=債権の期末残高×貸倒実績率
貸倒実績率=算定期間における実際貸倒高/債権の期末残高
債権全体とは、一般債権に分類された受取手形や売掛金の期末残高をまとめて貸倒見積高を算定することで、同種・同類の債権ごととは、一般債権に分類された受取手形の期末残高、一般債権に分類された売掛金の期末残高ごとに分けて算定するということです。
貸倒懸念債権
貸倒懸念債権は、回収可能性が債権によって異なるため、それぞれの債権の状況に応じて貸倒見積高を算定していきます。
貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定方法には
①財務内容評価法
②キャッシュフロー見積法
の2つの方法があります。
①財務内容評価法
財務内容評価法とは、債権金額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額につて債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法です。
貸倒見積高=(債権金額ー担保処分・保証回収見込額)×貸倒設定率
②キャッシュフロー見積法
キャッシュフロー見積法とは、債権の元本の回収及び利息の受け取りにかかるキャッシュフローを合理的に見積ることができる債権について用いられる方法です。
元本の回収及び利息の受け取りが見込まれる時点から当期末までの期間に渡って、元本の回収額及び利息の受取額を当初の約定利子率で割り引いた金額(割引現在価値)と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とします。
【貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定方法(キャッシュフロー見積法)】
貸倒見積高=債権金額ー将来キャッシュフローの割引現在価値
キャッシュフロー見積法により貸倒見積高を算定し、貸倒引当金を設定している場合には、時の経過により貸倒引当金を減額します。
この時、この減額分は、原則「受取利息」として処理しますが、「貸倒引当金戻入」として処理することもできます。
破産更生債権等
破産更生債権等は、債権金額から担保の処分見込額及び補償による回収見込額を減額し、その残高全てを貸倒見積高とします。(財務内容評価法)
貸倒見積高=債権金額ー担保処分・保証回収見込額
破産更生債権等はほぼ回収の見込みがないため、貸倒設定率を100%(=1)と考えます。
破産更生債権等の貸倒見積高は、原則として貸倒引当金として処理しますが、債権金額や取得価額から直接減額することもできます。
貸倒引当金の表示
損益計算書の表示区分
貸倒引当金の損益計算書における表示区分は、債権の区分(営業債権・営業外債権)ごとに純額で表示します。
【繰入額が戻入額より大きい場合→貸倒引当金繰入】
・営業債権→販売費および一般管理費
・営業外債権→営業外費用
【繰入額が戻入額より小さい場合→貸倒引当金戻入】
・営業費用または営業外費用から控除するか営業外収益に表示
つまり、営業債権と営業外債権とを区別して貸倒引当金を設定している場合には、営業債権に対する貸倒引当金繰入と貸倒引当金戻入との純額と、営業外債権に対する貸倒引当金繰入と貸倒引当金戻入との純額でそれぞれ表示します。
詳細→決算書における【 期首貸倒引当金の修正 】分かりやすく解説
貸倒れに関する会計処理
貸倒引当金は、売掛金・貸付金などの債権が次期以降に貸し倒れることを見越して見積計上します。
しかし、あくまでも見積りによる計上のため、実際に貸し倒れた時の金額とは差額が生じる場合があります。
この時の処理方法には2つの方法があり、差額の発生原因によって基本的な取り扱いが決まってきます。
【差額の発生原因とその基本的な取り扱い】
発生原因 | 基本的な取扱い |
①計上時の見積もり誤り | 修正再表示 |
②当期中の状況変化(会計上の見積もりの変更) | 営業損益または営業外損益 |
計上時の見積もり誤り(誤謬の訂正)
誤謬とは、財務諸表作成時に生じた会計上の見積もり誤りのことです。
つまり、決算時(前期末)に設定した貸倒引当金の見積もりが謝っていたために差額が生じることです。
このように、前期の誤謬が判明した時には、その期の損益計算書に遡って金額を修正します。
その結果、前期末の貸倒て相性表の金額も修正されます。
このことを修正再表示と言います。
損益計算書で計算した当期純利益は繰越利益剰余金を通して貸借対照表に計上されます。
したがって、前期以前の損益項目の修正は、当期では繰越利益剰余金の修正と考えます。
当期中の状況の変化(会計上の見積もりの変更)
過去の財務諸表の作成時に入手可能な情報に基づいて最善の見積もりを行ったにもかかわらず、当期の景気の良否などにより前期の見積額と当期の貸倒額に差額が生じた場合や、過年度に貸倒処理した債権のうち、当期に回収できた部分がある場合を当期中の状況の変化と言います。
この場合あ次のような処理をします。
貸倒引当金が設定不足であった時
