今回は、決算書における「現金預金」について解説します。
現金
通貨代用証券
簿記における「現金」には、通貨の他、他人振出小切手や配当金領収証などの通貨代用証券が含まれます。
【現金に含まれるもの】
・通貨:硬貨・紙幣
・通貨代用証券:他人振出小切手・配当金領収証・期限到来後の公社債の利札
上記以外の通貨代用証券として、送金小切手・郵便為替証明書・貯金手形などがあります。
現金と間違えやすい項目
現金と間違えやすい項目として、先日付小切手・自己振出小切手などがあります。
詳細→決算書における【 手形・電子記録債権(債務)とは 】決算上の処理方法まで分かりやすく解説
先日付小切手
通常の小切手は振出びとして実際に振り出した日の日付を記載します。
しかし実際の振出日よりも後の日付が振出日として記載される場合があります。
この小切手を先日付小切手と言います。
先日付小切手は、記載された振出日までに銀行に呈示して現金化できないため、記載上の振出日まで受取手形として処理します。
自己振出小切手
自己振出小切手とは、自社が振り出した小切手が裏書などにより再び自社に戻ってきたものを言います。
自己振出小切手の振出し・回収は全て自社の当座預金の動きのため、自己振出小切手を受け取った時は現金ではなく当座預金勘定で処理します。
上記以外で現金と間違えやすい項目として、収入印紙・はがき・切って・借用証明書があります。
収入印紙の使用分は租税公課・未使用分は貯蔵品・はがき・切手の使用分は通信費、未使用分は貯蔵品・借用証明書は貸付金として処理します。
【現金になるものとならないもの】
・現金にならないもの・・・通貨・他人振出小切手・配当金領収証・期限が到来した公社債の利札
・現金にならないもの・・・先日付小切手(受取手形)・自己振出小切手(当座預金)・収入印紙(租税公課または貯蔵品)・はがき・切手(通信費または貯蔵品)・借用証明書(貸付金)
現金過不足
何らかの原因により、帳簿上の現金残高と実際の現金有高が一致しない場合があります。
このような場合、現金過不足勘定を用いて現金の帳簿残高を実際有高に合わせます。
原因が判明した場合
後に原因が判明した場合は、現金過不足を正しい勘定科目に振り替えます。
原因が判明しなかった場合
原因が期末までに判明しなかった場合は、現金過不足を雑益または雑損に振り替えます。
現金
現金の表示
現金の流動・固定分類
預金にも複数の種類があり、種類によって表示方法が異なります。
普通預金や当座預金のように、いつでも制限なく引き出しが可能な預金は流動資産として表示します。
当座借越
①当座借越の会計処理
通常、小切手の振出しは当座預金残高の範囲内で行われます。
しかし、当座預金残高が不足しても小切手を振り出せるよう、銀行と当座借越契約を結ぶこともあります。
実際に当座預金残高を超えて小切手を振り出した場合、帳簿上は当座預金勘定の貸方に記入します。
②貸借対照表の表示
当座借越は実質的には銀行に対する短期の借入れであるため、貸借対照表では短期借入金で表示します。
例えば、10万円のパソコンを買いたいのに、当座預金残高が6万円しか無かったとしましょう。
このままでは、小切手を振り出してパソコンを買うことはできません。
ここで、限度5万円の当座借越契約を結んでいれば、その限度額までであれば残高が不足していても小切手を振り出すことができます。
つまり、10万円ではこれを当座預金勘定の貸方で簿記に記録します。
この立替払いは実質的に短期の銀行からの借入のため、貸借対照表上は短期借入金として表示します。
銀行勘定調整表
当座預金の会社の帳簿上の残高と銀行における残高が、何らかの原因により一致しない場合があります。
これを調整するのが銀行勘定調整表です。
当座預金の修正方法
企業の当座預金勘定の残高と銀行の当座預金残高が一致しない場合、その一致しない原因を調査して修正仕訳を行います。
修正仕訳が必要な雲区と、必要でない項目は次の通りです。
【銀行勘定調整表の修正項目】
〈修正仕訳が必要(企業側の調整)〉
①連絡未通知・・・当社の当座預金口座に入金、または出勤があったのみも関わらず、連絡が当社に未達となっていて記載していないもの
②誤記入・・・当社が誤って記帳していたもの
③見渡小切手・・・当社が未払いのために小切手を作成して出金処理していたにも関わらず、取引先に渡されずに手許に残っているもの
〈修正仕訳が不要(銀行側の調整)〉
④時間外預入れ・・・当社が銀行の営業時間終了後に行った入金のこと
⑤未取立小切手・・・他人振出の小切手を銀行に呈示して預け入れたにも関わらず、銀行では取立が完了していない小切手のこと
⑥未取付小切手・・・当社が小切手を振り出したものの、取引先がまだ銀行に呈示していないため、取り立てられていない小切手のこと
銀行勘定調整表の作成
銀行勘定調整表には、両者区分調整法・企業残高基準法・銀行残高基準法があります。
①両者区分調整法
両者区分調整とは、企業の当座預金残高と銀行の残高証明書残高の両方を区分して調整し、正しい当座預金残高を求める方法です。
具体的には、修正仕訳が必要な項目については帳簿残高(企業残高)に加減算し、修正仕訳が不要な項目については銀行残高に加減算します。
②企業残高基準法
企業残高基準法とは、企業の当座預金残高を基準に調整して、銀行の残高証明書の金額と一致させる方法です。
③銀行残高基準法
銀行残高基準法とは、銀行の残高証明書の金額を基準に調整して、企業の当座貯金残高と一致させる方法です。
まとめ
株式投資や経営において、決算書の理解は必要です。
そのため簿記の知識も活かして決算書の理解を深めましょう。
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