今回は、決算書における「一般商品売買(期末商品の評価)」について解説します。
棚卸資産
棚卸資産とは、企業の営業活動において消費されることにより費用となる資産で、その消費部分を数量で把握できるもののことです。
期末に保有する棚卸資産は、貸借対照表の流動資産に表示します。
簿記では、棚卸資産のイメージとして、一般的な商品を思い浮かべますが、理論上は次のものが棚卸資産となります。
①商品・製品
②仕掛品・半製品・建設業の未成工事支出金
③原材料・工場消耗品
④トレーディング目的で保有する資産
⑤事務用品消耗品・荷造用品
仕入れた棚卸資産は、期中に販売すれば売上原価として費用化され、期末に残っていれば商品として資産計上されます。
その他、期中に無くなったり(棚卸減耗費)、見本品として使用されるもの(見本品費)もあります。
期末商品の評価方法
期末商品の評価額は、数量×単価で求めます。
まずは数量の計算方法から説明します。
棚卸資産の数量の計算方法
棚卸資産の数量の計算方法には、継続記録法と棚卸計算法があります。
継続記録法
継続記録法とは、商品有高帳を用いて、仕入れた数と払い出した数をその都度記録する方法です。
【継続記録法】
・メリット・・・期中でも常に在庫数量が明らかになる
・デメリット・・・記録に手間がかかる
【棚卸計算法】
棚卸計算法とは、受け入れの記録はしますが、払出しの記録を省略する方法です。
払出数量の把握は、期末に実地ラナおろしを行って実際数量を把握し、受け入れ数量と期末数量の差から間接的に計算します。
【棚卸計算法】
・メリット・・・記録に手間がかからない
・デメリット・・・期中は在庫数量を把握できていない
帳簿残高(あるべき残高)がわからないため棚卸減耗を把握することができない
通常、棚卸減耗を把握して在庫管理を行うために、継続記録法を採用すると同時に実地棚卸も行います。(これを、継続記録法と棚卸計算法を併用する、とも言います。)
払出単価の計算
払出単価の計算方法には、先入先出法、平均原価法、個別ほう、最終仕入原価法があります。
先入先出法
先入先出法とは、先に受け入れた者から先に払い出したと仮定して単価を決定する方法です。
【先入先出法】
・メリット・・・実際のものの流れと一致することが多い
商品の期末貸借対照表価額が最近の時価に近くなる
・デメリット・・・物価変動時に保有損益(名目的な損益)が計上されてしまう
保有損益が販売損益に含まれる場合、適切な期間損益計算ができないとも言われています。
平均原価法
平均原価法には、受け入れの都度平均単価を計算する異動平均法と、一定期間の総仕入高と数量から平均単価を計算する総平均法があります。
【移動平均法】
・メリット・・・売上と同時に払出単価を確定できる
・デメリット・・・受け入れの都度平均単価を計算するため、計算が複雑
【総平均法】
・メリット・・・計算が簡便である
・デメリット・・・会計期間首領じまで払出単価が確定しない
個別法
個別方とは、棚卸資産ごとに取得原価がわかるように区別しておき、払い出したときに、それぞれの取得原価を払出単価とする方法です。
【個別法】
・メリット・・・実際のものの流れと完全に一致する
・デメリット・・・記録が複雑
最終仕入原価法
最終仕入原価法とは、最後に仕入れた商品の単価を今つ商品の単価として、差額で売上原価を計算する方法です。
最終仕入れ原価法は、税法上で認められている方法で、会計基準では認められていません。
棚卸減耗費と商品評価損
棚卸減耗費と商品評価損
棚卸減耗費とは、実地棚卸高が帳簿棚卸高より少ないこと、つまり棚卸数量の減少によって生じた損失のことです。
商品評価損とは、時価の低下、品質の低下や陳腐化などにより、正味売却価額(時価)が商品の原価よりも下落した場合の、原価と正味売却価額の差額のことです。
表示方法
棚卸減耗費の表示区分と表示方法
棚卸減耗費のうち、原価性のある棚卸減耗費(毎月発生する程度の棚卸減耗費)は、損益計算上、売上原価の内訳科目または販売費及び一般管理費に表示します。
一方、原価性のない棚卸減耗費(毎月発生する程度を超えている棚卸減耗費)は、損益計算書上、営業外費用または特別損失に表示します。
商品評価損の表示区分と表示方法
商品評価損は、原則として売上原価の内訳項目として表示します。
ただし、商品評価損が臨時的、かつ多額に生じた時は例外として特別損失として表示します。
売価還元法
売価還元法とは
上記で棚卸資産の数量を計算する際に継続記録法によると記録の手間がかかると説明しましたが、小売業のように商品種類の多い業種では、その種類ごとに受け入れ・払出をそれぞれ記録していかなければならなくなるため、膨大な手間がかかります。
そこで、商品グループごとに期末商品の売価合計に減価率をかけて期末商品原価を計算する売価還元法が認められています。
この方法では、まず期末商品原価を計算してから、差額で売上原価を求めます。
あくまで期末商品原価を簡便に求める方法のため、売上に減価率をかけて、売上原価を直接求めないように気をつけましょう。
売価還元法による計算
減価率算定の際、期首商品の原価と売価は決まっていますが、当期仕入れ分の売価は明示されていません。
通常、企業は期中に値上げ・値下げを行いながら当期の売価を決めるため、減価率の計算は次のようになります。
売価還元率の原価率=期首商品原価+当期仕入原価/(期首商品売価+当期仕入原価+原始値入額+値上額ー値下額)
※値上取消額がある場合には、値上取消額を差し引いた純値上額
※値下取消額がある場合には、値下取消額を差し引いた純値下額
原始値入額とは、仕入原価に最初に加算した利益のことです。
売価還元法における商品評価損の処理
期末商品の時価が原価を下回っている場合、売価還元低価法を用いて計算することができます。
売価還元法を採用している場合でも、期末の正味売却価額が帳簿価額よりも下落しちえる場合には、正味売却価額を持って貸借対照表額とします。
ただし、値下額等が売価合営学に適切に反映されている場合には、売価還低価法の原価率により求めた期末棚卸資産の帳簿価額を持ってこれに代えることができます。
(売価還元低価法の)原価率=期末商品原価+当期仕入原価/(期末商品売価+当期仕入原価+原始値入額+値上額)
※値上取消額がある場合には、値上取消がくを差し引いた純値上額
売価還元低価法では、(純)値下額を無視して減価率の計算を行います。
分母が大きくなって原価率が小さくなるため、算出される期末商品原価も小さくなり、その結果、通常の低価法と同様の効果が得られます。
【売価還元低価法の計算方法】
売価還元低価法の計算方法には、以下の2つがあります。
①商品評価損を計上する方法
②商品評価損を計上しない方法(評価損部分は、結果的に売上原価に参入されます。)
関連記事→決算書における【 一般商品売買(総記法) 】分かりやすく解説
まとめ
株式投資や経営においては、決算の読み解きが必要になります。
そのため簿記の知識も活かして決算書の理解を深めましょう。
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