当期において実際の貸倒額が当初の見積額を超えて発生した場合の、その差額の原因が当期中の状況の変化によるものと判断した場合には、その差額を貸倒損失として処理します。
貸倒損失は、営業債権(売掛金など)の時には、販売費及び一般管理費に、営業外債権(貸付金など)の時には、営業外費用に表示します。
貸倒損失の表示区分の考え方は、貸倒引当金繰入の時と同じです。
当期の貸倒引当金の見積額が貸倒引当金残高より少なかった時
当期の決算において見積もった貸倒引当金が期末の貸倒引当金の残高よりも少なかった場合、その差額分の貸倒引当金を取り崩し、相手勘定科目を貸倒引当金戻入として処理します。
ただし、貸倒引当金の計上時に見積もりを謝ったことにより差額が生じたときは、修正再表示となります。
過年度に貸倒処理した債権を当期に回収した時
過年度に貸倒の処理をした債権を当期において回収した時には、償却債権取立益として処理します。
償却債権取立益は損益計算上、営業外収益に表示します。
ただし、貸倒の処理をしたときに判断を謝ったことにより償却債権取立益が生じたときは、修正再表示となります。
貸借対照表の表示区分
貸倒引当金の貸借対照表の記載方法は、間接控除方式・直接控除注記方式があります。
【間接控除方式】
・科目別間接控除方式(原則)
・一括間接控除方式
【直接控除注記方式】
・直接控除科目別注記方式
・直接控除一括注記方式
為替手形
為替手形とは
為替手形とは、手形を降り出した人が特定の人に対し、自分の代わりにある人に期日までに代金を支払うことを依頼するための証券のことです。
約束手形は、振出人と名宛人の2者間で行われる取引で用いられる手形でしたが、これから見ていく為替手形は3者間で行われる取引(決済取引)で用いられる手形です。
詳細→決算書における【 外貨建荷為替手形 】分かりやすく解説
為替手形の登場人物
為替手形の登場人物は、振出人・指図人・名宛人の3者です。
振出人は、為替手形を作成した人のことです。
指図人は、為替手形を受け取った人のことです。(受取人とも言います。)
名宛人は、手形代金の支払い義務を引き受けた人のことです。(支払人・引受人とも言います。)
更に、名宛人は振り出し人から依頼されて、手形代金の支払いを承諾しますが、この承諾を引受けと言います。
(名宛人の引き受けがなければ振り出し人は為替手形を振り出すことができません。)
約束手形では手形を受け取った人のことを名宛人と言いますが、為替手形では手形を受け取った人ではなう、引き受けた人のことを名宛人と言います。
為替手形の処理
為替手形の処理は約束手形の場合と同様に、手形代金を受け取る権利は受取手形で、手形代金を支払う義務は支払手形として処理します。
更に、為替手形の場合、振出人は名宛人に手形代金の支払いを依頼するだけのため、振出人には手形代金を受け取る権利を表す受取手形も、手形代金を支払う義務を表す支払手形も生じないことに注意しましょう。
為替手形を振り出した時
AがBに対する買掛金を支払うために、売掛金のあるCを名宛人として為替手形を振り出したという場合の処理を見てみましょう。
A(振出人)は、C(名宛人)に対して手形代金を支払ってもらうため、C(名宛人)に対する債権(売掛金)が減少します。
また、A(振出人)が為替手形を振り出すのは、B(指図人)に対する債務(買掛金)を支払うためのため、B(指図人)に対する債務(買掛金)が減少します。
為替手形を受け取った時
B(指図人)は、為替手形の受け取りにより、手形代金を受け取ることができます。
したがって、受取手形で処理します。
為替手形を引き受けた時
C(名宛人)は、為替手形を引き受けたことにより、手形代金の支払い義務が生じます。
したがって、支払手形として処理します。
為替手形が決済された時の処理
為替手形が支払期日に決済された時は、約束手形の場合と同様、当座預金口座等を通じて手形代金の受払いが行われます。
更に、支払期日が到来する前の3者の状態は次の通りです。
為替手形の代金が決済された時(=振出人Aの処理)
為替手形を振り出した人には、受取手形も支払手形も発生していないため、為替手形が決済されても何の処理もありません。
為替手形の代金を受け取った時(=指図人Bの処理)
為替手形を受け取った人は、受取手形で処理しています。
したがって、指図人は為替手形が決済されたおt機に受取手形を減少させます。
為替手形の代金を支払った時(=名宛人Cの処理)
為替手形を引き受けた人は、支払手形として処理します。
したがって、名宛人は為替手形が決済された時に支払手形を減少させます。
自己受為替手形・自己宛為替手形
自己受為替手形・自己宛為替手形
通常の為替手形の取引では、登場人物が振出人・指図人・名宛人の3者ですが、為替手形の取引で登場人物が2者になるケースがあります。
それが自己受為替手形・自己宛為替手形です。
自己受為替手形の処理
自己受為替手形とは、自分が指図人(受取人)となるように振り出した為替手形のことです。
手形には満期日が記載されており、この満期日に手形代金が支払われない場合、不渡りの状態になります。
