今回は、決算書における「研究開発費」「ソフトウェア」についての解説をまとめました。
研究開発費
研究開発費とは
研究開発費とは、研究及び開発に係る活動から生じる費用です。
【研究・開発】
・研究:新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び研究
・開発:製品など(新しい製品・サービス・生産方法についての計算・設計・または既存の製品などを著しく改良するための計画・設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること)
【研究開発費の流れ】
研究活動(基礎的なこと)
↓
開発活動(ここまでの活動を研究開発費という)
↓
生産活動→製造原価
↓
販売活動→売上原価
研究開発費の会計処理
研究開発費は全て発生時に費用(管理費及び一般管理費)として処理します。
また、特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない機械装置・特許権などを取得した場合の原価は、取得時の研究開発費として処理します。
製造現場において研究開発活動が行われ、かつ、その研究開発に要した費用を一括して製造現場で発生する原価に含めて計上しているような場合が認められるような時には、例外的に当期製造費用に算入することも認められています。
ソフトウェア
ソフトウェアとは
ソフトウェアとは、コンピューターを機能させるように指令を組み合わせ組み合わせて表現したプログラムのことです。
ソフトウェア制作費の会計処理
ソフトウェアの制作費は、その取得形態(自社制作・外部購入)ではなく制作目的ごとに会計処理が決められています。
ソフトウェアの制作目的は、次のように分類されます。
【ソフトウェアの制作目的別分類】
研究開発目的のソフトウェア
ソフトウェア{
研究開発目的以外
(受注制作のソフトウェア・市場販売目的のソフトウェア・自社利用のソフトウェア)
研究開発目的のソフトウェア
研究開発目的のソフトウェアの制作費は、研究開発費として全て発生時に費用処理します。
受注制作のソフトウェア
受注制作のソフトウェアとは、顧客から注文された特定の仕様に従って制作するソフトウェアのことです。
受注制作のソフトウェアは、工事契約に関する会計基準に基づいて処理します。
市場販売目的のソフトウェア
市場販売目的のソフトウェアの制作費は、研究開発費に該当する部分を除いて、ソフトウェアとして処理します。
更に、この市場販売目的のソフトウェアが完成するまでの支出は、次のように分類されます。
自社利用のソフトウェア
自社利用のソフトウェアの取得に要した費用は、将来の収益取得または費用削減が確実な場合にはソフトウェアとして処理します。
将来の収益獲得または費用削減が確実な場合とは、例えば完成品を購入した場合や、外部へサービスを提供する契約が止血されている場合などが該当します。
【ソフトウェア制作費の処理】まとめ
研究開発目的のソフトウェア | 研究開発費 |
受注制作のソフトウェア | 工事契約に関する会計基準に基づいて処理 |
市場販売目的のソフトウェア | ソフトウェア(無形固定資産※1) |
自社利用のソフトウェア | ソフトウェア(無形固定資産※2) |
※1 機能維持のための支出は費用処理
※2 将来の収益獲得または費用削減が確実な場合以外は費用処理
市場販売目的のソフトウェア
ソフトウェアの償却(市場販売目的)
市場販売目的のうち無形固定資産として計上したものは、見込販売数量・見込み販売収益に基づいて償却を行います。
更に、毎朝の償却額は、残存有効期間(原則3年以内)に基づく均等配分類(ソフトウェアの当期首未償却残高÷残存有効期間)を下回らないように処理します。
また、償却後の未償却残高が次期以降の見込み販売収益を超過した場合には、その超過額はソフトウェア償却に含めて費用処理します。
【見込み販売数量または見込み販売収益に基づく償却額】
当期首未償却残高×当期の実績販売数量(実績販売収益)/当期首の見込み販売数量(見込み販売収益)
【残存有効期間に基づく均等配分額】
当期首未償却残高÷残存有効期間
上記のいずれか大きい額
+
【償却後の未償却残高が時期以降の見込み販売収益を超過している場合】
償却後の未償却残高>次期以降の見込み販売収益⇨超過額をソフトウェアの償却額に含める
見込販売数量等の変更
見込販売数量・見込販売収益を変更した場合は、会計上の見積もりの変更に該当します。
そこで、見込販売数量などを修正して処理します。
見込販売数量・見込み販売収益の変更の処理は、有形固定資産の耐用年数の変更の考え方と同様です。
当期首に見込販売数量(見込販売収益)を変更した場合
当期首に見込み販売数量(見込販売収益)を変更した場合、当期から変更後の見込販売数量(見込販売数量)に基づいて償却を行います。
当期末に見込販売数量(見込販売収益)を変更した場合
当期末に見込販売数量(見込販売収益)を変更した場合、当期は変更前の見込販売数量(見込販売収益)に基づいて償却を行います。
自社利用のソフトウェア
ソフトウェアの償却(自社利用)
自社利用のソフトウェアのうち無形固定資産として計上したものは利用可能期間(原則として5年以内にわたり)定額法で償却します。
利用可能期間の変更
自社利用のソフトウェアの利用可能期間を変更する場合、この変更は会計上の見積もりの変更に該当します。
この変更が当期首に行われた場合は、当期から変更後の残存利用可能期間で計算します。
一方、この変更が当期末に行われた場合は、当期は変更前の残存利用可能期間で計算します。
まとめ
株式投資の上で、決算書の理解は必須になります。
更に簿記の知識があると更に決算書の理解が深まります。
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