不渡りを出した企業は社会的信用が落ちるため、これを避けるために手形の支払期日にはほぼ確実に代金が支払われます。
したがって、代金を確実に回収したい時などに自己為替手形を振り出すことがあります。
支払期日に確実に代金を支払ってもらうという点では、取引の相手方から約束手形を受け取った場合と同様ですが、この場合、鳥日kの相手型が約束手形を扱っていなければなりません。
これに対して、自己受為替手形は自分が為替手形を扱っていれば振り出すことができます。
つまり自分主体で振り出すことができるため、代金を確実に回収したい時などに用いられます。
振出人の処理(=Aの処理)
自己受為替手形の振り出し人は手形代金の受取人(=指図人)となります。
そこで、自己受為替手形を振り出した時は、受取手形として処理します。
名宛人の処理(=Cの処理)
為替手形の名宛人には手形代金の支払い義務が発生するため、名宛人は支払手形として処理します。
自己宛為替手形の処理
自己宛為替手形とは、自分が名宛人となるように振り出した為替手形のことです。
自己宛為替手形は、例えば本店が仕入先に対する買掛金を、支店に払ってもらいたいときなどに用いられ、支店宛に振り出されます。
振出人の処理(=Aの処理)
自己宛為替手形の振出人は、手形代金の支払人(=名宛人)となります。
そこで、自己宛為替手形を振り出した時は、支払手形として処理します。
指図人の処理(=Bの処理)
為替手形の指図人には、手形代金を受け取る権利が発生するため、指図人は受取手形として処理します。
手形の裏書き
手形の裏書きとは
手形(約束手形・為替手形)は、支払期日前に他の企業に渡して、商品代金や買掛金などの支払いに充てることができます。
所有する手形の裏面に必要事項を記入してから、他の企業に渡すため、これを手形の裏書き(または手形の裏譲渡)と言います。
偶発債務とは
裏書譲渡した手形が不渡りとなった場合、裏書譲渡人は、その手形の支払い人に代わって手形代金を支払わなければなりません。
つまり、手形を裏書譲渡した時点では裏書譲渡人には代金の支払い義務は発生しませんが、手形が不渡りとなった時は代金の支払い義務が生じます。
このような義務(将来、支払わなければならなくなる可能性のあるもの)を偶発債務と言います。
手形の裏書譲渡・偶発債務の処理
手形の裏書譲渡時における偶発債務の処理には、いくつかの方法がありますが、主要な直接減額法に関して説明します。
手形を裏書譲渡した時
手形を裏書譲渡したときは、手形金額を受取手形から減額します。
また、偶発債務(補償債務)の時価を見積もり、保証債務として処理するとともに、保証債務費用を計上します。
手形を裏書譲渡した時、後でその手形が支払い不能となって、当店に支払義務が発生する可能性があります。
その可能性を見積もって計上するのが保証債務です。
これは、売掛金や受取手形について、次期以降に貸し倒れるかもしれない金額を見積もって設定する貸倒引当金と似ています。
したがって、保証債務の時価は貸倒引当金の設定率と同様、手形額面の1〜2%程度で計算します。
裏書きした手形が無事決済された時
裏書きした手形が無事に決済された時には、偶発債務が消滅するため、計上している保証債務を取り崩し(借方に記入し)ます。
更に、貸方は保証債務取崩益として処理します。
裏書譲渡した手形が不渡りになった時
裏書譲渡した手形が不渡りとなったときは、手形の所持人から手形代金の支払いを請求されます。(これを償還請求と言います。)
この時、裏書譲渡人は手形代金の他、不渡りに関する諸費用(償還請求費用・法定利息)を支払いますが、これらの支払額は後で手形の支払人に請求することができます。
そこで、手形代金に、不渡りに関する諸費用を加算した金額を不渡手形として処理します。
また、手形が不渡りになった時点で偶発債務が消滅するため、保証債務を取り崩します。
手形の割引き
手形の割引きとは
所有する手形(約束手形や為替手形)は、満期日前に銀行等に買い取ってもらうことができます。
これを手形の割引きと言います。
手形の割引きと偶発債務の処理
割り引いた手形が不渡りとなった場合、手形を割り引いた銀行から手形を買い戻さなければなりません。
そこで、手形を割り引いた時も、偶発債務の処理をします。
手形を割り引いた時
手形を割り引いた時は、手形金額を受取手形から減額し、割引時にかかった割引料は手形売却損として処理します。
また、偶発債務(保証債務)の時価を見積もり、保証債務として処理するとともに、保証債務費用を計上します。
割り引いた手形が無事決済された時
割り引いた手形が無事に決済された時に、偶発債務が消滅するため、保証債務を取り崩します。
割り引いた手形が不渡りとなった時
割り引いた手形が不渡りとなった時は、手形代金に、不渡りに関する諸費用を加算した金額を不渡手形として処理します。
また、手形が不渡りになった時点で偶発債務が消滅するため、保証債務を取り崩します。
まとめ
株式投資や経営において、決算書の理解は必須になります。
その際、簿記の知識も生かして決算書の理解を深めましょう。
最近のコメント